23.伯父と甥
畑にいる三人を見て声をあげたのは、任務から帰宅してきたアリストンだった。
「アッ…アリさん。お帰りなさい。」
「あぁ…ただいま。それより何故この者達がここへいるのだ?」
「この方達はアリさんと同業者の方だとお聞きしましたが…」
「私と?」
エリーゼが、驚きながらもアリストンへ挨拶をした。
エリーゼに応えたアリストンは、カイゼルとフェイの方を見ながら言った。
すると、エリーゼはきょとんとした様な顔でアリストンへといった。
アリストンは、エリーゼの言葉を聞いて何となく目の前の状況を察してカイゼルとフェイを軽く睨みつけた。
カイゼルとフェイは、アリストンに睨らまれ気まずそうな表情を浮かべていたのだった。
「分かった…エリーゼ一先ず家に入ろう。」
「え?はい。分かりました。」
「お前たちも、一先ず家へ一緒に入れ。話しはそれからだ…」
「「はい……」」
アリストンは、エリーゼへは優しく声をかけたがカイゼルとフェイに対してはやれやれと言った表情を浮かべながら言った。
アリストンに言われたカイゼルとフェイは、バツが悪そうな顔で応えたのだった。
そして、四人は家の中へと入った。
「エリーゼ…すまないが、この者達と大事な仕事の話をするから自分の部屋に行っててくれるか?」
「はい。分かりました。飲み物をお出ししてから部屋に行きますね。」
アリストンは、申し訳なさそうにエリーゼへ言った。
エリーゼは、快く返事をしたのだった。
そして、エリーゼは畑に持って出ていたポットの中のホットミルクを温め直して少し蜂蜜を垂らし入れた。
温め直したホットミルクを三人分用意して、アリストン達のいる机へと持っていき並べた。
「アリさん、お仕事お疲れ様でした。外は寒かったでしょう?蜂蜜入りのホットミルクです。体が温まりますので飲んでからお話してくださいね。」
「あぁ…ありがとうエリーゼ。いただくよ。」
エリーゼは、優しい笑みを浮かべてアリストンへと言った。
すると、アリストンも優しい笑みでお礼を言った。
「あの…よろしければお二人の分もありますので飲んで下さい。寒い中でお手伝い頂いたので…体が温まりますので…」
「あっ…すまない…ありがとう。いただくよ。」
「ありがとうございます。美味しくいただきますね。」
エリーゼは、カイゼルとフェイの前にもホットミルクを起き声をかけた。
カイゼルは、驚きながらもお礼を言った。
フェイも、笑顔でお礼を言った。
(ホットミルクか…初めてエリーゼ嬢に会った時の事を思い出すな…懐かしい味だ…あの頃と全く同じ味だ…)
カイゼルは、そんな事を思いながら一口一口を笑みを浮かべながら味わったのだった…
エリーゼは、ホットミルクを出し終えたので自分の部屋へと上がっていた。
エリーゼが、部屋に入った音を確認したアリストンはエリーゼに向けていた笑顔から一転真顔になりカイゼルとフェイを見たのだった。
「それで…お前達はいつから私と同業者になったのだ?」
「それは…話の流れでつい…」
「はぁ…どうなったらその様な話になるのだ…それに、何故また訪れたのだ?」
「それは…」
アリストンは、カイゼルとフェイをギロリと睨みつけながら言った。
カイゼルは、バツが悪そうに応えたがアリストンは呆れた様に言った。
カイゼルは、何と説明していいのか分からない様だった。
「それで?何だ?」
「それで…彼女は、私が探していた人なのです。何故探していたかは事情があり詳しくは話せないが……のですが、彼女の記憶がないのであれば少しでも彼女の記憶が戻る手助けをしたいと思ったのです。」
「だが、エリーゼは君に対して何故だか怯えた表情を浮かべていたが?そんな者をエリーゼに近づけるのを見逃せと?」
「それは…確かにそうかもしれませんが…私は彼女に私という人間は怖くないという事を分かって欲しいと思っています。」
アリストンは、あえて冷たくカイゼルへと尋ねた。
カイゼルは、渋い表情を浮かべながらアリストンと自分の気持ちを伝えた。
だが、アリストンはあえて皮肉を交えた言葉を投げつけた。
それでも、カイゼルは自分の気持ちをアリストンへと伝えたのだった。
(カイゼルは、エリーゼからの本能的な拒絶に耐えられずにいるのだろうと思っていたが…あの誘拐事件から人間不信気味になったのもありエリーゼとの事もこじらせこの様な事になった様だがその責任を取ろうと思っているのか…)
アリストンは、眉を細めながらカイゼルの話を聞いて考えていた。
「どの様にしてエリーゼに、お前という人間をわかってもらおうと?」
「彼女の側で分かっていってもらおうと考えたので、こちらへ伺ったのです…」
「側にだと?」
「はい。なので、今日は彼女に近づいて良いかの許可が欲しいと思っています。」
アリストンは、あえて更に踏み込んで聞いたらカイゼルはエリーゼの側で時間を過ごしたいと提案したのだった。
アリストンは、一瞬目を細めたがそのままカイゼルの話を聞いたのだった。
「エリーゼが、悲しんだり苦しんだりする事は絶対にしないと誓えるか?」
「はい。」
「もしも、私が見て駄目だと思ったら二度とエリーゼの前には現れない関わらないと約束出来るか?」
「はい。」
アリストンは、真剣な表情でカイゼルに尋ねるとカイゼルも真剣な表情でアリストンの目を見て応えたのだった。
(カイゼルがどこまで本気なのか見守ってやるのも私の仕事なのか?!んんー……)
アリストンは、内心かなり悩んでいたのだった…
アリストンは、悩んだ末に口を開いた。
「分かった…では、私と同業者の新入りな二人としてエリーゼにお前らを紹介してやる。まだまだ修行を積んでいる最中だという事にして、エリーゼに話しを振ってやる。それ以降の事は自分達でどうするのかを考えるといい。」
「「ありがとうございます。」」
アリストンは、カイゼルとフェイへエリーゼへの説明の流れをざっくりと伝えると二人は頭を下げながらアリストンへとお礼を言った。
「それと、エリーゼの事を探していたのなら分かっていると思うがエリーゼは自分が伯爵令嬢だという事も覚えていないから彼女の前で伯爵令嬢だなどと言うのはやめるように。」
「「はい。」」
アリストンは、カイゼル達へエリーゼにはエリーゼが伯爵令嬢だという事は言わない様にと釘をさした。
カイゼルとフェイは、頷きながら応えた。
「お前達、名前は?私の名はアリだ。」
「アリさんですか…よろしくお願いします。俺の名前はカイゼ……カイです。」
「私はフェイと申します。よろしくお願いします。アリさん。」
アリストンが、二人へ名前を訪ねるとカイゼルは王太子とバレてはまずいので名前を短くしたものを使って応えた。
フェイは、そのままの名前を使ったのだった。
「あぁ…」
アリストンは応えた。
(しかし、不思議な巡り合わせだな…危機なところを助けられた二人と、それを助けた少女か…これからの事はしっかりと慎重に様子を見ないとな…カイゼルの事は一先ずガストンに直接会って話をした方が良さそうだな…メディス伯爵には少し様子を見てから相談した方が良さそうだな…カイゼルとエリーゼを会わせるのは嫌だろうからな…)
アリストンは、目の前の状況を見ながら考えていた…