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24.エリーゼへの依頼

アリストンは、カイゼル達との話を終えるとエリーゼを一階へと呼んだ。


「エリーゼ、待たせてすまなかったな。」


「いえ、大丈夫ですよ。お話は終わりましたか?」


「あぁ…終わったよ。」


「そうですか。良かったです。」


一階へと下りてきたエリーゼへアリストンは言った。

エリーゼは、話が終わった事を聞くとホッとした様な表情で応えた。


「それでだな、この者達と話をしていたのだが…この者達は私と同業者だがまだまだ修行中の身なのだ。分からない事や出来ない事などが多いのだ。そこでだ…エリーゼにこの者達へとエリーゼが教えられる事を教えてやって欲しいのだ。」


「え?私がですか?ですが…私に教えれる事など何もないと思うのですが…」


「エリーゼが教えるのは一般的な事だよ。我々の仕事は時に体が動かしにくい者の家で家事などの仕事を受ける事もあるのだ…だから、エリーゼには普段している小さな事などを教えてやって欲しいのだ。これからエリーゼも少しづつ外出していくことになるだろうし私が仕事の時にはこの者達をエリーゼの用心棒として働いて貰うよ。」


「なんでも屋のお仕事というのは大変なのですね…私でお役に立てるのであればアリさんのお知り合いですし協力はしますが…」


アリストンは、違和感なくエリーゼへとカイゼル達の事を説明した。

そして、エリーゼにカイゼル達への指導をお願いした。

エリーゼは急な事でとても驚き困っていたがアリストンが上手く説明したのでエリーゼは悩みながらも協力をすると言ったのだった…


「エリーゼありがとう。助かるよ。この者達が少しでもおかしな事をしたらすぐに私に言ってくれたらいいさ。私がこっぴどく懲らしめるかな。」


「ふふ…アリさんが懲らしめるって…おかしな事をされたらすぐに報告しますね。」


「ああ…そうしてくれ。」


アリストンは、冗談混じりでエリーゼへと言いエリーゼの笑いを誘った。

エリーゼの先程までの困った表情が笑顔になったのだ。


「では、お前達エリーゼへ自己紹介を。」


「「はい。」」


アリストンは、カイゼルとフェイへと言った。

二人は返事をするとエリーゼの前へと立った。


「わた…俺の名前は、カイだ。歳は二十歳だ…指導の方をよろしく頼む。」


「僕は、フェイといいます。歳は二十六です。分からない事だらけなので色々と教えて貰えると助かります。よろしくお願いします。」


カイゼルとフェイは、エリーゼへとそれぞれ挨拶をしたのだった。


「カイさんに…フェイさんですね…こちらこそお役に立てるか分かりませんがよろしくお願いします。私の名はエリーゼといいます。アリさんからお聞きになっていると思いますが、私は何らかの事情で記憶がなくなっている状況です。自分の住んでいた所はおろか、自分の名前も歳も思い出せません。名前はアリさんが仮でつけて下さいました。歳は十六歳ぐらいだろうと…ですので、逆にご迷惑をかけてしまう事もあるかもしれませんがよろしくお願いします…」


エリーゼは、少し緊張した面持ちで自分の置かれている状況を伝えた上で自己紹介をした。


エリーゼの話を聞き、カイゼルは胸が苦しくなるのを感じた。


「話は聞いている。その…俺たちも君の記憶が戻る様に力になれたら良いと思っている…」


「僕もそう思っています。」


「お二人共ありがとうございます…」


カイゼルは、胸が痛みながらもエリーゼへと不器用ながらに言った。

フェイも、カイゼルに共感する様にエリーゼへと言った。

そんな二人の言葉に、エリーゼはお礼を言った。


「あと…その、君の事はエリーゼと呼んでもいいか…?」


「えっ?はい…エリーゼとお呼び下さい…」


カイゼルは、思い切ってエリーゼへと尋ねた。

すると、エリーゼは少し驚いた表情を浮かべたが頷きながら応えた。


「僕は、エリーゼさんと呼ばせてもらっても?」


「はい。大丈夫です…」


フェイも、エリーゼへとにこりと微笑みながら尋ねるとエリーゼは頷きながら応えた。


「さぁ…一先ず話はまとまった事だから、今日はこの辺でお前達は帰るといい。またここへ訪れるのであれば三日後にしてくれ。エリーゼは、これから医者にその後の様子を診察してもらおうと思うからな。診察の結果次第では、エリーゼは普通に外出も出来る様になるだろうしな。」


