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転生したら周りが強すぎた  作者: 小鳥遊遊
転生編
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第十五話 契約を知る

 ベリアル討伐において、ソロモンが準備した魔術陣は三つ。


 まず一つは吸収結界。これは、先に見せた隕石対策だ。いちいちあれに対処していたら、その隙に好きなだけ殺されてしまう。そうでなくとも、万能の防護結界として、できるだけ作っておきたかった。


 もう一つは放出結界。これこそまさに切り札と呼べる確殺結界だ、と思いたい。この結界が完成すればそこで魔術は使えなくなる。いいように料理できるようになるというわけだ。


 そして最後の一つがーー転移結界。飛ばす転移と、呼ぶ転移。厄介な『何か』ーー例えば戦車だったり、配下だったりーーをアストレアのもとへ飛ばすものと、ベリアルの見せた隙をアストレアに奇襲させるためのもの。


 ソロモンは、先日のダンタリオンとの会話を思い出す。


「アストレアと協力するのはダメだと思うか?」

「じゃろうのう。命も、三日ももらっておるじゃろうし」


 当然といった具合で答えるダンタリオンは、しかし、頬杖をついて、少し嫌に笑って、続けた。


「じゃが、それは『勇者を前衛、お主が後衛』として戦うのならば、じゃ。ベリアルが戦いたいのはお主じゃからのう。じゃから、『お主が戦闘、勇者が奇襲』くらいなら、まあ、許されるんじゃないかのう」


 雲上湖は更地じゃから、奇襲に向かんしのう、そこで奇襲を成功させるのならば、それは実力であろうて、と。


 この言葉に基づいて、ソロモンは作戦を立てた。生き残り優先、無理に攻めず、逃げて、また奇襲を悟られぬよう、あくまで決め手を探しているように適度に攻めて、ベリアルの隙を待った。いってみれば、今回の戦闘はそれだけだった。


「なあ、アストレア」


 剣を振り切った姿勢のまま、傍に両断されたベリアルを置くアストレアに、ソロモンは呟いた。


「そいつ、一人でも倒せそうか?」

「……ああ」

「そうか」


 容易に予想されたその言葉にソロモンが静かに相槌を打って、二人はその場を後にした。







 帰りにしれっと、なぜ今までベリアルを討伐しようと試みなかったのか、ソロモンはアストレアに聞いてみた。まあ、ソロモンにもその理由は想像ついていたのだけれど。


 一つはベリアルの出現が、災害を伴うこと。勇者の正義が人命救助に優先されたというわけだ。


 もう一つは、ベリアルが勇者の正義に、排除の対象として映らなかったこと。勇者の正義は、客観と主観が入り混じった、つまり、世界の目とアストレアの目を通した正義だ。ベリアルの災害は恐らくそのほとんどが『魔獣扱いの報復』などだったのだろう。大義ある復讐は、世界のお眼鏡にかなったというわけだ。アストレアとしては殺したかっただろうけれど。


 アストレアの家へと戻ると、そこにはダンタリオンがいた。ソロモンの無事は、そのままベリアルの大事を意味する。「そうか、やれたか」と哀愁を漂わせて、ダンタリオンは二人を居間に通した。いや、ここはアストレアの家なのだけれど。


「それで、ディビルズ。ベリアルはどうじゃった」

「ソロモンでいいぞ。お前の生き様は、散々アストレアから聞かされた」


 ソロモンなりに心を開いたこの提案に、ダンタリオンは「お主の苗字は知られてないからのう」と言って、訂正しようとはしなかった。


 まあいいか、と、ソロモンは話を進める。


「それは、ベリアルが強かったかって意味か? なら、強かったよ。俺一人じゃ多分勝てなかった」

「じゃろうの。じゃが、それでは、いけない」

「……そりゃな。落とし前は自分でつけるつもりだし」


 勇者に殺されないためにも。それは心内に答えるソロモンに、ダンタリオンは空気を重くして、続ける。


「お主は、『穏健派』と、『好戦派』。それぞれにどのような理解をしておる」

「どのような、って、言葉通りだろ。穏健な悪魔と、好戦的な悪魔だ」

「それじゃ。()()()()。穏健派は契約に同意した者たち。好戦派はしなかった者たちじゃ」


 頭上に疑問符を浮かべる二人に、ダンタリオンは指を一本立てて続ける。


「一千年前、()()()()()()が提案した契約じゃ。『ソロモンを殺す権利をやるから、一千年の停戦協定を結ぶ。人間を殺して仕舞えば、ソロモンは生まれないぞ』と」

「なっ……!? バアル……だと!?」


 その提案者に驚くソロモンを側に、アストレアもまた別の驚愕とともに、契約の内容を詰める。


「まず、ソロモンを殺す権利とは、なんだ」

「文字通りじゃ。我らを閉じ込めたソロモンを恨む者もそれなりにおったが、人間側としても、魔術を奪ったソロモンは憎悪の対象じゃった。そして、そのバアルの口ぶりでは、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()ようじゃった。つまり、『従わないと勝手に殺すぞ』という脅しじゃ」

「一千年という期間の意味は?」

「それは、バアルが我らに与えた情報の一つじゃ。ソロモンは一千年後、つまり今現在に転生してくると」

「……ああ、なるほど。そして、最後の『人間を殺して仕舞えば』というのは……」

「ああ。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()、と」


 言って、クツクツと笑って、ダンタリオンは続ける。


「してやられたわい。()()()()()()()()()()()()。なんせ……」



「……なんせ、ソロモンは『序列一位バアル』ーー最強のソロモンの悪魔を器にしたんじゃからの」



「は?」と。


 思考に耽っていたソロモンは、またも頭を空っぽにせざるを得なかった。

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