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イザナイガタリ  作者: A峰
4/7

『伝染』

 (ひとつ)、生命を直截的に対価および願いの対象にすることはできない。

 一、髙田美玖本人に関してのみ願いの対象とすることができる。

 一、対価として支払った物質、感情および記憶を取り戻すことはできない。

 一、等価交換の存在設定が以上の制約を覆すことはできない。

 一、対価は有限、よく考えて使いましょう。


「よく考えて使いましょうって、出納簿じゃないんだから」

 七月の第三週。真知と美玖に出会い、怪異に出遭い、二人に救われてから少しだけ経った、夏休みを間近に控えたみづほは苦笑交じりに呟いた。カウンターには空っぽの珈琲カップと、等価交換の制約内容が綴られた紙が並べられていた。

「出納簿ね。いい表現なんじゃない?」

「わざわざ明記するくらいなら、それも存在設定で縛っちゃえばよかったんじゃないの?」

「縛ったところでどうせ無理だって怪異も思ったんじゃないの? ほら、人間って強欲で無計画で向こう見ずで、無駄遣いが大好きないきものでしょう?」

 他人事のように答えながら、美玖はぺたぺたと太腿を撫で回していた。

「何してるの?」

「みづほの怪異が少しだけ残ってるから、ちょっと脚力でも増強しようかと思って」

「さすが、七つの大罪なだけあるわね」

 さっそく無駄遣いを敢行しようとしている美玖に呆れ、みづほはカウンターに突っ伏した。自分の体とカウンターに挟まれて、胸がペターッと潰れた。

 美玖は目を丸くして、僻みを前面に押し出しつつ、みづほを睨み付けた。

(願いの対象に入ってるなら、おっぱいくらい作ればいいのに)

 思ったけれど口には出さない。美玖が自分で気付くまで、彼女のコンプレックスは弄ってやることにしよう。

「ちょっとジムで鍛えてくるみたいなノリで作り変えられても困るんだけどね」

 珈琲豆を焙煎しながら、真知も苦笑いを浮かべた。「少しくらいは貯金してもらわないと困る」と続けられた言葉は「宵越しの金は持たない」の一言で切り捨てられた。

 美玖の指が太腿の上を滑る。ツーッと指が移動した場所に、淡い燐光を発する線が現れた。目を凝らせば、一本の線に見えるその中には、複雑な紋様がびっしりと詰め込まれていた。文字のようであり、記号にも見え、単純な絵にも思われる。その外に派手なことは起こらず、線が肌の中に吸い込まれていくと美玖は顔を上げた。

「それで終わりなの?」

「えぇ、これで終わり。作り変えるなんていっても案外地味でしょう? 教室を直したときの方が、もっとそれらしかったんじゃない?」

「ふーん……」

 みづほはつまらなさそうに背もたれに体を預け、ちらりと、美玖の足を覗き見た。

「どのくらい変わったの?」

「そうね、あの程度の対価だとコンマ一秒分の敏捷性の底上げ、百メートルを一秒で走れるようになったくらいじゃないかしら。大したことじゃないでしょう?」

「…………人類最速の男の十一倍くらい速いんだけど」

「私はオリンピックに出るわけじゃないもの。メダルなんて見当違いもいいところよ。あくまでも相手取るのは怪異。そうなったら、やっぱりそれは大したことじゃないのよ」

「……なんか複雑。あっさり超越しちゃってるくせに」

「人智や常識、摂理から逸脱してるからこその怪異なんだ。大したことないなんて高を括れなくなったら、それはもう怪異と呼べなくなるんだよ」

 挽いた豆にお湯がかけられていく。ふわりと立ち上った香りに鼻をひくつかせ、みづほはカップを真知に滑らせた。おかわりをちょうだい。言葉を伴わずに彼女がねだったとき、不意にカラコロとベルの音が響いた。思わずぎょっとする。何しろ、この店に入って来れるのは怪異に見舞われた人間、普通じゃなくなった人間だけなのだから。

 扉へと目が動く。初めにみづほが捉えたのは、やけに鍔の広い帽子だった。臙脂色の女優帽。帽子とは反対に、体のシルエットを正直に映し出すドレスを着込んでいるのは、美しいみどりの黒髪の女性だった。鼻から下しか貌を窺うことができないためだろうか、女性の年齢を把握することは難しい。若くも見えるが、それなりに年を取っているようにも見えた。

 女性は店内に視線を巡らせることはせず、慣れた風に敷居を跨ぎ、後ろ手に扉を閉めた。

「お久しぶりです、マダム。今日は従者を遣わさないのですね」

 声をかけ、真知が片手を差し出した。『マダム』と呼ばれた女性は帽子の鍔をそっと掴むと、頭から外して真知に手渡した。帽子によって隠されていた目元が曝け出された瞬間、みづほは思わず両手で口を押さえ付けた。漏れ出してしまいそうになった悲鳴を押し殺すために。

