2.伯爵令嬢・エリーゼ
エリーゼは、サザン王国にあるメディス伯爵家の令嬢だ。
メディス伯爵家は代々、貴族には珍しく贅沢をあまり好まない家系であった。
代々当主は、爵位と共に酪農をも受け継ぐ酪農家であった。
酪農以外でも、土地柄小麦の生産もしているのだった。
牛から搾ったミルクを使って加工品なども作り王宮や王都へ出荷もしていた。
メディス伯爵家は、使用人も最低限しか雇わず自分で出来る範囲の事は自分でやるというスタンスの貴族だった。
その為、雇っている使用人達との関係は家族と変わりない程仲の良い関係であった。
王都へ、加工食品や小麦や小麦を使ったパンなどを良心的な値段で卸していた事もありメディス伯爵家は平民からも慕われていた。
メディス伯爵家は、当主であるメディス伯爵のマイク、妻で伯爵夫人のナディア、息子のブラット、娘のエリーゼの四人家族であった。
メディス伯爵家の当主は、代々とても温厚で人当たりがよく優しい心の持ち主であった。
その為、妻のナディアも息子のブラットも娘のエリーゼも心優しい性格だった。
特に、心優しかったエリーゼは王都の平民からは……
【王都の天使】
とまで呼ばれていた。
その理由は、エリーゼは小さな頃からパン作りと編み物がとても得意だった。
エリーゼは、自分の作るパンを少しでも沢山の人に美味しいと食べてもらい皆が笑顔になる事を願っていた。
その為、エリーゼは幼い頃より家族と共に王都へパンを売りに通っていたのだった。
エリーゼが、作るパンはとても美味しく食べると不思議と優しい気持ちになり食べた人は、皆笑顔で美味しいと言っていたのだ。
貴族であるにも関わらず飾る事もなく、平民に対しても常に同じ目線で優しい気持ちを持ち接していたのだった。
エリーゼは、爵位は低い貴族だが容姿はずば抜けていた。
エリーゼは、美人というよりもとても可愛らしいという方がぴったりな容姿だった。
特に、エリーゼの笑顔は皆もつられて笑顔になってしまうほどの優しい微笑みだったのだ。
そんなエリーゼは、いつからか王都の平民の間で……
【王都の天使】
と、呼ばれるようになったのだった。
そんな、エリーゼは小さな頃から自分の父と母のようにお互いを想い合い…助け合い…いつまでも仲睦まじい夫婦に憧れていたのだった。
『いつか、私もお父様とお母様の様にお互いにお互いを想い合い、助け合い、仲睦まじくいられる相手と結婚して普通の幸せな生活送りたいの。』
エリーゼは、口を開くといつも嬉しそうに自分の夢を家族に語っていた。
それを聞いた家族も使用人達も、いつもにこにこと優しい笑顔でエリーゼの幸せを願っていたのだった。
エリーゼは、そんな優しい心を持ったまますくすくと成長していった…
気づけばエリーゼも、十五歳を迎えていたのだ。
エリーゼは、ずっと変わらず家の酪農の仕事も手伝うし加工食品を作る手伝いもしていた。
更には、パン作りの腕もあげたせいかその頃には王都へパンを売りに行くと数年前より更に早く完売していたのだ。
エリーゼは、皆が喜んで笑顔でパンを買っていってくれる事が嬉しくて仕方なかった。
エリーゼは、いつも自分の事より人の事を思うほど優しい少女だった。
寒い時期がやって来ると、エリーゼは家族と使用人の分の靴下や手袋を編んで渡したりもしていた。
エリーゼが編んだ物は、とても丁寧に編まれていてとても暖かくなる物だった。
エリーゼは、いつも感謝の気持ちを込めて編んで皆に渡していたのだった。
エリーゼは、そんな日々をとても幸せだと思っていた。
家族と共に過ごし、笑顔の耐えない日常。
エリーゼは、そんな幸せな毎日が当たり前の様に続いていくものだっと思っていた……
しかし、ある日を境にそんな生活が一変する事になったのだった…