いざ魔界へ!
遅くなり申し訳ございません
視界を遮っていた闇が晴れると……そこにはこんな景色が広がっていた。
木々の生い茂る大地!
青く澄んでいる空!
汚れなどないとても綺麗な川!
魔界って本とかで読むよりも全然禍々しくないじゃないか。
むしろ平界と同じくらい……いや平界よりも美しい自然が、広がっているじゃないか。
「どう? 私たちの住む魔界は?」
すごいニコニコしてるなルシファー。よっぽど魔界が好きなんだな。
「なんて言うかもっと、業火が広がってたりして、禍々しいのかと思ってたから……少し意外だった」
「あーなるほど。それはね平界にある本とかは、大体魔界を悪く描かれてるからねぇー。実際のところ平界、魔界、天界にこれと言った違いはないよ。強いて言うならパラレルワールド的な感じかな」
パラレルワールドか、なんか急に胡散臭いけど……まぁこの子が言うなら本当なんだろうね。
何故だろう…………ルシファーに対しては疑心感が湧かない。
──その代わりに安心感がある。初対面なんだけどなぁ。
「そうそうジルの住んでたところには、魔物現れなかったでしょ?」
「うん生まれてこの方見た事ないよ。何故だかあそこら辺には寄り付かないらしい」
「なんでなんだろうねぇー ……私も知らないなぁ。そのうち分かると良いね」
こいつ絶対なんか知ってるだろ。嘘下手すぎ……まぁ別に興味もないし良いか。
「そんなことよりさージルの見たことのない、魔物があそこに居るよほら!」
ルシファーはそう言いながら指を指した。
その先に視線を向けると……なんと絵本でよく見た青くてプルプルしてる……スライムが居る!
「魔物って本当に居たんだね! なんか嬉しい!」
「ここら辺には凶暴な魔物は居ないよ……、というかパーチェには居ないかな」
「そうにゃんだ。しょんなこともありゅんだね」
あれ呂律がうまく回らない。ルシファーの口が動いてるけどなんて言ってるか聞こえない、なんか眠くなってきたし……考えるのめんどくさいし寝よう……。
「ジル! ジルってば! もうこんなとこで寝ちゃって……まぁ初めて魔法使って、あれだけの魔力消費すればこうもなっちゃうよね……仕方ないなーもう」
私はそんなことを考えながらジルを背負い歩き出す。
はぁ、まだまだ魔王城までは結構あるのに……まぁジルと一緒に居れるだけ良いや。
これは帰るの夜になりそう……またメデューサに怒られちゃう。
※※※
あれから何時間経ったかわからないや。
外はもう真っ暗になっちゃった……。
───もうそろそろ着くはずなんだけど。
あー!やっと城門見えた!
着いたは良いけど……みんなにジルを見せるにはまだ早いしどうしようかな──
ありゃ? なんか人がこっちに来てる……誰だろ?
背が高い女性で緑の髪だなぁー……ってメデューサ確定じゃん!!
怒られる怒られる怒られる……。
もう顔が見える距離まで近づいてきた──
ニコニコしてるこれは大分やばいね……5分後の私任せた!
「ルシファー様? お遅いおかえりだことで? して理由としてはその後ろの男にかまけて居たと?」
「い、いやここれはち違うんだよ! 本当はもっと速くに帰るつもりだったんだよ! でもジルが寝ちゃったから背負って来たの……」
「でしたらテレポートしてくれば良いではないですか!!」
「あっ……その手があった」
「本当にルシファー様ったら、やれやれです。もう国王になって16年ほど経つのですから、いい加減行動をわきまえて下さい!」
「ごめんなさい、以後気をつけます……」
「はい! そこで泣かない! まぁ過ぎたことなのでもういいです。してその後ろの背負ってる男は誰なのですか?」
ジルに視線を向け私に聞いてきた。
「この子? ジルって言って今日例の山から連れてきた子だよ。 何故かスキルが使えなくて、落ちこぼれとして、酷い扱いを受けてたんだ……それで今日ついに怒りが爆発しちゃってね、いじめの主犯を殺しちゃったから、連れてきたよ」
「なるほど、ここ3年ぐらい平界に行き出したと思えばいつの間にか、恋をしていたと……」
メデューサは意地悪に笑い私をからかう。酷いよ!
