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第2話 欠陥少年は甘党

「ちょっと! 聞いてるの!?」


 反応を示さない完二に尻もちをついたまま睨みながら声を上げる。


「そんなビクビク怯えなくても取って食ったりしねぇよ」


 いつもなら何も言わずに立ち去っただろう。

 だが、先程の茂木との会話のせいだろうか。

 チラリと小夏を一瞥した完二が尻を払いながら呆れ混じりに、なんてことないように言う。

 しかし、小夏はその言葉の衝撃は大きかったようで目を大きく見開き固まる。


 完二はそれにもはや目も向けず歩き出そうとする。


「ちょ、待ちなさいよ! 誰が怯えてるって言うの!」


 それに我に返った小夏は勢いよく立ち上がる。

 そしていかにも怒っていますと言わんばかりに猛然と言い返す。


 完二はめんどくせぇとため息を吐く。

 そして、ゆっくりと振り返る。

 普通の人が見れば、怒っている勝ち気そうな少女だが完二の目にはそうは映らない。


「お前だお前。流石の俺もそこまで怯えられたのはそうそうないんだが……」


 完二の目には小夏に怒りの色はなく。

 むしろ不安や恐怖が強い。

 恐ろしい怪物に睨まれたが如く怯えように無表情の中に僅かに呆れの色を浮かべる。


「私があんたなんかに怯えてるっていうの? 頭おかしいじゃないの!」


 そう言う小夏の声は普通では気づけないほど僅かに震え、表情も微かにぎこちない。

 完二でなければ気づくことの出来ないほどの完璧な演技にいっそ感心する。

 女優にでも向いているのではないだろうか。


「いや、どこからどう見ても怯えてるじゃねぇか。見事な演技だが俺には通用しない」


 だが、完二はプロの俳優やハリウッド俳優の演技すら画面越しに見破る。

 いや、もっと言えばアニメの声優ですらどういう気持ちで仕事をしているかわかってしまう。

 そんな完二を騙すことなどほぼ不可能だ。


 完二が当てずっぽうで言っているのではなく本当に自分の本質を見抜いていることを理解したのか表情を曇らせ、俯いた。

 その姿は先程まで完二を睨み威嚇していた勝気な少女ではなく、完二が指摘した通りの怯えた少女だった。


「……なんで……分かるの?」


「生まれた時からの特技。もういいか?」


 庇護欲を掻き立てるその姿にすら何も思うところはないのか再び完二は立ち去ろうとする。

 完二の視点ではさっきと今は誤差みたいなものだ。


「ま、待って!」


 ちょうど背を向けたところだった完二は再び呼び止められる。

 一瞬無視して立ち去るかと考えたが追いかけてくるだろうと思いいたり、うんざりした様子で振り返る。

 その動作にビクッと体を震わせる小夏の姿に怖ぇなら見送れよと呆れる。


「……なに?」


 睨んでるとも取れるその表情に小夏は身を縮こませる。

 ここに他に誰か入ればその姿に唖然としただろう。

 彼女の保護者すらそんな姿は見たことがなく。

 幼馴染が本当に幼い頃に見たことがある程度だ。


 もじもじキョロキョロと一向に何かを言う気配のない小夏に完二は眉をひそめていく。

 それに気づいた小夏がヒィィと哀れみさえ浮かぶ程震え上がり、意を決したように口を開く。


「そ、その手伝って欲しいことが「断る」え?」


 固まる小夏を放置し、話は終わったと三度背を向け歩き出す。

 そもそもここまで付き合ったのがとんでもなく珍しいことだったのだ。

 これ以上誰かと関わりを持つつもりは完二にはない。


「ま、待って! お願い! ねぇ!」


 そう後ろから声が聞こえるが今度は止まることなく無視する。

 それを見て小夏は慌てて完二を追いかける。


「ちょっと! 待ってってば! あなたしか頼める人がいないの! ねぇ!」


 その言葉には完二でなくても分かるほどの必死さがあった。

 しかし、完二の心は一切ぶれない。

 足早に去ろうとする。


「ちょ……え、えっと、駅前に新しくオープンしたカフェでパフェ奢るから!」


 そう言った小夏は別にそれで釣れるとは思っていなかった。

 ただ何か言わなきゃと頭に思い浮かんだのを口にしたに過ぎない。

 故に——


「おい何をしている早く行くぞ帰る準備は出来てるんだろうな?」


「へ?」


 即座に振り返りそう言った完二に小夏は間抜けな声を上げた。

 残像すら捉えられないほどの速さの手のひら返し。

 それにまたしても固まった小夏に完二は眉を寄せる。


「ほら早くしろ。話くらいなら聞いてやる」


「え、う、うん!」


 小夏どころか完二自身以外知らないことだが、感情が薄く、あらゆることに無関心な完二だが。

 甘い物にだけは、目がなかった……。

今日中にもう1話くらい更新したいですね……

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