27.大人達の話し合い
エリーゼとブラットが王都で過ごしているその頃…
アリストンの家では………
国王のガストン、王妃のアイリーン、メディス伯爵のマイク、伯爵夫人のナディアが訪れていた。
アリストンを含む五人で話をしていたのだった。
「ガストンにアイリーン、伯爵に伯爵夫人…今日は呼び出しに応えてくれて感謝する。」
アリストンが四人へと言った。
「兄上…それは構いません。息子のカイゼルの件ですから…それよりもメディス伯爵に伯爵夫人、今は我々と顔を合わせたくないだろうにご足労感謝する。」
ガストンが、アリストンへ言うとすぐにマイクとナディアの方を向いて言った。
「陛下…とんでもございません。以前、我が邸にお越しになられた時は私も感情的に陛下と王妃様に失礼な態度を取ってしまい申し訳ありませんでした…」
マイクは、ガストンとアイリーンへと頭を下げながら言った。
横にいたナディアも同じ様に頭を下げた。
「伯爵!頭を上げてくれ。エリーゼ嬢にした事を考えれば親である伯爵があの様になるのは当たり前の事だからな。」
ガストンは、慌ててマイクへと言った。
「陛下…」
マイクが言った。
「それに…兄上から聞いたが八年前の事件の際に、兄上の命が危険だった際に伯爵が助けてくれたと…まさか兄上を助けてくれたのが伯爵だと聞き驚いた。年数は経ってしまっているが弟である私からも改めて礼を言う。ありがとう…」
ガストンが、マイクとナディアに向かって頭を下げて礼を言った。
「それに…ガストンもエリーゼ嬢に命を救われた様なものだからな…メディス伯爵家には感謝してもしきれないな…」
「私からもお礼を言うわ…義兄上様と息子を救ってくれてありがとう。」
ガストンが言うと、隣にいたアイリーンも頭を下げてマイクとナディアへとお礼を言った。
「殿下…王妃様…頭をお上げ下さい。私共は困っている人を助けるという当たり前の事をしたまででございます。」
マイクは、二人に頭を下げられ慌てて言った。
「しかし…伯爵…その当たり前の事を当たり前に出来る者は実際数少ないものだ…」
アリストンが横から話に入ってきて言った。
「アリストン様…」
マイクが言った。
「ところでアリストン様…今日我々に話をしておきたい事とは何でしょう?」
マイクが、不思議そうな表情でアリストンへと尋ねた。
「あぁ…それなのだが…ガストンや伯爵にも伝えたと思うがどういう訳かカイゼルが、エリーゼがここへいる事を知り急に訪れて来た。恐らく騎士団の者が王都を徘徊中にこの家にいるエリーゼを目撃してカイゼルへと報告したというところだろう…」
アリストンは、少し困り果てた表情で言った。
「兄上からカイゼルが来たと聞き驚き騎士団の方へと尋ねたが兄上の言うとおり、騎士団の騎士の一人がこの家から出る兄上を見送るエリーゼ嬢の姿を目撃した様だ。カイゼルが後先考えず咄嗟の行動した事をお詫び致します…」
ガストンが、申し訳なさそうにアリストンへと言った。
「やはりそうだったのか…だが、カイゼルは私をまさか王兄で伯父だとは気づいていない様だからな…まぁ王宮に飾ってある写真は私の子供の頃のものしかないから分からないのは無理もないのだが…しかし…カイゼルは少し礼儀がかけているな。あの事件以来人間不信気味になっているのかもしれないが、それと礼儀とは別物だ。将来この国の王になる者ならば王都に住んでいようと目上の者には礼儀を示すのものだからな…」
アリストンは、少し呆れた様な表情で言った。
「申し訳ありません…我が息子ながらお恥ずかしい限りです。カイゼルもフェイも兄上の存在については王宮外で暮らしているという事は知っていますがまさかエリーゼ嬢を救ったのが兄上など知る由もないないでしょう…しかしながら何故兄上はカイゼルについてのお話に私とアイリーン、メディス伯爵夫婦をお呼びになられたのですか?」
ガストンは、アリストンの行動を不思議に思い尋ねた。
ガストンの意見に賛同する様にマイクもアリストンを見て頷いた。
「では…本題に入るとしよう。カイゼルは、ここへ訪れた日の翌日にもここへ訪れたのだ。私がメディス伯爵邸にお邪魔している間にな…私が帰宅したらエリーゼと共に裏の畑にいたのだ…」
「何ですと?!それはまことですか?!」
アリストンが困った表情を浮かべながら言った。
すると、ガストンはアリストンの言葉に驚き言った。
「あぁ…ここへ情報を聞いて訪れた日に、カイゼルはカイゼルに対して無意識に拒絶反応を起こしているエリーゼを見て相当堪えたのであろう…自分の行動でエリーゼがこうなってしまった事を後悔している分余計に堪えたのだろう…」
アリストンは、ふぅ〜っと息を吐きながら説明した。
「しかし…何故、殿下はエリーゼのその様な状況を身を持って知ったというのに翌日にもここへ訪れられたのですか?」
アリストンの話を聞いてマイクが疑問に思い尋ねた。
「私も驚いた…カイゼルは、どうやらエリーゼに自分は私と同じ"なんでも屋"をしていると言ったみたいでな…それで私はカイゼルに何がしたいのだと尋ねてみたのだ。すると、カイゼルは自分はエリーゼの為にできる事をしたいと申してな…もしエリーゼの記憶が戻り自分をエリーゼが更に拒絶したとしてもそれを受け入れる覚悟はあると…カイゼルは自分のした事を悔やみ、それでもエリーゼの記憶が戻る手伝いが出来ないかとカイゼルなりに考えて出した結論なんであろうと思ったのだ…」