 女性の目元。ひいては、その目は縫われていた。

 鮮やかな刺繍糸で上瞼と下瞼が縫い合わされ、綴じられていた。

「あら、今日は可愛らしいお客さんが来ているのね」

 目を隠されているのに、覆われているのに、女性はみづほを捉え、カウンターの端に腰かけた。中途半端に持ち上げられた手は自分の眼を隠すためだったのかもしれない。

「ごめんなさい。せっかくの団欒に、こんなものを見せてしまって」

 微笑んだのか、女性の口元が僅かに緩んだ。それでも縫い合わされた目は少しも動くことがなく、彼女の感情の起伏を読み解くことは難しい。

「みづほ。悪いけど今日のところは――」

「あら、いいのよ、和宮さん。無理に帰すのはよくないわ」

 真知を遮り、こうも続けた。

「それに、今日の話はそこの女の子にも関係のあることですから」

 まずは自己紹介からと前置きして、女性は品位を感じさせる所作で会釈した。それに合わせて腰まで届く黒髪がさらりと前に流れ、窓から射し込む明かりをそっと含む。美しさに魅せられるのと似ていて、反して乖離しているような感情がみづほの裡に芽吹く。魂までも釘付けにされるようなこの感覚は、そう、美玖と出会ったときにも抱いたものだ。

「本名は筒井崕(つついがけ)ゆり子。こちらの世界では『マダム』と呼ばれています。怪異に纏わる奇譚の蒐集と縫合を管轄して、適性のある人間に解決を依頼することがわたくしの専業です」

「要は怪異譚の仲介者よ。どこまで根が深いのかしれない厖大なネットワークを駆使して怪異の情報を集め、私達みたいなものに提供する。そこから先は私達の管轄だけど、情報料として怪異譚の解決に際して得た報酬の一部を支払う。Win-Win、双方ともに好都合」

「私の二百万も?」

「えぇ。その意味では、あなたもわたくしのお客様となるのかしらね」

「今日の用件は? まさかお茶をしばきに来たわけでもないでしょう?」

「あら。一度くらいは和宮さんの珈琲を楽しみたいと思っていますわ。でも、そうですわね。確かに今日は他に用件があります。それも今回は情報の売り込みではなく、提供ではなく、わたくしどもからの正式な依頼として」

 ゆり子は肩から提げる鞄を開き、分厚いファイルを取り出した。ファイルの総数は三つ。真知と美玖に手渡し、カウンターの上を滑らせてみづほにも渡した。

「私も?」

「えぇ、あなたにも関係のあることと言ったでしょう?」

 訝しみながらファイルの中身を取り出す。それは調書だった。名前、性別、写真、経歴といった個人を特定するために必要な情報が簡単に記され、ページの半分以上を占めて記されているのは、怪異譚の遍歴だった。どのような怪異を顕し、どのようにして怪異に見舞われ、どのようにして終焉を迎えたのか。名前順に掲載されているためだろう、最初のページで扱われている人物の名前は雨宮(あめみや)みづほ。夢と現実の綯い交ぜである怪異に見舞われ、唆され、誘われ、真知によって連れ戻され、美玖によって助けられた少女だった。

「これが、私にも関係あるってこと?」

 ゆり子から返答はない。代わりに「次のページをどうぞ」と促された。

 首を捻り、ページを捲る。さらに次のページを。真知と美玖は言わずもがな、みづほにもその異常性は即座に理解できた。ページを捲ること五十人分。最後の方は駆け足になって、彼等が着目するのは怪異譚の『名前』と『発生日時』だけだった。

「見て頂いた通りです。同じ町で、同じ時間に、同じ怪異が五十人もの人間に生じた。これを偶然と見做すほどわたくしどもはボケておりません。わたくしどもはこのように結論付けました。誰かが怪異をばら撒いている――と。これを看過することはできません。『誰か』の思惑、目的、ひいてはどのようにして他人に怪異を植え付けているのかすら不明ですが、このままでは死体が増えるばかりですわ」

「死体?」

 みづほが反応する。

「あら、これは失言でしたわね」とうそぶき、ゆり子は美玖から書類を受け取ると、みづほを含んだ十人分の書類を右手に、それ以外を左手に持った。

「こちらが平穏に終わった方で、こちらが呑み込まれ、処理された方です」

「処理って――」

「端的に言えば殺処分ですわ。怪異に堕ちた人間は、放置するにはあまりに危険なものです。宿しているだけならまだ救いはありますが、呑まれれば救いはない。そうですね、人智を越えた無差別殺戮兵器と表せば十分でしょうか。あなたにも、覚えがあるはずでは?」

 怪異によって、道宮を殺そうとした。

(あの時、確かに私は殺そうとした。それが『いけないこと』なんて思いもせず、息をするように、当たり前どころか、それが義務であるかのように――殺そうとした)

