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25.懐かしい気持ち

翌日、エリーゼとアリストンは朝食を済ませると出かける支度をした。


「エリーゼ…今日行く所には馬に乗って行くが大丈夫そうか?」


(襲われた際は馬車だったから、馬が怖いというのが体に染み付いている可能性があるからな…)


アリストンは、エリーゼへ確認をした。

そして、エリーゼが襲われた時の事を考え思っていた。


「はい…恐らく大丈夫だと思います。馬に乗った事があったのかなかったのかすら覚えていないのですか…」


「そうか…では、乗ってみて無理そうなら遠慮なく言ってくれ。」


「はい…分かりました。」


エリーゼは、考えながら応えた。

アリストンは、そんなエリーゼに優しく声をかけた。


そして、エリーゼとアリストンは家の近くの厩舎へと行き馬を用意してもらうとアリストンが先にエリーゼを馬へと跨がらせた。

そして、アリストンはエリーゼの前へと跨るように馬へと乗った。


「では、エリーゼ出発するぞ。ゆっくりと進むが、しっかりと私に掴まっておくのだぞ?」


「はい。分かりました。」


アリストンは、エリーゼへ言うとエリーゼの両手首を持ち自分の腰へと手を回させた。


(何故だろう…アリさんは大人の男性で優しくて素敵な方だけど一緒にいてドキドキするとうよりどこか落ち着くのよね…何だか懐かしい気持ちになるのよね…不思議だわ…)


エリーゼは、アリストンの腰に手を回してギュッとアリストンの服を握りながら思っていたのだった…


そして、エリーゼとアリストンは休憩を挟みながら厩舎を出て二時間ほど経ち、目的の場所へと到着した。

到着した場所は、メディス伯爵家の領地だった。

空気が気持ちよく広い緑が広がり、その中に牧場、畑、少し大きめの二階建てのロッジが建っていた。


「アリさん…ここは?」


領地に着いたエリーゼが、周りを見渡しながらアリストンへ尋ねた。


「ここが、エリーゼを連れてきたかった場所だ。先日、私がミルクやらチーズなどを持ち帰っただろう?それは、ここの酪農家の者たちから買ってきたのだ。」


アリストンは、エリーゼへ笑顔で応えた。


「そうなのですか?」


「あぁ…それでな、エリーゼに是非ここの者たちを紹介したくてね。」


「私にですか?」


「とてもいい者たちなのでな。」


エリーゼは、驚きながら言った。

アリストンが、エリーゼにマイク達を紹介したいと話していた時…


「アリさん…お待ち…しておりました…」


アリストンとエリーゼの元へとやって来て声をかけてきたのはマイクだった。


「やぁ。マイクさん…先日話をしていた今、私が面倒を見ているエリーゼだ。」


「エリーゼ、こちらはここの責任者で酪農家のマイクさん。隣にいるのは奥さんのナディアさん。そして、息子さんのブラットさんだ。」


アリストンは、マイクへと挨拶してエリーゼを紹介した。

エリーゼにも、マイク達を紹介した。


「あの…初めまして…アリさん所でお世話になっていますエリーゼと申します。」


エリーゼは、ペコっと頭を下げながらマイク達へと挨拶をした。


「……。初めまして…私はマイクといいます…」


「私は…ナディアです。」


「私は、ブラットといいます。私達の事は気軽に名前で呼んで下さいね。」


エリーゼの姿が目の前にある事に、嬉しさのあまり涙が零れそうなのをグッと堪えた三人は自分達も、あくまで初対面という形で自己紹介をしたのだった。


「はい。マイクさん…ナディアさん…ブラットさん…」


エリーゼは、少し照れながら三人の名を呼んだ。


(エリーゼ…本当に無事だったんだな…本当に良かった…)


そんなエリーゼを見て、マイクは心の中で本当に安心していたのだった。


「今日は、ここへマイクさん達の手伝いをしに来たんだよ。ここなら空気も良いしエリーゼの良い気分転換になると思ったしな。」


「本当に…ここはとても空気が綺麗で緑に囲まれてとても…落ち着くというか…何故だかとても懐かしい気持ちになります…良ければ私もお手伝いしてもよろしいですか?」


アリストンは、メディス伯爵家の領地に来た目的をエリーゼへと説明した。

エリーゼは、空気を吸い込みながらどこか懐かしいように微笑みを浮かべて言った。


「エリーゼが、こう言っているのだがマイクさんたちどうだろう…エリーゼにも手伝ってもらっても良いか?」


「はい…もちろんですとも…」


アリストンが、マイク達の方を向き尋ねた。

すると…マイクは涙を浮かべながら嬉しそうに微笑みながら応えた。

横にいたナディアとブラットも笑顔で頷いた。


それから、エリーゼはマイク達と乳搾りや畑の手入れに収穫、チーズ作りなどエリーゼの記憶がなくなる前のエリーゼが幼い頃よりやっていた事をしたのだった。


やはり、体は覚えているのか終始楽しそうにエリーゼはマイク達との時間を過ごしたのだった。


皆で昼食を済ませた後に、エリーゼとナディアとブラットは三人で楽しそうに採れたてのミルクと卵を使いプリン作りをしていたのだった。


そんな三人の姿を、アリストンとマイクはベンチに腰掛けながら見ていた。


「アリストン様、今日はエリーゼを連れてきて下さり本当にありがとうございました。体調を崩していた妻もエリーゼの姿を見て共に過ごす事ですっかり元気になった様です。何とお礼を申したら良いのか…」


