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7話帝国奪還計画

遅れました、すみません。

 

「そうなのか、なら何で王女が狙われているんだ?」


 言ってから気づく。

 そうか、ヴァーミリオン帝国は今内戦中だっけ。

 そのゴタゴタに巻き込まれたのかもしれない。

 なんて考えていたら、サリーが恐る恐る聞いてきた。


「え……あの、信じてくれるんですか?」

「この状況で嘘を吐ける度量の持ち主なら、詐欺師に転職する事をオススメするよ」

「っ、し、信じてくれて、ありがとうございます!」


 目をウルウルさせながら頭を下げるサリー。

 エルナは何故か羨望の眼差しを俺に向けていた。


「瞬間に真偽を見極めるその慧眼、流石ダイチさん」

「言い過ぎじゃないか……」


 あくまで一派論の範疇だ。

 そこまで言われるとかなり恥ずかしい。

 しかしエルナは次の瞬間、ハッとしてから猛烈な勢いで机に頭を叩きつけた。

 少女の突然の奇行に俺は目を丸くする。


「お、王女様、今までの無礼、お許しください」

「や、やめて……よ、今の私は、ただのサリー」

「エルナ、普通に接してやれ」


 頭をあげるエルナ。

 そして快活に笑いながら右手を差し出す。


「じゃあ改めて、これからよろしくね、サリー」

「うん、よろしくエルナ」


 おお、友情が芽生えた瞬間だ。

 俺がうんうんと頷いていると、不意にギリギリと軋むような音が聞こえてきた。


「……ダイチさんは渡しません」

「……私も、負けないから」


 まるで手を握り潰すような音……あ、消えた。

 何だったんだろう。

 まあいい、とにかく話の続きだ。


「前王、つまり私の父が死亡し、王位は空白になりました。しかし私と私の姉は女である為、王位継承権を持っていません、ですから王族の血に最も近いクズル公爵がワルダク公爵協力の元、強引に王位を継承しました。その後はご覧の有様です」


 度重なる圧政。

 それに反発する平民と一部の貴族。

 幸い、他国にはまだ知られていないらしい。

 もし知られたら、ほぼ間違いなく進軍してくるとの事。


「クズル公爵は姉を無理矢理婚約者として手に入れ、私も妾として求められました。ですが姉が、せめて私だけでもと逃がしてくれたのです、しかし」

「ワルダク公爵に見つかったと……」


 サリーは悔しそうな表情を浮かばせる。

 握り拳を作り、耐えるように体を震わせていた。


「姉……お姉ちゃんはきっと今頃、あのカスみたいな男の手に……う、うう!」

「そうか、辛かったな……」


 思った以上に、この国はヤバい。

 崩壊秒読み段階だ。


「よし、そのクズルって奴をぶっ倒そう」

「ええ⁉︎」

「そいつを玉座から引きずり下ろして、もっとマシな奴を王にすればいいんだろ?」

「そんな簡単に出来る事では……仮に玉座を取り返す事が出来たとしても、その後の事も考えなければなりませんし」


 難しい政治の話、という訳か。

 しかしこのまま黙って見過ごすのも納得いかない。


「本気で叛逆を考えているなら、私の姉……リーリィ派の貴族との協力は不可欠です」

「そいつらが反乱を起こしているのか?」

「はい、ですが直接的な行動はまだです。内戦を引き起こしているのは主に平民の人達ですから」


 リーリィ派との協力。

 彼らに頼めば、王位を奪い取った後も何とかしてくれるかもしれない。

 そうしたら後はクズルとワルダク、その仲間達を俺が潰していけばいいのだ。


「よし、やろく」

「ダイチさん、まさか」

「ああ。サリー、リーリィ派とやらと合わせてくれ」

「ほ、本気ですか!」

「うん、本気だよ」


 俺もこの国に住んでいる以上、無関係ではない。

 もしかしたら、俺がこの世界に迷い込んだ理由は、この国で苦しんでる人を助ける為なのか。


「ダイチさん、顔も名前も知らない大勢の人を救うこと為に行動するなんて、人間の鑑です!」

「エルナは俺の事褒めすぎだって」


 まだ幼いからか、俺の事を盲信してる節がある。

 このままでは偏った思想のまま成長してしまう。

 彼女を裏切った親の変わりに、俺が導かねば。


「それで、リーリィ派は何処に潜んでるんだ?」

「王都です」


 敵の懐の中……所謂灯台下暗しか。


「じゃあ早速旅の支度だ」

「いつから出発するのですか?」

「明日だ、善は急げってね」


 俺とエルナのそんな姿を見て、サリーは再び泣いた。


「ありがとうございます、ありがとうございます!」

「泣くな、この国を必ず元の道に正してみせる」


 ここに、三人だけのレジスタンズが結成された。


 ♦︎


「あの、ダイチさん」

「何だ? ていうか、敬語じゃなくてもいいぞ?」

「あ、はい……ううん、そうじゃなくて」


 翌日、俺たちは冒険者ギルドの前に集まっていた。

 ここが一番目印として相応しいからだ。

 そこでエルナを待ってる最中、サリーが言った。


「……お、お兄ちゃんって呼んでもいい?」

「ど、どうしてかな?」


 上目遣いで聞いてくるサリー。

 それは卑怯だろう。

 どんな事も許してしまいそうだ。

 普段は無表情というか、クールな方なので余計に破壊力が増している。


「私、お姉ちゃんはいるけど、お兄ちゃんはいないから」

「う、うーん」

「駄目?」


 駄目って訳じゃないけど。

 仮にも一国のお姫様にお兄ちゃんと呼ばせるのは、何かこう気がひける。

 まあ、でも、本人が望んでいるなら。


「いいよ」

「っ、ありがとう、お兄ちゃん」


 ニコッと笑うサリー。

 黒い髪がサラサラと風に舞い、彼女の可憐さを引き立てる。

 俺の腰くらいまでしかない少女は、とても儚げな笑みで俺を惑わしてくるのだった。


「お兄ちゃん……うん、しっくりくる、お兄ちゃん」

「ちょ、ち、近いっ」


 いつの間にか、腰に抱きつかれる形になっていた。

 甘えてるだけだと思われるが、場所を考えてほしい。

 ここは冒険者ギルドの前、つまり当たり前だが多数の冒険者が行き来しているのだ。

 通りすがりの冒険者の視線が痛い。


「す、少し離れようか?」

「え……嫌なんですか?」

「い、嫌じゃないけど……その」


 純朴な瞳で見つめられると、うう。

 どうしよう……このままされるがままで、と思ったその時。


「あぁー! 何してるんですかー!」


 エルナが猛烈なスピードでやって来た。

 そして闘牛のように俺とサリーの間に割って入る。

 た、助かった。


「サリーばかりズルいです!」

「……ズルくない、お兄ちゃんは喜んでた」

「お兄ちゃんって何ですか⁉︎」


 ワーギャーと言い争いを始める二人。

 このままではギルドに煩いと注意されてしまう。

 俺は頭を抱えながら、仲裁に尽力した。


「も、もう行こうか!」

「ふんっ」

「はぁ」


 仲良くしてくれないかな、二人とも。

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