36.近づく二人の距離
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エリーゼの笑顔を見つめたまま呆然としていたカイゼルを見てエリーゼはハッとなった。
「あっ…笑ってしまってすいません…」
エリーゼは、笑いを引っ込めてカイゼルへと申し訳なさそうに言った。
エリーゼは、自分が笑ってしまった事でカイゼルに不快な思いせたと思ったのだ。
エリーゼに声をかけられたカイゼルもハッとなった。
「いっ…いや…いいのだ…」
カイゼルは、どこか気まずそうに言った。
「あの…お怪我はありませんか?」
エリーゼが、転げ落ちたカイゼルへと心配そうに尋ねた。
「あぁ…大丈夫だ…」
カイゼルは腰を上げながら応えた。
「そう…ですか…」
エリーゼが、カイゼルの言葉に少しホッとした表情を浮かべて言った。
「それで…先程は何故…ヘックシュンッ!!」
カイゼルは、エリーゼへ何故先程はあの様に笑ったのかを尋ねようとした時思わずくしゃみが
出てしまったのだった。
「あっ…カイさん…身体が冷えてしまったのではないですか?今日はまた一段と冷え込みますので…ちょっと待っていて下さい…」
エリーゼは、くしゃみをしたカイゼルに慌てて言うとベッドから下りて部屋を出て一階へと向かったのだった。
「おっ…おい!エリーゼ……!」
カイゼルは、部屋を慌てて出ていったエリーゼへと声をかけるもエリーゼは早々に一階へと行ってしまったのだ。
(エリーゼの奴…まだ体調が本調子ではないのであるならあの様に急に立って動くのは良くないのではないのか…)
カイゼルは、一階へと行ってしまったエリーゼにそんな事を焦りながら思っていた。
そして、カイゼルはすぐにエリーゼを追いかけて一階へと向かったのだった。
カイゼルが一階へと下りると、エリーゼはキッチンで何かしていたのだった。
「エリーゼ!何をしているのだ?その…体調が悪いのであれば動くのは良くない…ベッドへ戻れ…」
カイゼルは、エリーゼに向かって名前を言うとエリーゼの肩がビクッとするのを見て、また怖がらせてしまったと思いハッとなり慌てて言い方を変えながら話しかけた。
「ご心配おかけして…申し訳ありません…ですが、私は大丈夫ですので。ここ数日で随分ゆっくりさせて頂きましたので。それに…ずっとベッドの上にいると余計に身体が鈍ってしまいますので…」
カイゼルに声をかけられ振り向いたエリーゼは、少し緊張した面持ちでカイゼルへと言った。
「しかし…」
カイゼルが、心配そうな表情で言った。
「今は、私よりカイさんの体を温める方が先です。今…はちみつたっぷりのホットミルクを作っていたのです。飲むと身体が温まりますので…私は本当に大丈夫ですので座ってください。カイさんが風邪を引いてしまっては大変ですので…」
エリーゼは、真剣な表情でカイゼルへと言った。
「……。分かったよ…。」
カイゼルは、それ以上言うのを諦めてエリーゼに言われるままにダイニングテーブルの椅子へと腰掛けた。
そして、エリーゼがカイゼルの元へとホットミルクを持ってきてくれた。
「さぁ…どうぞ。温かいうちに飲んでくださいね。」
「ありがとう。いただくよ…エリーゼも一緒に飲まないか?」
エリーゼは、カイゼルの前にホットミルクを置くと優しく声をかけた。
カイゼルは、エリーゼへお礼を言うと少し言いにくそうにエリーゼを誘った。
「えっ?……。では…私もご一緒に飲ませて頂きますね…」
エリーゼは、カイゼルに言われて驚くも少し考えて応えた。
(断られなくて…良かった…)
エリーゼの言葉にカイゼルはホッとしながら思っていた。
エリーゼが、自分の分のホットミルクを持ってきて椅子へと腰掛けた。
二人は向かい合わせに座ったのだった。
(何だか…こうしてカイさんと二人きりなのは緊張するわね…)
(エリーゼと二人きりというのは…緊張するな…)
エリーゼとカイゼルは、お互いそんな事を思っていた。
そして…二人は静かにホットミルクを飲み少しの沈黙が続いた…
「あっ…あの…アリさんとフェイさんはどちらにおられるのですか?」
沈黙を破りエリーゼがカイゼルへと尋ねた。
「えっ?あぁ…二人はエリーゼが食べたそうな物などを買いに出かけたのだ…それで…私はアリさんに言われてエリーゼの様子を見ておいてくれと頼まれたのだ…。頼まれておきながら眠ってしまい申し訳なかった……。」
カイゼルは、エリーゼへと説明すると自分の失態を謝った。
「そんな…謝らないで下さい。カイさんも急にその様な事をお願いされてお困りだったでしょう?それに眠ってしまわれる程お疲れなのだと思いましたので…むしろ…私の様子を見て頂きありがとうございました。まさか、アリさんがその様な事をカイさんに頼んでいたなど知らなかったので…驚いてしまっただけでしたので…」