マイクが、アリストンへ頭を下げながら心からお礼を言った。


「いや…本当はもっと早く連れてきてやりたかったのだがな…医者の外出許可が出ていなかったからな…」


アリストンは、申し訳なさそうな表情でマイクへと言った。


「何をおっしゃいますか。十分過ぎるほどでございます。あの子の元気そうな顔を見るだけで心から安心する事が出来ました。怪我をした傷も傷跡が残らないという事でホッと致しました。それに…エリーゼがここへ来た時に懐かしいように思うと言った時には、心のどこかには私達家族の事がちゃんといるのだなという事を知ることも出来ました。そして…こうしてまた家族で過ごす事が出来ています…これほど嬉しい事はございません。エリーゼの記憶がいつもどるかは分かりませんが私達家族は近くでそっと見守っていこうと思います…」


マイクは、エリーゼがナディアやブラットと楽しそうにしている姿を見て嬉しそうに微笑みを浮かべながらアリストンへと言った。


そんな表情を浮かべながら話すマイクを見てアリストンは口を開いた。


「この様に家族の対面をしている時に申し訳ないと思うのだか…実は…カイゼルの事で伯爵夫婦に話があるのだ…」


「殿下の事でございますか?」


「あぁ…詳しい事は後日話そうと思うのだが…実はカイゼルが私が伯爵達にエリーゼの事を伝えた日にエリーゼの元へと来ていたのだ…」


「殿下がエリーゼにですか?それは一体どういう事でしょう?」


アリストンは、言いにくそにマイクへと言うとマイクは驚いた表情を浮かべた。

そんな、マイクに更に言いづらそうにアリストンは言った。

アリストンの言葉に思わずマイクは声が大きめになったのだ。


ハッとなったマイクは、エリーゼ達の方を見たがどうやらマイクの声は聞こえていなかった様で安心した。


「話せば長くなるので、申し訳ないが明日予定がなければ私の自宅へと来てほしいのだがどうだろう?」


「……。アリストン様の御宅にお伺いするのは構いませんが…アリストン様は殿下の事で何かお考えがあるのですよね?」


「………。あぁ…私の考えも含めて伯爵達には話をしたいと思っている…」


アリストンは、渋そうに顔をしてマイクへと尋ねた。

マイクは、何かを考える様な表情で言った。


「話をまとめて話したい事もあり、ガストン達も伯爵達と共に呼ぼうと思っている。王宮で話すよりは私の家で話した方が良いだろうからな…伯爵達はガストン達へはまだ会いたくないだろうが、私の顔を立てると思って同席の許可を貰えないだろうか?」


アリストンは、気まずそうにマイクへと説明した上で尋ねた。


「………。分かりました。アリストン様にはエリーゼがお世話になっておりますし、殿下の事でしたら陛下と王妃様がいらした方が話も早くまとまるでしょう…同席は構いません。妻にもきちんと伝えておきます。」


マイクは、しぶしぶそうだったが話し合いの件について了承したのだった。


「ありがとう…助かるよ。」


アリストンは、マイクへとお礼を言った。



そして、あっという間にエリーゼとアリストンが帰る時間になった。


「今日は、色々とお手伝いさせて頂きありがとうございました。とても楽しかったです。あの…宜しければまたこちらへ伺ってもよろしいですか?こちらでまた皆さんとの時間を過ごしたいと思うのですが…」


エリーゼは、帰り際にマイク達へと言った。


「そんな事…大歓迎だよ。いつでも好きな時に来てくれるといい。手紙を出してくれたらその日はエリーゼに予定を合わせるから。」


「ええ…いつでもおいでなさい。私達もとても楽しい時間が過ごせたからまたエリーゼが来てくれるなんて嬉しいわ。」


「あぁ…またおいで。また一緒に乳搾りをしよう。今度は僕がポニーにも乗せてあげるよ。」


エリーゼに言われると、マイク、ナディア、ブラットはとても嬉しそうに笑いながらエリーゼ優しい言葉で歓迎したのだった。


「本当ですか?ありがとうございます。とても嬉しいです。」


エリーゼは、満面の笑みでマイク達へとお礼を言った。


「では…私達はここで失礼するよ…」


「はい…お気をつけてお帰りください…」


アリストンがマイクへと言うと、マイクもアリストンへと言った。


「では、さようなら!」


「「あぁ…」」

「えぇ…」



エリーゼが挨拶をすると、マイク達は笑顔で応えたのだった。


こうして、エリーゼが記憶をなくしてから初めての外出の長い長い一日が終わったのだった。

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