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4.王宮での生活

エリーゼの王宮での生活が始まった。


だが、エリーゼは王宮でどう過ごせばいいのかわからなかった。


国王や王太子からは、特に何をしてくれなどとの指示はなかったからだ。


エリーゼは、一先ずマリアに散歩に行くと伝え庭へと散歩に出かけたのだった。


エリーゼが、庭を歩いているとどこからか声が聞こえた。


「ニャ〜ォ…ニャ〜…ニャ〜」


猫の鳴き声だった。


エリーゼは、どこから猫の声が聞こえてきているのか回りをキョロキョロと見渡した。


すると、近くにあった木の上から聞こえてきている様だった。

エリーゼは、急ぎ鳴き声がしている木の方へと向かった。

そして、木の上へと視線を移した。


「ニャ〜…ニャ〜ニャ〜…」


どうやら、木の上に登ったものの足が少し枝分かれしてあるところに引っかかり降りて来られない様で鳴いていた様だった。


「あら…可哀相に…降りて来られれないのね。大丈夫よ…私がすぐに助けてあげるからね。そこで大人しく待っていてね。」


エリーゼは、木の上にいる猫へと優しく話しかけたのだった。


そして、エリーゼはドレスのスカートを捲りあげて木へとよじ登っていったのだ。

エリーゼは、慣れた様に木にあっという間に登り猫の引っかかっていた足を優しく解いてあげたのだった。


「良かったわ。怪我は大した事なさそうね…君はどこから入り込んだの?こんな所に登ったら危ないから次から気をつけるんだよ?」


エリーゼは、優しい笑みを浮かべながら抱いている猫へと話しかけた。


そして、猫を潰さない様に優しく胸元に入れるとエリーゼは慎重に木から降りたのだった。


(あまり高い木でなくて助かったわ…木登りも実邸にいた頃はよくお兄様の真似をして登っていたお陰だわ。)


エリーゼは、木から降りるとそんな事を考えていた。


「さぁ…何処から来たのか知らないけれど来た場所へお帰り…ん?首輪がついてるわね。誰かに飼われている猫なの?首輪に何か書いてあるわね…えっと…テオ?あたなテオっていうの?」


エリーゼは、猫に話しかけているとその猫が誰かに飼われている猫だと気づいた。

そして、首輪に名前が書いてある事にも気づいた。


その時……


「テオーー?!テオー?どこにいるんだ?!テオ?」


男性の声でテオの名前を呼びながらテオを探している様だった。

そして、テオを探していると思われる男性がテオを抱いているエリーゼに気づき駆け寄ってきた。


「テオ!……と…エリーゼ様?」


「フェイ様?」


テオを抱いているエリーゼの元へ駆け寄ってきた男性は、王太子の側近であるフェイだった。

フェイは、エリーゼの名前を呟きエリーゼもフェイの名前を呟いた。


「何故、エリーゼ様がテオを?」


「庭の散歩をしていたら、猫の鳴き声が聞こえてきたので声がする方へと行くと、テオが木の上の枝分かれした部分に足が引っかかり降りて来られない様だったので私が助けたのです…」


「エリーゼ様が…ですか?」


「はい…」


フェイは、目の前の状況を不思議に思いエリーゼへと尋ねた。

エリーゼは、テオを助けた経緯をフェイへと伝えたのだった。

エリーゼの話を聞き、フェイはとても驚いた表情でエリーゼへと言った。


「驚きました…テオは殿下の飼っておられる猫なのですが、殿下の他は私と陛下と王妃様以外には絶対に懐かないのです。他の者が触れる事すらテオは許さいない猫なのですが…ですから、殿下が不在の時もこうして私が世話をしているのです。エリーゼ様に対しては嫌がり怒り威嚇するどころか、むしろとても気持ち良さそうにエリーゼ様に抱かれている様なので…」


