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43.アリストンからカイゼルへ…

アリストンとフェイが川沿いで釣りをしている間、エリーゼとカイゼルは木の下で木の実を拾っていた。


「カイさん、どうですか?沢山拾えましたか?」


エリーゼがカイゼルへと声をかけた。


「え?あぁ…。今これだけ拾ったところだ。」


カイゼルは、そう言うとエリーゼへ自分の袋の中の木の実を見せた。


「わぁ〜。もうこんなに沢山?凄いですね!!」


エリーゼは、カイゼルが見せてくれた袋の中の木の実の量を見て感心しながら言った。


「そうなのか?」


カイゼルは、エリーゼに褒められた事が満更でもないという表情になりながら言った。


「はい。私はテオと少し遊びながら拾っていたのであまり拾えてないのです…。」


エリーゼは応えると、カイゼルへ自分の袋の中身を見せた。


「テオ!エリーゼの邪魔をしては駄目だぞ?!」


カイゼルは、エリーゼの言葉を聞くとテオの方を見てテオへと声をかけた。


「ニァ〜〜〜オッ……」


テオはカイゼルの言葉に知らんぷりするかの様に鳴いてしゃがんでいたエリーゼの胸元へとピョンっと飛びついたのだった。


「おいっ!テオ!」


カイゼルは、そんなテオを見て言った。


「ふふ…。いいんですよ。カイさん。カイさんが沢山木の実を拾って下さいましたしテオにこんなに懐いて貰って嬉しいので。」


エリーゼは、テオに言ったカイゼルへ向かってクスクスと笑いながら言った。


「しかし…」


カイゼルは、エリーゼの言葉の困った表情を浮かべながら言った。


「本当にいいのですよ。ねぇ?テオ〜?」


エリーゼは、カイゼルに笑顔で応えるとテオに向かって声をかけた。


すると…


「ニァ〜ニァ〜…。」


テオは、嬉しそうに鳴くとエリーゼの唇へと自分の口をくっつけたのだった。


「あらっ。ふふ…」


エリーゼは、自分の唇にテオが口つけてきた事に少し驚いたがすぐにクスクスと笑みを溢してテオの頭を撫でたのだった。


テオは、エリーゼに頭を撫でられて満足気な表情を浮かべていたのだった。


そんなテオとエリーゼのやり取りを目の前で見たカイゼルは目が点になっていた。


(おいっ!!テオの奴…エリーゼの唇にキスしたのか?!なっ、あんなにも簡単に…。エリーゼも嫌がるどころかほっこりしているではないか。テオの奴、私が見える様にわざとしたのではないのか?飼い主の私などお構いなしというのか?!何と羨ましいのだ!………ん?羨ましい…?だと?)


カイゼルは、二人を見ながらそんな事を思っていた。

しかし、自分がテオが簡単にエリーゼの唇に口をつけた事に対して羨ましいと思ってしまった自分に驚いた。

そして、それを自覚した瞬間にたまらなく恥ずかしくなり思わず顔を伏せたのだった。


(羨ましいなど…。私は何を考えているのだ…。エリーゼへの気持ちに気づいてからどうも自分が自分ではないみたいでこの色々な感情をどうしたら良いのかわからない…。)


カイゼルは、顔を伏せながらそんな事を考えて困っていた。


「カイさん!どうかされましたか?」


エリーゼは、顔を伏せているカイゼルを見て慌ててカイゼルへと尋ねた。


「え?あっ…いや大丈夫だ。何ともない…。」


エリーゼに声をかけられたカイゼルは、顔を上げて慌てて言った。


「そう…ですか?それならいいのですが…。」


エリーゼは、カイゼルの言葉を聞いてホッとした表情で言った。


(クソっ!しっかりしろ!エリーゼを心配させるな!しかし、エリーゼとこの様に普通に会話しているとはな…。エリーゼと王宮で再会してからまともな会話すらした事がなかったというのに…。何とも不思議な感覚だな。)


