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12.8年前の出来事

エリーゼが乗った馬車が襲われた現場へと向かう道のりで、カイゼルは昔の事を思い出していた…



今から、八年前…

王宮内で事件は起きたのだった…


王宮内で、当時十二歳だった王太子であるカイゼルが誘拐されたのだった。


カイゼルを誘拐したのは、当時カイゼルの講師をしていた者だった。

その者は、隣国のスパイだったのだ。

何年もかけて、カイゼルの講師としての信用を手にして頃合いを見て行動に出たのだった。


隣国の狙いは、カイゼルを誘拐してカイゼルを返す交渉条件としてサザン王国の財源や権力などを奪い取ろうとしていたのだ。


しかし、カイゼルは誘拐されたものの相手の隙をつき監禁されていた場所から逃げ出したのだった。

監禁されていた場所がどこなのか分からなかったカイゼルは、雪が降る中ただひたすら走り続けたのだ。


止まる事なく走り続けたカイゼルは、ようやくサザン王国の王都まで辿り着いたのだ。

しかし、カイゼルの体力は既に限界に達していたのに加えて雪が降るほどの寒さだった為もう歩く事も出来なくなっていたカイゼルは細い路地の中に最後の力を振り絞り入っていった。


カイゼルは、もう動く事もできない程に疲れ切っていていつの間にか雪が降る中眠ってしまっていたのだった……


どの位寝ていたのか分からないが、カイゼルは首の辺りに急に温かさを感じて目を開けた。

目を開けた先には見知らぬ少女が居たのだった……



「あら…目を覚ましましたか?」


少女が、カイゼルに向かって声をかけた。


「人が倒れているから驚きました。死んでいたらどうしようと思いましたが寝ているだけの様だったので安心しました。眠りながらとても寒そうにされていたので勝手にですが、マフラーを首に巻かせてもらいました。」


少女は、驚いたり笑ったりコロコロと表情を変えながらカイゼルへと話しかけた。


「私は…ここで寝てしまっていたのか…」


カイゼルは、寒さに震えながら呟いた。


「その様ですが…一先ず身体がとても冷えてますのでまずは温めないといけません…良かったらこれを飲んでください。温まりますよ…」


少女は、心配そうな表情を浮かべながらカイゼルへと言った。

そして、持ってきたカゴの中からポットを出してポットの中に入っていたホットミルクをコップへと注ぎカイゼルへと差し出した。


(何だ…王太子である私に毒味なしの物を飲めだと……?それでなくとも誘拐されてから渡された飲み物や食べ物には何が入っているかわからないから一切口にしていなというのに…それに…今回の事で人など簡単に信じてはいけないし、人間は皆自分が手に入れたい物の為なら平気で人を裏切る一番歪んだ心を持つ生き物だということを見を持って知ったというのに…)


カイゼルは、差し出されたホットミルクを見つめながら険しい表情を浮かべて考えていた。


「もしかして…ホットミルクはお好きではなかったですか?!少し蜂蜜を入れているのでほんのり甘くて美味しいんですけど…」


少女は、カイゼルが険しい表情を浮かべながらホットミルクを見つめていたのに気づき声をかけた。

そして、残念そうな顔をしながらコップのホットミルクを自分で飲み干したのだった。

そして、蕩ける様な幸せそうな表情を浮かべて満足していたのだ。


(躊躇う事なく飲むとは…しかし…たかがホットミルクをあの様に美味しそうに幸せそうな表情をして飲むとは…)


一気にコップの中のホットミルクを飲み干す少女を見てカイゼルは思っていた。

そして、あまりにも少女が美味しそうにホットミルクを飲むものだからそれを見ていたカイゼルが唾を飲んだ。


「飲んでみますか?」


喉を鳴らしたカイゼルを見逃さなかった少女は、もう一度カイゼルにホットミルクを飲むかを聞いたのだ。

そして、少女はコップに再びホットミルクを注いでカイゼルに差し出したのだった。


カイゼルは、寒さと疲労と眠さに負けてか差し出されたコップを手に取りホットミルクを一口飲んだのだ…


「うまいな…」


カイゼルは、ぼそりと呟いた。


「でしょう?うちのミルクは特別美味しいんですよ。さぁ、沢山飲んでください。身体が温まりますよ。」


少女は、カイゼルの言葉に目を輝かせて嬉しそうに言った。


そして、カイゼルは一口飲んで変な物は入っていないと分かったので残りのホットミルクも飲み干した。


「あっ!そうだわ。すっかり忘れていたわ…」


少女が、急にハッとなり何かを思い出した様に言った。


「どうしたのだ…」


少女の声に驚いたカイゼルが、少女へと尋ねた。


「急に大きな声出してごめんなさい…ここへ来たのはテオ…えっと…猫にミルクとパンをあげる為なのです。」


少女は、急に大きな声を出したことをカイゼルへ謝り大きな声を出した理由を説明した。


「猫……だと?」


「はい。野良猫なんですけど…うちはお母様が猫アレルギーなので家で飼うことは難しいのです…なので、こうしてここへいつもミルクとパンを持ってきてテオにあげているのです。」


「猫は、テオというのか?」


「はい。素敵な名前でしょう?テオを一目見て頭に浮かんだ名前がテオだったんです。」


カイゼルは、少女の言葉に思わず尋ねた。

すると、少女はこの場所に来ているの理由をカイゼルへと説明した。

そして、名前の事を聞かれた少女は自慢げに猫の名前についてを話したのだった。


「私が飼えたらいいんですけど、それは難しいので今飼い主を探してるのです…早く見つかるといいんですけど。私も毎日こここへ来れる訳でもないので…」


少女は、寂しそうな表情を浮かべながら言うとテオに持ってきたパンを食べさせてあげた。


「お兄さんも食べますか?何も食べてないのでは?このパンは私が作ったものなのですが良かったらどうぞ。朝一で焼いたばかりなので焼き立てですよ。」


少女は、カイゼルに向けてパンを差し出しながら笑顔で言った。


カイゼルは、何故だか少女が言うのなら安心して口に出来ると思ってしまって差し出されたパンを手にした。

そして、ゆっくりと口へと入れた。


「これは…旨いな。」


カイゼルは、思わず口から言葉が溢れた…


「ふふ…良かったです。まだ沢山あるから好きなだけ食べて下さいね。」


少女は、嬉しそうに微笑みながら言った。


(誰だかわからない私に何の疑いもなく接するのだな…人など醜い生き物だと思ったが、こんなにも当たり前の様に人に優しく出来る者もいるのだな…)


カイゼルは、目の前の少女を見ながら思っていた。



「おーーい!おーーい!」


どこからか、男性の何かを呼ぶ声がした。



「あっ…お兄様の声だわ。私もう行かないといけないわ…お兄さん、パンとホットミルク置いていくのでお腹いっぱいになるまで食べて飲んで下さいね。あっ…そうだわ。直ぐ側で王宮の騎士の方が見回りをしていたのでその方にここへ向かう様に伝えておきますね。お兄さんは身体が疲れているみたいだし無理して悪化したらいけないので…では…私行きますね…さよなら。テオ、また来るわね。」


少女は、男性の声を聞くなり慌てて立ち上がりカイゼルへとテオへと声をかけた。

そして、カゴを持って足早に路地から大通りへと出ていったのだった。


「おっ…おいっ!」


カイゼルが、咄嗟の事に声を出すも少女はあっという間にいなくなったのだった………

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