エリーゼは、謝るカイゼルに慌てて説明した。
「困るなどない!……ので…気にするな。その…体調を崩したと聞いて様子を見ないわけにはいかないしな…」
カイゼルは、少し声を張るとまたハッとなり声を小さくエリーゼを驚かせない様に言い直しながら言った。
(はぁ…私はどうして…こうエリーゼの前だと上手く話が出来ないのか…)
カイゼルは、エリーゼと会話しながら頭の中では頭を抱えながら考えていたのだった。
「ふふ…」
カイゼルが考えていると、またエリーゼがクスッと笑ったのだった。
「?!何故…笑うのだ…?先程も笑っていたが…」
カイゼルは、あまりにも訳が分からずエリーゼへと尋ねた。
「あっ…ごめんなさい…私ったらまた…」
エリーゼが、ハッとなってやらかしたという表情で言った。
「何故だ…?」
カイゼルがもう一度尋ねた。
「その…カイさんはもっと…こう何を考えているのか分からなくて…実を言うと…初対面の時から少し怖い方だなと思っていたのです。私も何故だか身体が強張ってしまったりもあったので…ですが、何度かカイさんとの時間を過ごす中で本当は怖い人ではないのかもしれないと思ったのです。本当は優しい方なのに表現するのが上手くないだけなのでは?いつも堅い表現をされていたのでカイさんでもあの様に慌てて転げる時や人前で寝てしまう事もあったり慌てて話したりもするのだな…と思うと何だか思わず可愛いなと思い笑ってしまったのです…気を悪くさせてしまったのなら申し訳ないのですが…」
エリーゼは、柔らかい表情でカイゼルへと説明した。
「そんな理由だったのか…。今は…もう私の事が怖くは…ないのか……?」
カイゼルは、エリーゼの話を聞き恐る恐る尋ねた。
「はい。今はカイさんを怖いと思ってません。声を急に張られるとまだ少しビクッと驚いてしまいますが…鶏小屋やベリー畑の時もそうでしたが、今日も心配して下さってずっと横についてくれていたのですよね?こんな素性も知れない記憶喪失になった私にも隔たりなく接してくれるのですからカイさんが本当は優しい方だと今日改めて思いました。今まで怖い方だなんて思っていてごめんなさい…」
エリーゼは、ほんの少し口元の口角を上げながら優しそうにカイゼルへと話した。
そして、第一印象だけの先入観を持ち続けていた事を謝った。
(私は…エリーゼが無意識に恐れてしまう様な事をしてしまっているのに…エリーゼに怖いと怯えられても仕方ないというのに…それも覚悟の上でエリーゼの近くにいて力になれたらと思ったのに…なのに…なのにどうして…エリーゼが私の事をその様に思っていてくれている事がこんなにも嬉しいのだ…)
カイゼルは、エリーゼが話してくれた事を聞きそんな事を胸の奥が温かくなるのを感じながら思っていた。
「謝る事はない…わた…俺は、あまり人前で感情を出すのが得意ではないのは事実だからな…怖がらせてしまってすまない…」
カイゼルは、少ししょぼんとしながらエリーゼへ言った。
「そんな…カイさんが謝ることなどありません。勝手に怖がっていたのは私なので…」
「いや…俺がもう少し愛想を良くしていれば…」
「そんな無理をしたって辛いだけですので…」
「いや…しかし…」
エリーゼが慌てて言うと、カイゼルも慌てて言った。
お互いが慌てながら言い合うと…
「ふふ…おかしいですね。お互い変に一歩も譲らないなんて…」
エリーゼは、言い合っているうちに可笑しくなりクスッと笑みを溢しながら言った。
「はは…そうだな…」
カイゼルもエリーゼにつられて思わず笑みを溢しながら言った。
「……。カイさんの笑った顔を初めて見た気がします…」
エリーゼは、カイゼルの笑みに驚きながら言った。
「そう…か……?」
「はい。カイさんはもっと笑った方がいいと思います。」
カイゼルが気まずそうに言うと、エリーゼはキョトンとした表情でカイゼルへと言った。
「エリーゼがそう言うのであれば…」
カイゼルは、少し俯きながら呟いた。
「何だか…今日はカイさんの違う一面を見れた様で良かったです…これからも…カイさんのなんでも屋の見習い中は…その…仲良くして頂けますか?」
エリーゼは、少し照れた様にカイゼルへと言った。
「え…?あっ…あぁ…こちらこそ気軽に接してくれたらありがたい事だ。」
カイゼルは、エリーゼの言葉に驚きながらも言った。
「はい。」
エリーゼは、カイゼルの言葉に笑顔で応えた。
そんなエリーゼの笑顔を見てカイゼルは、あまりにも自然にエリーゼが自分へ笑顔を向けてくれるので嬉しくなり自分でも気づかぬうちに笑みを溢していたのだった…
エリーゼは、初めて見たカイゼルの自然な笑顔に驚きながらもドキッとしたのだった。
(カイさん…あんな風に笑えるのね…)
エリーゼは、ドキッとした事に??と思いながらもそんな事を思っていたのだった……