37.大混乱
エリーゼとカイゼルがアリストンの家で過ごしていたのと同じ時………
アリストンとフェイは、メディス伯爵家の領地へと到着していた。
「お前、馬に乗るのが上手いのだな。」
「アリさんこそ。とても乗馬がお上手で。」
アリストンとフェイは、お互い笑顔で言い合った。
二人が馬から降りると、マイクとナディアが二人の元へとやって来て出迎えてくれた。
「やぁ。急に来てすまないな…」
「いえ…それは構いません。その後エリーゼの体調の方はどうでしょうか?」
「あぁ…手紙でも伝えたが体調の方は回復している。今は念の為に休ませているといったところだ。」
「そうですか…それを聞いて私も妻も安心しました。エリーゼに付き添って頂きありがとうございます。」
アリストンが、マイクとナディアへと言った。
マイクとナディアは、アリストンへ一礼をするとマイクがアリストンへと心配そうに尋ねた。
横にいたナディアも心配そうな表情を浮かべていた。
アリストンは、そんなマイクとナディアに笑顔で二人が安心する様に応えたのだった。
「あの…アリさん、お話し中申し訳ありませんが…」
アリストンの横にいたフェイが、アリストン達の会話を聞いて不思議に思いアリストンへと声をかけた。
「あぁ…どうした?」
「はい…あの、こちらの方達は……?」
アリストンが、ん?という表情で応えるとフェイが不思議しそうに尋ねた。
「あぁ…すまない。紹介が遅れたな。こちらは、エリーゼの両親でここを領地に持つメディス伯爵と伯爵夫人だ。」
「あぁ…メディス伯爵と…………。えええーーーー!!!!メッ、メッ、メディス伯爵と伯爵夫人ですか?!」
アリストンが、フェイに淡々とマイクとナディアを紹介した。
フェイは一瞬…あぁ〜伯爵かーと思ったが次の瞬間に、アリストンのエリーゼの両親という言葉を聞いて驚きのあまりとても大きな声を出して言ったのだった。
そんなフェイに、アリストンもマイクもナディアも驚いていた。
「おい!フェイ!声が大きいぞ!伯爵達が驚いているだろう!」
アリストンがフェイへと注意した。
「あっ…すっ…すいません…驚いてしまったもので…」
フェイは、気まずそうな表情で応えた。
「あの…こちらの方は…?」
マイクも、フェイを見て不思議に思いアリストンへと尋ねた。
「あぁ…この者は、フェイという者だ。カイゼルの側近の者だ。」
「そうでしたか。殿下の側近の方ですか…」
アリストンは、淡々とマイクへフェイの事を紹介するとマイクは少し驚くも淡々と応えたのだった。
「アリさん…今何とおっしゃいました……?側近……?それと聞き間違いか…殿下というお言葉も聞こえた気がしたのですが…」
フェイは、全く状況が掴めないまま驚きの表情を隠せないまま頭を整理する為にアリストンへと尋ねた。
「あぁ。言ったが?だって、本当の事だろう?王太子の側近だろう?」
アリストンが、キョトンとした顔でフェイに言った。
「……。ええええーーーー!!」
フェイは、またまた驚きのあたり大きな声が出たのだった。
「フェイ!!」
「あっ…申し訳ありません…あの…しかし…何故その…私の正体をご存知なのでしょうか?殿下も私も名乗った記憶はありませんが…」
アリストンが注意すると、フェイは申し訳なさそうな表情で謝ると更に頭が混乱した状態でアリストンへと尋ねた。
「あぁ…名乗らなくとも分かるからな。何故なら……私はカイゼルの叔父だからな。」
アリストンがしれっと応えた。
「……。えっと…アリさんが…殿下の伯父……?伯父…伯父………。えええーーーー!!!」
フェイは、アリストンの言葉を聞き一旦自分の頭の中で整理を始めた。
そして、整理した瞬間にその日三度目の驚きの声を出したのだった。
「もっ…も…もしや…あなた様は…アッ…アリストン王兄殿下でいらっしゃるのですか?!」
フェイは、驚きの表情のままアリストンへと尋ねた。
「おお…その通りだ。私は、カイゼルの伯父であり、現国王の兄であるアリストン・バル・サザンだ。」
アリストンは、ニヤリとした表情でフェイへ言った。
「なっ…なっ…ななな…アリストン王兄殿下!王兄殿下とは知らず今までのご無礼お許し下さいませ…」
フェイは、アリストンの言葉を聞いてその場に膝をつきアリストンへと言ったのだった。
「フェイ…立て。お前にその様な事を言わす為に正体を晒したのではないのだ。」
「ですが…」
「私が良いと言っているのだ。」
「承知しました。」
アリストンは、フェイを見て苦笑いを浮かべながら言った。
アリストンの言葉に困惑するフェイにアリストンは優しく言ったのだった。
そう言われたフェイはゆっくりと立ち上がったのだった。
「フェイ様…グランドー公爵家のご子息でらっしゃいますよね?改めまして…私は、メディス伯爵家当主のマイク・メディスと申します。横におりますのは妻のナディアでございます。遠い所ご足労頂きありがとうございます。」
マイクは、アリストンとフェイの話が一段落ついたのを見計らってフェイへと丁寧に挨拶した。
横にいたナディアも丁寧に礼をした。
「あっ…はい。グランドー公爵家の長男のフェイ・グランドーと申します。殿下の側近をさせて頂いております。」
フェイも丁寧にマイクとナディアへと挨拶をした。
「ところで…アリストン様、今日は何故フェイ様とご一緒に来られたのですか?」
マイクは、不思議に思った事をアリストンへと尋ねた。
「一先ず、立ち話も何だからナディア夫人の淹れた美味しいお茶を飲みながら話をしよう。」
「はい…畏まりました。すぐにお茶のご用意を致します。」
アリストンが笑顔で言うと、ナディアも笑顔で応えたのだった。
そして、マイクとナディアはアリストンとフェイを小屋の中へと案内した。
小屋の中は、しっかりと火が炊いてあり暖かな空間だった。
四人はナディアが淹れてくれた美味しいお茶を飲み始めた。
「王兄殿下…急かすようで申し訳ありませんが、未だに私の頭の中が混乱していまして…出来れば分かりやすくご説明頂ければ助かるのですが…」
フェイが、お茶を一口飲むと困り果てた表情を浮かべながらアリストンへと尋ねた。
「ははは…本当に混乱しているという顔をしているな。急に色々な情報を耳にすればそうなるのも仕方ない事だな。」
アリストンは笑いながらフェイへと言った。
「笑い事ではありません…」
フェイは、呆れた表情を浮かべながら言った。
「はは…すまない。今から話す事はカイゼルには言わないと約束してくれるな?」
アリストンは、笑いながら謝ると急に真剣な表情でフェイへと言った。
「はい。承知しました…」
フェイは、真剣な表情で応えた。
そして、アリストンは自分がエリーゼを助けた事から今日までの事をフェイへと話し始めたのだった……