アリストンは、何とも言えない表情で説明した。
「しかし…エリーゼの記憶が戻った際に近くに殿下がおられる事でエリーゼが更に傷つく様な事にはなりませんか?」
マイクは、真剣な表情でアリストンへと尋ねた。
「その事については私も一番に考えたよ。カイゼルが近くにいる事でエリーゼの記憶が戻った時に混乱するのではないかと…しかし…私はカイゼルの決意を聞いてカイゼルは二度もエリーゼを傷つける様な事はしないと思うのだ。これは、叔父と甥という関係性の贔屓なところもあるのかもしれないがエリーゼとカイゼルが共に時間を共有する事でまた別の違った展開になるのではいないかと思ったりもするのだ…」
アリストンは、真剣な表情で自分の思いを四人へ説明した。
「伯爵達からしたらいい気はしないのは重々承知している…しかし…どうだろう?エリーゼとカイゼルが共に時間を過ごすことを許してはくれないだろうか…カイゼルはエリーゼとの時間を過ごす事できっと人間としても変わっていくだろうと思うのだ…記憶がなくとも心優しい愛情深いエリーゼと共に過ごしたらきっと…」
アリストンは、真剣な表情でマイクとナディアへと言った。
「………。正直…私は複雑な気持ちでございます。エリーゼは十分に傷を負っています…私も妻もエリーゼにこれ以上は傷ついて欲しくないと思っております。私達が、エリーゼに家族だと名乗らないのもエリーゼの事を思ってです…」
マイクは、少し表情を歪ませながら言った。
「伯爵…」
アリストンは、やはりダメか…という表情で呟いた…
「しかし…アリストン様のお陰でエリーゼが今こうして記憶はなくとも元気にやっているし私達家族の元へも連れてきて下さいました…アリストン様がそこまで考えてお話して頂いたのです。今回は一度だけアリストン様のお考えをのもうと思います…」
マイクは、アリストンの顔を真剣な表情で見て言った。
「伯爵…良いのか?」
アリストンは、驚いた表情でマイクへと尋ねた。
「はい…ただしこの一度だけです…それに、もしも少しでもエリーゼの負担になったり傷つく様な事があればその時点で殿下にはエリーゼへ近づくのをやめて頂きたいのです。あくまでエリーゼを優先という形であれば承諾致します…」
マイクはアリストンへと言った。
「あぁ…もちろんだ。私が監視するのは決定事項だ。私が見て少しでもカイゼルの行動が良くないと思えば私からカイゼルにエリーゼに近づくと事は許さないと伝えるつもりであった。」
アリストンは、真剣な表情で頷きながらマイクとナディアへと言った。
「では…アリストン様の監修の元という事で…」
マイクはアリストンへと言った。
「メディス伯爵…伯爵夫人…私から礼を言わせてくれ。息子の軽率な行動でエリーゼ嬢を傷つけておいてこの様に息子に機会を与えてくれた事を心から感謝する…」
ガストンが、マイクへと頭を下げてお礼を言った。
アイリーンも頭をさげたのだった。
「陛下…王妃様…頭をお上げ下さい…」
マイクは、困った表情で言った。
「伯爵…夫人…ありがとう。」
アリストンも、マイクとナディアへとお礼を言った…
そんな三人に向かって、マイクとナディアも頭を下げたのだった。
「ガストン、今後はカイゼルの行動予定を事前に教えておいて欲しいのだ…エリーゼにはカイゼルは私と同業者で見習いをしていると伝えているのだ。その為、事前に予定を聞いておけばこちらから次にこちらへ来いと言いやすいからな。」
アリストンは、ガストンへと説明した。
「承知しました。カイゼルの行動予定を一週間事に手紙にて事前にお伝えさせて頂きます。」
ガストンはアリストンへと言った。
「あぁ…よろしく頼む。」
アリストンはガストンへと言った。
「伯爵…伯爵達にもこちらの状況を細かく手紙にて知らせるつもりなので何かあれば伯爵の方からも言ってくれるといい。」
アリストンはマイクへと言った。
「はい。承知しました。感謝致します。こちらから何かありましたら手紙を出させて致します。」
マイクは、丁寧にアリストンへと言った。
「アリストン様、エリーゼは記憶をなくす前から頻繁に王都へと足を運んでおりました。自分の作ったパンを販売していたのです。王都ではエリーゼが伯爵令嬢だと知っている者がおります。ですので、王都の一部の地域ですがエリーゼを王都で見かけても伯爵令嬢だという事には触れないで欲しいというのをお伝えするというのは難しいでしょうか?」
マイクが、思い出したかの様にアリストンへと尋ねた。
「そうか…わかった。エリーゼの事を伯爵令嬢だと知っている者がいる地域だけでもエリーゼの記憶喪失の事を伝えて説明しておこう。」
アリストンはマイクへと言った。
「ありがとうございます。」
マイクはアリストンへとお礼を言った。
こうして、エリーゼやカイゼルが知らないところで大人達の話し合いが進んでいたのだった……
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次話から、エリーゼとカイゼルが過ごす場面が増える予定です★
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