「でも……」

 ふと、気になることがある。自分を引き戻してくれた、諭してくれた人物。

「真知も怪異に呑み込まれてるんじゃ……」

「僕は例外だよ」

「怪異に呑み込まれたのに自我を保っていられるなんて真知くらいよ。普通は理性を喪失して、仄暗い存在設定に従うままに害悪を振り撒くわ。だから殺すしかないの」

「軽蔑するかな?」

 真知に正面から見つめられ、みづほは目を逸らした。その行為が正しいのかどうかはまだ決められない。まだ分からない。けれど、自分だってあのまま呑み込まれていたら殺戮に関与していたことは確かだ。道宮に留まらず、留まれず。

「話を戻してもよろしくて?」

「あぁ、大丈夫だ」

「わたくしどもの依頼は此度の『伝染』の原因究明と解決です。手段は問いません。伝染の裏で糸を引いているであろう人物を引きずり出してくだされば結構です」

「生死は?」

「それも問いません。全て、わたくしどもで揉み消します」

 理解の及ばない話が交わされているのを遠目で眺めながらみづほは思う。自分は世界の裏側に関わってしまったのだと。それは少しだけ望んでいた世界であり、関わりを持ちたがっていたものであり、胸を躍らせ、されど後悔を掻き立てるものだった。

 捜査費用と称してゆり子は札束をカウンターに積み上げ、真知から帽子を受け取った。

「それではまた、ごきげんよう」

 ゆり子は店を後にした。

 札束を金庫に放り入れ、美玖と視線を交わすと、真知はみづほに向き直った。思わず背筋を伸ばしてみづほは真知の言葉を待つ。罪の宣告のように、それは乾いた緊張を伴っていた。

「協力して欲しい」

「私は何をすれば…………ううん、怪異を失くした私に何ができるの?」

「みづほは何もしなくていい。ただ、覗かせてくれ」

「覗く?」

「あぁ。キミの記憶を、僕が覗く」



 真知の所有する怪異『思考螺旋』は記憶に介入することができる。他人の記憶を傍聴して、改竄することができる。それは思考螺旋のほんの表層に過ぎない力だが、本質に触れるのはもっと先でいい。重要なのは、今、記憶を覗かせてくれと頼まれたこと。

 二つ返事で了承しようとして、はたと気付く。記憶を覗かれるとは、傍聴されるとは、嗜好を、性癖を、思想を、境遇を知られることで、それは思考を掌握されることに他ならない。

 故に思考の螺旋――渦――なのかとみづほは思う。

 思い返してみれば他人に知られたくないことはいくらでも浮かんでくる。他人に見られたくないものを数え上げればきりがない。たとえば、単純に、自分の体。お風呂に入るとき、用を足すとき、或いは自慰に耽ってしまったとき。みづほの目はみづほの体を観察して、映像として刻み込んで、その時の感情とともに記憶する。人間の記憶はたんすの引き出しのようなものだと聞いたことがある。記憶を忘れるというのは引き出しが開きづらくなっただけのことで、その中には確かに残されていると。そもそも人間の記憶領域は百年以上の知見を収めるだけの容量(キャパシティ)を誇る。忘れていたつもりになるだけで、思考の奥底では失われていない。それを見られるのは、少しどころの話じゃなくて、とても恥ずかしい。

 とてつもなく、身も心も焼けてしまうほどに恥ずかしい。

 覗かれたくないと言ったらどうなるのだろう。身を引いてくれるのだろうか。もしくは無理やり覗かれるのだろうか。思考螺旋が記憶の改竄にも関与できるというのなら、覗いた後で『覗かれなかった』と偽の記憶を仕立て上げられることだってあり得る。

 みづほはしばらく迷った末に、美玖と真知に向かって手を突き付けた。その指は二本立てられていた。条件があると切り出す。

「まず、告げていいのは『伝染の怪異』に関することだけ。それ以外のことを思い出したり言いふらしたり悪用したりしたら殺す。すり潰す。スープにする!」

「殺すのは私がやる!」

 ぴょこんと美玖が挙手した。

「約束するよ。みづほの秘密は永劫に僕の裡にだけ留めると」

 約束だよと念を押してから、みづほはもうひとつと指を突き付けた。

「プライバシー侵害料として二百万」

 美玖と真知は揃って目を丸くして、みづほはどこか高揚した様子で上機嫌な笑顔を浮かべた。んふう。そんな擬音語(オノマトペ)が聞こえてきそうな、誇らしそうな顔。微妙な沈黙が漂い、流れ、それを最初に破ったのは美玖の笑い声だった。アハハハハ、釣られて真知も喉を震わせた。

