16.アリの正体
アリは、マイクと話をしながら八年前の出来事を思い出していた………
アリの本当の名は…
アリストン・バル・サザン
現・国王の兄である。
元々、国の王太子だったアリストンは十歳の時に弟であるガストンへ王太子の座を譲りたいと父である当時の国王へと申し出たのだ。
アリストンは、初めて王都へ出て自分の目で国の状況を見てから自分は王宮ではなく王宮外でから国を守る働きをしたいと思っていたのだ。
元々、表舞台が好きではなかったアリストンは時間を見つけては王宮を抜け出して王都へと足を運んでいたのだった。
その度に、側近であるペレを困らせていたのだ。
しかし、幼い頃から共にアリストンと過ごしてきたペレはアリストンの一番の理解者なのだった。
アリストンは、弟のガストンが王太子。そして、国王になった際王宮外からガストンの力になると言い切った。
当時の国王は、文武両道のアリストンを将来国王と考えていた為になかなか首を縦に振らなかったがアリストンの熱意に根負けしてガストンを王太子としたのだった。
国には、アリストンは体調が優れない為に弟のガストンが王太子となったと伝えたのだった。
アリストンは、十歳にして側近のみを連れて王宮から出たのだった。
その後、拠点を王都に移したアリストンは表向きはなんでも屋として暮らしていた。
その後は、国の為に裏方の仕事をし続けたのだった。
ガストンが、国王となって十三年目の事だった。
ガストンの息子である王太子のカイゼルが誘拐されるという事件が起こったのだ。
アリストンにも、すぐにその知らせは入りカイゼルの捜索に全力で協力した。
アリストンは、すぐにカイゼルが誘拐され監禁されている場所を突き止めたのだった。
一刻を争う状況だったので、すぐに監禁場所へと攻め込んだがそこにカイゼルの姿はなかった。
そこにいたのは、誘拐犯と思われる三人の姿しかなかったのだ。
「お前たち、王太子殿下はどこだ?!」
アリストンは、鋭い目つきで睨みあげ三人に向かって怒鳴り尋ねた。
「隙をつかれて逃げられたんだよ…」
犯人の一人が、顔をひきつらせながら応えた。
「なんだと?!ペレ!直ぐに王宮へと向いこの事をガストンに伝えて騎士団に捜索をさせるんだ。」
「はい。承知致しました。」
犯人の言葉を聞き、アリストンはすぐにペレに指示を出した。
ペレは、返事をするとすぐにその場を後にして王宮へと向かったのだった。
「お前たち…観念するんだな…もう逃げ場はない!!」
アリストンは、そう言うと三人の元へと走り込み一気に二人の首を剣の持ち手で突き気絶させた。
残った一人は、カイゼルの講師を努めていた者だった。
その者は、思い切りアリストンへと剣を振り下ろしてきた。
アリストンは、瞬時に避けたが相手の剣の先がアリストンの腕をかすめたのだった。
だが、直ぐにアリストンが相手の脇腹に剣の持ち手を思い切り叩きつけて気絶させた。
アリストンは、三人の手足を縄で縛った。
(王宮の騎士団が到着するまでこちらはこれで問題ないだろう…しかし、カイゼルはどこへ逃げたのだろうか…早く見つけなければこの寒さの中外で過ごすの危ないな…)
アリストンは、縛った三人を見つめながらそんな事を考えていた。
そんなアリストンは、急な目眩に襲われた…
アリストンは、目眩と同時に身体の異変に気づいた。
(毒か…やつらの剣に毒が塗られていたのか…)
アリストンは、身体の異変は毒によるものだと瞬時に気がついた。
一気に体に毒が回ってきた為、アリストンはまずいと思いすぐにその場から立ち去り助けを求めなければと思った。
そして、アリストンは毒が回る中必死で前に前にと進んだ…
しかし、目眩で目が霞んできたアリストンはその場へ倒れ込んでしまったのだった…………
(私とした事が…毒に全く気づかなかったなど…)
アリストンは、そんな事を考えながら意識が段々と薄れていったのだった…
「大丈夫ですか?どうされたんですか?…ん?これは…毒か…大変だ。急いでこの者を邸まで運ぶぞ!」
アリストンは、意識が遠退く中誰かが自分に声をかけてくるのが聞こえた…
だが、それにアリストンは応える事なく意識を失ったのであった…
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※この話から、名称で呼ばれる時以外はアリをアリストンと表記する事になります。