「分かりました…では、今日はこの辺で帰ります。話を聞いてくださりありがとうございました…」


「ありがとうございました。」


「…あぁ…」


ある程度の話が終わったとみたアリストンが、カイゼルとフェイへと言った。

カイゼルとフェイは、すぐに応えてアリストンへとお礼を言った。

アリストンは、どっと疲れた様な表情で返事をした。


「では、エリーゼ…三日後また来るから…」


「はい…。わかりました。お気をつけてお帰りくださいね。今日は…その…草取りのお手伝いどうもありがとうございました。とても助かりました…」


カイゼルは、少し名残惜しそうにエリーゼへと声をかけた。

すると、エリーゼは慌てて応えた。

そして、カイゼルへとお礼を言ったのだった…


「では、失礼しますね。」


「あぁ…」

「はい。」


フェイが、カイゼルの名残惜しさをスパッと切るよう言った。

アリストンとエリーゼは、同時に応えたのだった…

そして、カイゼルとフェイはアリストンの家を後にしたのだった…


カイゼル達が帰った後で、すぐに入違いで医者が訪れてきた。


そして、エリーゼの経過を診察してもらった。

結果は、順調で頭の傷の方はすっかりと治っており痕も残らないだろうとの事だった。

そして、明日から外出も問題ないとの事だった。


エリーゼは、医者の診察後の話を聞きホッとしたように嬉しそうな笑顔を浮かべたのだった。


(頭の傷は残らないみたいで良かったわ…後は、本当に…記憶が戻ればいいだけなのね…記憶…いつ戻るかしら…)


エリーゼは、嬉しさの半面不安な気持ちももちろん持っていたのだった…


医者が帰った後、アリストンからエリーゼへと話をした。


「エリーゼ、経過順調そうで良かったな。傷跡も残らない様で本当に良かったよ。」


「はい。ありがとうございます。これも、アリさんが助けてお医者様に診せて下さったお陰です。本当にありがとうございます…」


「いや…私は人として当たり前の事をしたまでさ…」


「怪我を負った上に、記憶がない私にここまで良くして頂いたお陰です。ありがとうございます。」


「そんなに礼を言われると見返りを求めるぞ?パンを焼いてくれと…」


「ふふ…アリさんの為なら沢山焼き立てをご馳走します。」


アリストンは、エリーゼへまずはホッとした様子で経過が順調な事を良かったと言った。

エリーゼは、頭を下げながら何度もアリストンへとお礼を言った。

あまりに感謝をされたアリストンは、エリーゼにこれ以上言わせない様に冗談を言ってエリーゼを笑わせたのだった。


「それでだな…外出も問題なく出来るという事でエリーゼを連れて行きたい場所があるんだよ。」


「私を連れて行きたい所ですか?」


「あぁ…どこへ行くのかは着いてからのお楽しみだが、きっとエリーゼは気にいる場所だ。」


「??アリさんが言うのであればきっと良い所なのですよね…分かりました。」


「あぁ…良い所だ。では、明日朝から出かけるとしよう。」


「はい。分かりました。楽しみにしておきますね。」


「あぁ…」


アリストンは、エリーゼへ早速行き先は秘密だが連れて行きたい所があると言った。

エリーゼは、不思議に思いながらも笑って了承したのだった。


アリストンは、その日の夜のうちに急ぎメディス伯爵邸へと手紙を出した。


手紙には、明日エリーゼを連れて伺うから計画通りにお互い動くようにと…


(メディス伯爵は、急な対応にもきっちりと応じてくれる人で助かったな…いつエリーゼを連れていけるかと思っていたが思ったよりも早く連れて行けそうで良かった…きっとメディス伯爵邸の皆は喜んで優しくエリーゼを迎えてくれる事だろう…エリーゼがメディス伯爵達と過ごして少しでも記憶を取り戻す手助けになるといいのだが…)


アリストンは、そんな事を思いながら手紙の続きを書き急ぎ手紙メディス伯爵邸へと運ばせたのだった。

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