カイゼルは、エリーゼに応えながらそんな事を考えていた。



「カイ!!フェイと交代だ!エリーゼはフェイと少し休憩するといい!」


エリーゼとカイゼルがやり取りをしていると、川の方からアリストンがカイゼルに向かって声をあげて言った。

そして、アリストンはエリーゼにも言ったのだった。


「「分かりました!!」」


エリーゼとカイゼルは同時にアリストンへと返事をしたのだった。


そして……カイゼルはフェイと入れ替わりにアリストンと共に川沿いで釣りを、エリーゼとフェイは芝生になっている場所へと座り休憩をとったのだった。



「こんな小さな川なのに、割と大きな魚が釣れるのですね。」


カイゼルは、アリストンとフェイが釣り上げた魚を見てアリストンへと言った。


「あぁ…。それにとても美味しいんだ。ここは本当に昔から私のとっておきの場所だ。」


アリストンは、少し微笑みを浮かべる様に応えた。


「カイの方は、木の実は沢山拾えたのか?」


アリストンがカイゼルへと尋ねた。


「はい。思ったよりも拾うことができました。エリーゼの拾ったものと合わせると結構な数になるかと思います。」


カイゼルが応えた。


「そうか…。それは何よりだな。それより…エリーゼとは随分仲良くなったんじゃないのか?」


アリストンは、少し意地悪気味な表情を浮かべながらカイゼルへと尋ねた。


「えっ……?そう…ですか?まぁ…でもそうかも…しれません。エリーゼが優しいお陰だと思います。俺は…毎回エリーゼを怖がらせてばかりだったと思うので…。」


カイゼルは、アリストンの言葉に少しドキッとするも平然を装う様に応えた。


「確かに…エリーゼは人一倍優しい子だ…。それは記憶があってもなくても変わらない。カイの事をただ怖い人!だけで終わらす事なくカイと接してみてカイという人柄をエリーゼなりに解釈しての判断だろうからな。」


アリストンは、エリーゼの方をチラリと見ながら言った。


「はい……。本当にエリーゼが俺自身をきちんと見て判断してくれてこんな風に少しづつでも普通に会話出来ているのは理解しています…。」


カイゼルも、エリーゼをチラリと見ながら応えた。


「だがな…。カイ…。エリーゼの優しさに甘えてばかりではだめだぞ?!カイもカイなりにエリーゼに対して誠意や優しさを示さなくてはならない。相手に貰うばかりでは結局自分は何も成長しないからだ…。相手に貰ったのならば自分もそれを返さなくてはいけない。わかるか?」


アリストンは、真剣な表情を浮かべてカイゼルへと言った。


「はい。それは十分に承知しています。俺は…理由は話せませんが一度に二回もエリーゼを傷つけてしまいました。それに対しての罪滅ぼしもありますがとにかくエリーゼの為に自分に出来る事はなんでもすると決めてエリーゼに会いに来たのです。その意志は今でも変わる事はありません。」


カイゼルは、真剣な表情でアリストンの目を見ながら応えた。


(本当にこの決意は変わることはない。こんな事でエリーゼに許してもらおうとは思っていないがそれでも少しでもエリーゼの為に私が何か出来るなら全力でしたいと思っているのだから…それは、たとえいざとなったら王太子としての権限を使ったとしてもだ…)


カイゼルは、アリストンへ応えながら考えていた。


「……。そうか…。カイなりにしっかりした思いと考えがあるのだな…。私はお前のその言葉を信じるよ。あくまで例え話だが、この先エリーゼにもしも危険な事が起きる様は事があれば全力でエリーゼを守れ。そして、絶対にエリーゼを泣かせるな。最初に言ったがもしも…エリーゼを傷つけたり泣かせる様な事をしたら私はお前を許さない!いいな?」


アリストンは、カイゼルの言葉を聞き真剣な表情を崩さないままカイゼルへと少し強めの口調で言った。


「はい。もちろんです!!」


カイゼルは、しっかりとアリストンの目を見て真剣な表情で応えた。


「よし!いい返事だ!!さぁ…私達もあと数匹連れたらエリーゼとフェイの元へと行って休憩するとしよう!」


アリストンは、表情を崩して笑顔を浮かべてカイゼルへと言った。


(カイゼルの奴…この短期間でえらく成長したものだな。本当にエリーゼの事を大切に思っているのだろう…。恋している事に気づかないでいた事には驚いたがそれもまた成長する一つのきっかけになるであろうな…)


アリストンは、カイゼルと話しながらそんな事を思っていた。


「はい!!」


カイゼルも表情を少し崩して応えたのだった。

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