 真知は金庫を開けると、中身をみづほの前に積んだ。一万円札の束が二つ、二百万円分。みづほは受け取り、初めて手にした大金に興奮しながら美玖に差し出した。

「この前の二百万、支払うわね」

「はいはい、受け取ったわ。これでチャラね」

 愉快そうに受け取り、札束は真知に戻された。金庫にしまわれて、それで終わり。

「さて、覗いていいよ」

 どのようにするのかは知らないけれど、みづほは目を閉じて頭を差し出した。記憶を覗くというのなら、弄るのは脳に違いないだろうから。そんなに慌てなくていいよとみづほを制して、真知はエプロンを外すとカウンター内から出た。みづほの正面に立ち、椅子に深く座り直させ、瞑られた目はそのままに、そっと彼女の額に手を重ねた。

「本当にいいね?」

 今さら蒸し返すようなことを訊かないでと言わんばかりに、みづほから返事はなかった。

 神経を尖らせ、ゆったりと肺から空気を絞り出して、真知は怪異譚の名前を唱えた。思考螺旋、螺旋の渦に思考を掌握させよと。須臾、みづほの意識は途切れた。ゆっくりとフェードアウトしていくのではなく、ブレーカーが落ちるように一瞬で途絶えた。

 意識に介入されたのだと僅かに感じることはできたが、みづほはすでに晦冥に呑まれ、外界を知覚することはできない。自意識さえもおざなりになって彼女は転落した。

 一方で真知の視界は晴れ上がる。視神経を殴られていると錯覚するほどの暴力的な光景を前にして、真知はゆっくりと周囲を俯瞰した。記憶を覗くことは厖大なキネマを編纂する行為に近い。対象が生きてきた時間、経験した事物は途方もない情報量の嵐となって記憶の中で流れている。時系列ごとに並んでいることはない。一分前の出来事の隣には、一年前の出来事が流れていることもあり得る。真知は思考螺旋を奮い立たせ、現在のみづほを探した。

 探り当てたなら、そこから遡るように対象の記憶を辿っていく。現在から始めて、みづほに怪異の影が射し込むまで、キネマを逆再生で観察していく。

 体感時間は現実の数十倍にも及ぶ。目まぐるしく変化していく記憶の嵐を自身の記憶回路に刻み付け、目当ての情報を拾い上げていく。ふと、真知は『彼女』の姿を認めた。なおさらのこと意識して『彼女』を記憶に刻み込む。早送りされたキネマは瞬く間に終わりを迎え、そこから先に流れているのは怪異に関与していない頃の記憶だった。必要以上に個人を暴くべきではない。それはみづほの矜持を損なう行為だ。真知は瞑目して、思考螺旋を眠りに就かせた。

 現実に戻ってくる。真知の手が離されたことで、みづほも覚醒した。

「…………役に立つ情報は得られた?」

「あぁ……」

 どこか気が引けた様子で真知は答え、本棚からスケッチブックを取り出すと鉛筆を走らせ始めた。描き出された少女の姿に、みづほは見覚えがあった。あの日、あの夕暮れ。真知と出会い、CELIAに初めて連れてこられた帰りに見かけた少女だ。

 フードを目深まで被って貌を隠した少女。フードにはとある模様が印刷されていた。

 それは人間の髑髏(しゃれこうべ)。虚ろに空けられた眼窩と鼻孔、上だけが描かれた歯牙の並び。

「髑髏?」

「さしずめ『髑髏の貌(スカル・フェイス)』といったところかな。みづほが視認したのは一度きりみたいだが、みづほの夢が発現する直前から『伝染』に至るまで、彼女はずっと張り付いていた」

「そこまで一致するならほぼ黒、もしくはグレー。従者である可能性も残されているしね。けれど、これでするべきことの指針は定まったわ」

 髑髏の貌を追う。

 具体的にどのように行うのか、みづほには分からない。そこから先を行えるだけの技能は備わっていない。これで私はお役御免だと身を引こうとして、

「みづほ、明日も協力してね」

 思考を読まれたのか、美玖に声をかけられた。

「お金を受け取ったでしょう? それなら最後まで付き合ってもらう。もちろん、無事に解決した際には相応の報酬も約束するから」

「私なんかが…………美玖と真知の役に立てるのかな」

 みづほはこれまで弱者でしかなかった。強者になり得た怪異さえ、すでに失ったのに。

 彼女の胸中を察したのか、美玖はスケッチブックを指差した。

「髑髏の貌を突き止めることができたじゃない。それはみづほのおかげよ」

 こんな私でも頼ってもらえる。誰かの役に立つことができた。その嬉しさが先行したのかもしれない。みづほは何を考えるまでもなく、情動に突き動かされるままに答えた。

「うん。明日も使って」

 美玖は上機嫌になり、微笑んだ。一方で、真知は眉を顰め、誰にも聞こえないように呟く。

「――……厄介な怪異だ」

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