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20.それぞれの思い

アリストンの家から戻ったカイゼルとフェイは、カイゼルの執務室にいた。


「殿下、エリーゼ様が一先ず無事でいらして良かったですね…」


「あぁ…しかし…記憶喪失になっているとは…。エリーゼ嬢が記憶喪失になったのは、間違いなく私のせいだ…理不尽に罵倒して王宮から追い出した上に馬車が襲われ怪我まで負って…私がエリーゼ嬢を王宮なら追い出す様な事をしなければこの様な事にはならなかったのだ…」


「殿下……」


フェイが、カイゼルへとフォローする様に言った。

しかし、カイゼルは悔しそうに唇噛み締め拳を強く握りしめながら自分の愚かさを嘆いたのだった。

そんな、カイゼルをフェイは心配そうに見ていたのだった…


「きっと、いつ記憶が戻るかも分からないのだろうな。」


「そうですね…記憶喪失というものはすぐ戻る事もあれば一生戻らないとも聞きますので。」


「一生戻らないか…一生戻らなければ私の事を思い出す事もないのだろうな。まぁ…記憶がなくとも私を見てあの様に震えて怯えてるのだから、よほど彼女にとって私という存在は思い出したくもないものなのだろうな…例え記憶が戻ったとしても、彼女はもう…私を許してはくれないだろうな…」


「殿下……その様に気持ちを落とされますな。その様に考えていても何も変わりません…」


カイゼルは、俯きながら言った。

そんなカイゼルにフェイは切なそうな表情を浮かべて言った。

カイゼルは、切なそうな表情を浮かべて情けなさそうにフッと口角を上げながら言った。

そんなカイゼルにフェイは言葉をかけたのだった。


「私は一体どうしたらいいのか…」


「殿下…」


カイゼルは、頭を抱えながら呟いた。

そんなカイゼルにフェイは心配そうに声をかけたのだった。




同じ頃、アリストンの家ではアリストンがマイクから貰ってきたミルクなどをエリーゼへと見せていた。


「さぁ…これだけあれば美味しいものが沢山作れるだろう?ここの物は本当に美味しいのだ。」


「本当に美味しそうですね…この小麦粉などとてもいい香りがしますね。パンを焼けばきっと最高の仕上がりになりますね。」


「エリーゼは、記憶がなくても体が色々な事を覚えているのだな。」


「そうなの…でしょうか…確かに、掃除や料理するのに困った事はなかったですね。私は、記憶をなくす前は使用人か何かだったのですかね…」


「それは…わからないな。はは…だが、無理に思い出さずとも時が来たらきっと記憶も戻るだろう。」


「はい。そうだといいんですけど…」


アリストンは、自慢気にマイクから貰ってきたものをエリーゼへ見せた。

エリーゼは、目の前にあるとても美味しそうな食材に目を輝かせたのだった。

すると、アリストンは笑顔でエリーゼへと言うとエリーゼは、悩む様な表情で応えた。


「一先ず、パンを焼いてみてはどうだ?」


「上手く作れるでしょうか…」


「体が覚えているのならば大丈夫だろう。」


「……。そうですね。はい。作ってみます。」


アリストンがエリーゼへと提案した。

提案されてエリーゼは、困った表情で少し考え込んだがアリストンの言葉に頷きパンを焼くことにしたのだった。


「後で、パンを焼いている間に裏にある畑を案内するよ。野菜は好きにそこから採ってくれたらいいから。」


「はい。ありがとうございます。」


アリストンが、言うとエリーゼはにっこりと笑いながら応えたのだった。


そして、エリーゼはいざパン作りを始めたのだった。


(本当に…不思議だわ。記憶がないのに体は覚えているものなのね…パンを作る工程にまったくつまずかないわ。)


エリーゼは、パンを作り始めてすぐにそんな事を考えていた。


そして、エリーゼはあっという間にパンを焼くところまでの工程を終わらせたのだった。

エリーゼは、形成したパン生地をオーブンの中へ入れた。


そして、アリストンへとパンを焼き始めた事を伝えたのだった。


アリストンは、エリーゼから聞くとエリーゼを連れて家の裏にある畑へと向かった。


敷地はおおきいものではないが、畑にはたくさんの野菜がなっていたのだった。


「本当にたくさんのお野菜がなってますね。これを一人で維持されているのですか?」


「あぁ…始めたばかりの頃は大変だったが数年経った今は一人で維持出来る様にまでなったよ。寒さが増してきているが、まだまだ収穫出来る野菜はあるから料理に使うのに好きに採るといい。」


「アリさんは、凄いですね。なんでも屋さんをしているだけありますね…何だか収穫するのが勿体ないくらいです。」


「はは…エリーゼは褒め上手だな。」


「私にも畑仕事をお手伝いさせてもらえませんか?」


「畑を?それは…構わないが…寒さが増してきているから大変だぞ…」

 

「はい。でも、少しでもアリさんのお手伝いが出来るの嬉しいで。」 


「……。そうか。わかったよ。ではお願いするとするよ。」


「はい。」


畑を目にしたエリーゼは立派な畑に驚いて言った。

エリーゼに褒められて満更でもないはいアリストンは応えた。

すると、エリーゼは自分も畑仕事を手伝いたいと提案したのだった。

アリストンは、悩んたが提案をのむことにしたのだった。


(私も、変わらず任務があるから家を空ける事は日常茶飯事だしな。その間にエリーゼが家で退屈をせず伸び伸びと生活して欲しいからな…元々、畑を作ったのもエリーゼがきっかけだから…きっと体が覚えているのなら楽しく畑仕事をしてくれることだろう。そうして少しづつ記憶が戻る手助けが出来るといいな…)


アリストンは、エリーゼを見つめながらそんな事を考えていたのだった。


そして、アリストンとエリーゼは畑の野菜を採って家の中へと入ったのだった。


この日の夜は、エリーゼがアリストンの持って帰ってきたメディス伯爵家のミルクやチーズや小麦粉を使い寒い日にぴったりのシチューを作ったのだった。

エリーゼが焼いたパンは、美味しそうに焼き上がっていたのだった。


そして、エリーゼとアリストンは二人で食卓を囲んで食事を楽しんだのだった。


(エリーゼ…あの頃よりパン作りの腕を上げたのだな…)


アリストンは、エリーゼの焼いたパンを口にしながらしみじみと思いを募らせながら思っていた。


この日の夜、アリストンはエリーゼが寝たのを確認すると国王であるガストンへと手紙を書いたのだった。

そして、夜のうちにガストン宛の手紙を出したのだった…

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