「そう…なのですか?テオはとても賢く人懐っこい猫だとばかり思っていました…何処かから入り込んで来た猫かと思ったのですが殿下が飼っておられる猫だったのですね…」


「私が少し目を離した隙に、庭へと飛び出して行って探していたところなのです。」


「そうでしたか…テオ、フェイ様が迎えに来てくれたわよ?さぁ…フェイ様の所に戻りなさい。」


フェイは、エリーゼがテオを抱いている事にとても驚いた表情をしてエリーゼへと説明した。

フェイの話を聞き、エリーゼも驚いた表情で言った。

そして、テオに優しく声をかけてフェイの方へと渡したのだった。



「エリーゼ様、テオを助けて頂きありがとうございました。殿下はテオの事をとても大切にされていますので、テオが本当に居なくなっていたら大変でした。」


「いえ…テオが庭にいてくれて良かったです。あっ…少し引っかかっていた足の部分を少し擦りむいている様なので手当の方してあげて下さい。」


「そうですか…教えて頂きありがとうございます。」


フェイは、改めてエリーゼへとお礼を言った。

エリーゼは、優しい笑みを浮かべながらフェイにテオが少し怪我を負っている事を伝えた。


二人が、話をしているとそこへエリーゼと同じ様に王太子妃候補として王宮に来ていた令嬢達がやって来たのだ。


「あらっ…フェイ様……それに…メディス伯爵家のエリーゼ様…お二人お揃いで何かありましたの?」


「これは…サリー様とビリー様。エリーゼ様が、探していた殿下の飼っている猫を助けてくださったのです。」


「そう…なのですか…猫を…エリーゼ様のお陰で猫が見つかり良かったですわね…フェイ様も、殿下が公務で不在の中殿下の猫のお世話ご苦労様ですわね…今回は、王太子妃候補のわたくし達が滞在するという事で側近であるフェイ様は殿下の代わりに動かれているのですものね…」


「本当ですわね。殿下の飼われている猫ですもの。居なくなったりしては大変ですものね…フェイ様、ご苦労様です。」


二人の令嬢、サリーとビリーはエリーゼとフェイが会話しているのを見て二人へ近づき二人へと話しかけたのだった。


「はい…。それでは、私は猫を連れて戻りますのでこちらで失礼致します。エリーゼ様…本当にありがとうございました。」


「いえ…本当に見つかって良かったですね。」


フェイは、少し困った様な表情で目の前の三人へと言うとエリーゼには改めてお礼を言った。

そして、フェイはテオ抱いて王宮内へと入っていた。


その場に令嬢達が残された。


「エリーゼ様といったかしら?エリーゼ様…ご挨拶がまだでしたのでこの機にしておきますわ。私は、スカイ公爵家のサリーと申します。」


「エリーゼ様…私は、バッハ公爵家のビリーと申します。」


「お初にお目にかかります…メディス伯爵家のエリーゼと申します。」


サリーとビリーは、まったく笑顔を作るわけでもなくむしろ冷たい目でエリーゼへと自己紹介したのだった。

また、それに返すようにエリーゼも二人へと自己紹介したのだった。


「エリーゼ様…一応、先に言っておきますわね。たかが伯爵家があまり出しゃばるのはよろしくなくてよ?フェイ様と仲良くなり殿下にとり入ろうとでもなさるおつもり?」


「あら…やはり爵位が低いと王太子妃という立場に目が眩んでまずは側近であるフェイ様に近づかれたのかしら…」


サリーとビリーは、エリーゼへと嫌味たっぷりに言い凄い目で睨みつけた。


「今後の行動は、もう少し立場をわきまえてする事ですわ…どうせ…あなたがどう頑張っても王太子妃なんかに選ばれないのだから…」


「サリー様の言うとおりですわ。あなたが王太子妃に選ばれる事などないのだから今のうちに実邸に帰られた方がよろしいのではなくて?」


サリーとビリーは、エリーゼに続けて嫌味満載の言葉をクスクスと嫌な笑みを浮かべながら言い放った。

サリーとビリーに、散々な事を言われたエリーゼは何も言い返さず俯いていたのだった。


そんなエリーゼにはお構いなしで、サリーとビリーはその場から去っていったのだった。


(本当に一体…何故私が王太子妃候補になど選ばれたのかしら…王太子妃になりたいなんてこれっぽっちも思っていないのに…早く皆のところへ帰りたいわ…)


その場に、ポツンと一人残されたエリーゼは俯いたままそんな事を思っていたのだった…



そんな暗い気持ちになっていたエリーゼの鼻に小麦の匂いが入ってきたのだった。


「小麦の匂いだわ…」


俯いていたエリーゼは、小麦の匂いが鼻に入ってくると顔をあげ呟いた…


そして、小麦の匂いがする方へと足が勝手に動いていたのだった……

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