「ち!違う!この子の顔を見れば分かるって!」
私がそう言うと、メデューサは移動してジルの顔をマジマジと見た。
次の瞬間メデューサは酷く、慌てた表情をし口を開いた。
「こ! これは! サタン様にそっくりではないですか! これが魔界に伝わる呪いなのですか!!」
「うん多分そうだよ、だからこそ色々おかしいんだよね。まぁ詳しいことは明日にしよう。取り敢えず8階が空いてるはずだから、ジルをそこに寝かしといて。後はウラトを専属従者として、手配をお願い」
「承知致しました、これは明日の昼あたりに、他の魔王5人にも説明が必要ですね……」
「そのつもりだよ、その間にさジルに魔法の使い方教えて欲しいんだよ……お願いしてもいい?」
「まぁルシファー様の頼みとあらば、何でもしますよ」
メデューサは嫌な顔1つせずに、即答してくれた。
流石優しいメデューサだね。
「ありがとう! じゃあ取り敢えずジルを頼むね、私も疲れたから今日は寝るよ……」
※※※
あれから私は8階の寝室へと転移してきた。
まったくルシファー様も困ったものだ。
まぁ今日は良いか……。
サタン様が亡くなられてからというもの、少し抜けていたり、ふとした時に辛そうにしていたから、これで解決してくれると嬉しいのだが……。
しかしあの伝説が本当だったとは……。
まぁこのジルとやらについては明日い色々探るとして、早くベットに寝かしてやるか。
そんなことを考えながら、ジルとやらをベットに寝かせ、毛布を掛けてやった。
さぁて執務室に戻り、仕事を片付けるか……。
※※※
俺の視界に入っていたのは黒い天井だった。
いやいやちょっと待て、さっきまでルシファーと話してたでしょ……。
よく分からないけど、取り敢えずここはルシファーの城なんだろう、部屋の外へと出てみよう。
ベットから飛び起きて真っ先に目に入ったのは赤い大扉だ。恐らく俺の身長の倍ぐらいはある。俺170センチはあるのに……。
考えてもしょうがない、取り敢えず押し開けてみよう。
俺が扉を押すと、重く鈍い音がひびきながら難なく開いた。
──扉の先には、兎の耳をした女の子が跪いていた……。いや誰だよ。
「あ、あのここはルシファーの城でいいのかな?」
「はい、ここはルシファー様の、領地にある魔王城です。ご紹介が遅れましたジル様、私これから身の回りのお世話を、させて頂くウラトと申します」
「使用人まで付けてくれたのかよ……。これからよろしくね、早速なんだけどルシファーの元へ案内してもらっていい?」
「承知しました。所でジル様、朝食は取られなくて良いのでしょうか?」
「あっ確かに朝ごはんは食べたいなぁ、ルシファーに会いに行く前にご飯食べようかな」
よくよく考えたら昨日の朝以降何も食ってないもんなぁ──。
「では食堂はこちらです」
ウラトは手で方角を指し俺を促した。
「ねぇウラト何個か聞いてもいい?」
「勿論です」
「君ってさ獣人族なの?」
彼女はおっとりした表情で答えた。
「そうです。私は獣人族兎族になりますね、余談ですがこの国の魔王様、ベルゼブブ様も獣人族だったりします。あのお方は確か狼族ですね」
ちょっと待て、ツッコミどころがあり過ぎてどっから突っ込んだらいいかわかんねぇぞ。魔界って色んな種族共存してんの? 魔人しか住んでないんじゃないの? それ以上に魔王ってルシファーだけじゃないの!?
「何をそんなに驚かれてるのです?」
「いや、ちょっとね……」
取り敢えずよく分からないから、ルシファーに聞いてみよう
※
あの後俺は食堂で朝食を取った。
何より驚いたのはその量だ。ご飯だけで5キロぐらいあった。それに比例してほかの料理の量も頭がおかしかった。
どれもこれもほっぺが落ちるほどに美味しく、残すのは勿体なかったから頑張ったが、死ぬほど腹が減ってる俺でも半分が限界だった。調理した人達に申し訳なさすぎる。
まぁそんなこんなで今ルシファーの執務室の前に居るのだが……。
「ルシファー様!ジル様をお連れしましたよ」
ウラトは先程からドアをノックしているが、反応が全くと言っていいほどないのだ。凄く困った顔を浮かべている。
「寝ているのですかね? どうしましょう」
ウラトがそんなことを呟いた瞬間、執務室の扉が開いた。
「ご苦労ウラトよ、少し眠っていた。あとの事は良いゆえ戻りたまえ」
「睡眠中に失礼したしました。では私はこれで失礼致します」
ウラトはそそくさと去っていった。
「ジルよ、入りたまえ」
いやルシファーお前口調どうした、取り敢えず部屋に入るか。
俺が部屋に入ると同時にルシファーが扉を閉め、ふぅと息をついた
「ジル体は大丈夫?」
「いやそんなことよりお前あの口調どうした」
ルシファーは一瞬驚いた顔をし答えた。
「あっそっかジルは知らないんだもんね。私一応大魔王だからさ、この国のトップとしてああやって接してるのよ。でも素の口調はこっちなんだ。だってあんなの疲れるもん」
それ別にやらなくてもいいんじゃないか? 普通に親しみがある国王路線で受けいいと思うぞ。
俺には分からない事情がきっとあるんだろうな。
「なるほどな、そんな事より一つだけ聞いてもいい?」
「うん? なんでも答えるよ」
「俺をなんのためにここに連れて来たの? 何かしらの目的があって連れて来たんでしょ?」
ルシファーはケラケラと笑っている。何がおかしいのだろう?
