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8話キングオクト

 

 ガタガタと馬車に揺られながら旅をする。

 しかし、普通の旅ではない。

 俺達はこの馬車の護衛として乗せてもらっている。

 普通に乗ろうとすると値段が高くて乗れないのだ。


 国から国、町から町。

 その間には当たり前のように魔物が生息し、人を食べる為襲いかかってくる。

 その魔物から馬車を守るのが俺達の仕事である。


 何事もなく進めば、一週間くらいで着くらしい。

 途中、二つか三つ程の町を中継するようだ。


 乗客は十五名程。

 俺は馬車の真上に陣取り、魔物が襲って来ないか見張りをしている。

 エルナは中で待機、サリーは御者の護衛。

 出発して一日、各々の役割を全うしていた。


「ふぁーあ」


 もっと魔物が襲って来るかもと思ってたけど、全然そんな事ないなぁ。

 平和過ぎて欠伸が出る。

 まあ、良い事なんだけど。


「……?」


 と、その時。

 俺が乗っている馬車とは違う馬車が、ギリギリ目視出来る距離で走っていた。

 それだけなら何らおかしい事はないのだが。


「……あれは、魔物?」


 馬車の周りに、魔物がまとわりついていた。

 普通なら護衛が討伐するが、護衛の姿が見えない。

 おいおい、マズイんじゃないのか?


「サリー!」

「お兄ちゃん?」

「前にいる馬車が魔物に襲われている! 護衛もいないみたいだし、ちょっと助太刀してくる!」


 バッと馬車を降りる。

 そのまま全速力で襲われている馬車の元へ向かう。

 今気づいたが、俺より馬車の方が遅い。

 自分で走った方が早いようだ。


「じょ、嬢ちゃん、俺は今自分の目が信じらんねえ……馬車より早く走るだって?」

「……お兄ちゃんって、人間?」


 何か言ってるようだが聞こえない。

 砂煙をあげながら爆走する。

 もっと、もっと早く。


「っ、着いた!」


 そして気づく。

 護衛は居ないのではない、居たけど殺されていた。

 あちこちに遺体が散乱している。


「お前か、殺ったのは」

「……!」


 タコのような軟体魔物。

 グニャグニャしてて大きく、馬車よりデカイ。

 図鑑で見た事ある、確か名前はキングオクト。


「ォォォォ!」


 キングオクトは馬車にへばりついていた。

 ミシミシと軋む音が断続的に聞こえてくる。

 あと数分で馬車が破壊されてしまう。

 その前に、こいつを倒す!


「はあっ!」


 いつも通りの右ストレート。

 大抵の魔物はこれで死ぬ。

 だが、キングオクトには……


「ぬわっ!」

「!」


 拳が柔らかい体に跳ね返される。

 ダメージが入ってないのか⁉︎


「うおっ!」


 口から黒い墨を吐かれる。

 ただの墨ではない、かけられた箇所が溶けている。

 強酸みたいだ、やりにくい相手だな。


「なら……」


 高速で動き回り、キングオクトを撹乱させる。

 そして隙を見て奴の手足の一本を掴んだ。


「おらあああああああああああああっ!」

「っ⁉︎」


 両手で掴み、キングオクトの手足を引きちぎる。

 赤い鮮血が飛び散るが気にしない。

 直ぐさま別の手足を掴み、同じように引きちぎる。

 それを繰り返し、馬車に絡みつく四本の手足を取り除く。


「オオオオォォォォ!」


 怒り狂うキングオクト。

 だが馬車は救い出した、もう相手をする必要もない。

 俺はキングオクトの適当な手足を掴み、そしてーー


「とんでけえええええ!」

「ォォォォ⁉︎」


 ハンマー投げのようにブンブン振り回す。

 そして遥か彼方へ投げ飛ばした。

 血を撒き散らしながら飛んで行った為、鮮血のアーチが出来上がる。

 ちょっと趣味が悪いな、今度からはやめよう。


「こ、これは……!」

「あ、大丈夫ですか?」


 馬車の扉が開き、中から燕尾服を着た老人が出てきた。

 その老人はキングオクトの残骸を見て驚き、続けて俺の姿を見て言ってくる。


「……この度はお助けいただき、ありがとうございます。私はアーリーナイツ家に仕えるバドルと申します」

「俺は星野大地です、別の馬車を護衛してたんですけど、この馬車が襲われてるのを見て助太刀しに来ました」

「誠にありがとうございます、このお礼は必ず」

「いえいえ、それよりーー」


 チラリと、散っていった護衛の遺体を見る。

 全員甲冑を着た騎士風の男達だ。


「彼らはどうします?」

「あの者らにも家族がおります、出来れば遺体を持ち帰りたいのですが……」


 難しい話だろう。

 どうしようか……そう考えてる時。


「貴方が、助けてくれたんですの?」

「ん?」

「お嬢様!」


 馬車の中から、一人の少女が降りてくる。

 年齢は十七歳くらい。

 紫色の髪を長い一つの三つ編みにしており、瞳も同じく紫。

 白いコートを着ており、金色の刺繍が入ってる。

 まるでどこかの令嬢と思えるくらいに綺麗だ。


「お嬢様、このような光景を見るのはーー」

「バドル、私達を守って亡くなったのです。彼らの死をこの目で見届けるのは、その責任です」


 彼女はキッパリと言い放つ。

 そして俺へ向き直り、完璧な作法で頭を下げる。


「この度は助力、感謝致します。私はシェルナ・アーリーナイツ、アーリーナイツ伯爵の娘です」

「俺はダイチ、助けられてよかったよ」

「はい……とても、お強いのですね」


 そして共に騎士の遺体を見て回る。

 シェルナは一人一人手を合わせ、黙祷していた。

 その間、俺は遺体を埋める穴を作る為に地面を砕く。

 それを見てバドルさんが呆然としていた。


「シェルナ、ここに埋めよう」

「まあ、ありがとうございます……ふふ、ダイチさんって、私が名乗っても変わらず接してくれますね」

「あ、やっぱまずい、かな?」

「いいえ、そのままで結構です。そんな人、今まで見た事ありませんから」


 微笑むシェルナ。

 俺の住んでた世界ってそういうの無かったから、自然に対等な立場として接してしまう。


 その後、遺体を穴に埋めていると、元々俺が護衛していた馬車が合流してきた。

 御者や乗員はシェルナを見ると、目を丸くしたのち素早く頭を下げて跪く。

 そんな中、サリーは。


「シェルナ姉さん!」

「サリー⁉︎ よかった、無事だったのね!」


 感動の再会とばかりに抱き合う二人。


「サリー、知り合いなのか?」

「うん、昔よく遊んでもらってた」

「まさか、サリーと再会出来るなんて……」


 とりあえず、積もる話は最寄の町に到着してからという事になり、シェルナの馬車も護衛する事になった。


「もーダイチさん、また勝手にどっか行って」

「ごめん」

「でも、ダイチさんは必ず戻ってきてくれるので、心配はしていません」

「ありがとう、信頼してくれて」


 護衛の最中、そんな事をエルナと話した。

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