「ジルね理由なんて後付みたいなもんだよ、一番の理由は君が残酷な状況に置かれているから。それを助けたいって思ったからだよ。連れてきてから思ったのは、君が面白い人材ってのと、父様に凄い似てるって事かな」
ルシファーの親父と似てる?? よく分からんが昨日の一瞬だけでそんな事分かるのか?
「そうだったんだね、ありがとう。でも魔界に来たからには何かしらで恩返しをしたいんだよ。どうすればいい?」
「まさか君から言われるとはね……。
──じゃあ少し付いてきて」
そう言い放つとルシファーは昨日のように魔法を発動し俺達はどこかへ転移した。
※
転移すると目の前に、
高身長で長い緑髪を持ち、背中から羽が生えている女性が立っていた。
「待たせたねー、これが昨日言ったジルだよ。メデューサ頼んだよ」
「彼がジルですか、やはり魔界に伝わる伝説は本当だったのですね……」
まて今メデューサって言ったか? 俺石化するじゃん。目合わせないでおこ
「はじめまして、ジルです。これからよろしくお願いします」
それを聞くなりルシファーはまた笑っている。よく笑う子だなぁ。
「ジル別に目を見ても大丈夫だよ、メデューサの特殊スキル石化は、メデューサが殺気を当てた人に効くものだよ。言ってしまったら目を見てなくても石化するよ。一定の実力を持ってれば効かないんだけどね」
えっそうなの? 俺だとしたらめちゃくちゃ失礼なことしてんじゃん。
「勘違いしてごめんなさい……」
俺の謝罪を一慶するように笑い飛ばした。
「なぁに気にするないつもの事だ」
「そうそう言い忘れてた、これからはメデューサから魔法の使い方を勉強してね。私が教えるより、いいと思うんだ。だって魔法教えてくれたのメデューサだもん」
はい? ルシファーの師匠とも呼べる人だって?? そんな凄い人から教えて貰っちゃっていいの?
「そんな凄い人から教えてもらえるなんて嬉しい限りだよ」
「なんだかそう言われると照れるものがあるな」
「メデューサも昔は、平界に居たし話が合うんじゃないかな?」
この人も平界に居たのかよ、魔界よくわかんねぇわ。
「まぁそうは言っても1500年ほど前の話だがな」
今なんつった?? 1500年前!? いや君たちいくつなんだよ
「いや1500年前って二人とも何歳なのよ……、そしてメデューサさん何族なんですか?」
「私はかれこれ2000年ほど生きてるな、種族は妖精になるな。とは言ってもはみ出しもの過ぎて、1500年前に妖精界を追放されて、へまして人間の奴隷になってた時にルシファー様の父サタン様に拾われたのだよ」
ルシファーが懐かしいといった表情を浮かべ口を開いた。
「あの頃は大変だったんだよー、殺気振りまいて、みんなを石にしちゃって父様が慌てて解除してたなぁ」
石化って解除出来るのかよ、それ以上に本人じゃなくても出来るのかい。
「羽が生えてると思ったら妖精だったんですね。何はともあれ修行よろしくお願いします」
「では早速始めるか、ジル殿スキルについてどこまで知っている?」
鳴他ちぬさんにルシファーを描いてもらいました!
彼女の小説「ジューダスフリークスTheORIGIN〜月に蝙蝠、地に兎〜」のURLはこちらです。https://t.co/0EMFByfqSU
控えめに言ってめちゃくちゃ面白いです。sf作品なのですが、普段はsfを苦手であまり読まない僕でもはまる位面白いです。細部まで伏線が張り詰められているのでそれを考えながら読むと面白さ倍増です
ぜひぜひ読んであげてくださいm(_ _)m