6話秘密
ウィンドリル並みの魔物なら安定して狩れる事が分かった。
というか、俺が殴れば大抵の魔物は死ぬ。
この力の源は一体何なんだろう。
そもそも、この世界にやってきた理由も謎だ。
考えてみれば、分からないことだらけだなぁ。
「ダイチさん、おはようございます」
「ああ、おはようエルナ」
今日も冒険者ギルドへ向かう。
少しずつだが貯金はしている。
エルナはその貯金箱を見ながら「愛の巣の為……」とか言いながらうっとりしていた。
うーん、エルナは時々変だなぁ。
「さて、今日はどんな依頼をーー」
「くそっ、見失ったぞ!」
突然町中で大きな怒号が響き渡る。
振り向くと、完全武装した男達の集団がいた。
怒りと同時に、焦ってるような雰囲気も感じられる。
「さっさと探して連れてこい!」
「隊長、標的は魔法使いです」
「所詮ガキだ、魔力の総量なんてたかが知れてる!」
何やら物騒な単語が飛び交っている。
そのまま武装集団はバラバラに分かれていった。
「なにをしてる方達なんでしょうか?」
「さあ?」
エルナが不思議そうな顔を浮かべる。
あそこまで完全武装して、何を探しているのやら。
それから冒険者ギルドへ行き、午前中の内に依頼を終わらせて帰ってきた。
昼食を食べるべく店を探しながら歩いていると。
「はあっはあっ……!」
「ん、サリー?」
一瞬だけ、サリーが走ってる姿を目撃した。
見間違いか、いやでもやっぱり心配だ。
「エルナ、先に行っててくれ」
「え?」
「少し用が出来た!」
サリーの後を追うように走る。
いた、見つけたぞ!
「サリー!」
「っ、ダイチさん?」
彼女は路地裏へ入ろうとしていた。
余り治安の良い地域とは言えない。
「どうしたんだ、そんな逃げるように走って」
「……貴方には、関係ない」
「そんな事言わないでくれよ」
「あっ」
サリーの腕を掴む。
そうしないと、何処かへ消えてしまいそうだから。
「困ってる事があるなら言ってくれ、力になるよ」
「な、なんで……」
「ん?」
彼女は肩を震わせながら言った。
同時に瞳から、涙を溢れさせて。
「なんで、出会ったばかりの私をそんな風に扱うの⁉︎
どうしてそんな事が言えるの!」
「当たり前だよ、人を助けるのは当然だ」
「え?」
「だから、困ってる人を助けるのは当然なんだ。だってそんなの嫌だろう? 俺は困ってる人を見るのが嫌なんだ、どうせなら皆んな幸せになってほしい」
それは俺の本心だ。
だから困ってそうな彼女を放って置けない。
「いたぞ!」
「見つけた、捕らえろ!」
「っ、そんな⁉︎」
路地裏の方から、先程の武装集団がやってくる。
動きが読まれていた、というところか。
サリーはフッと自嘲気味に笑うと、諦めたような顔をする。
「もういい、貴方だけでも逃げて」
「無理だ、事情を話してくれ」
「逃げてよ!」
嗚咽交じりに泣きながら叫ぶサリー。
「あいつらはワルダク公爵の秘密部隊よ、絶対勝てないし、絶対殺される、だから……!」
「俺の心配なら必要ない。とりあえず、君はあいつらから狙われて逃げている、そうだね?」
「え、あ、うん……そうだけど」
「ならちょっとぶっ飛ばしてくる」
「ええっ!」
武装集団の元へ俺から向かう。
男達は困惑するが、ターゲットらしいサリーの姿をしっかりと見て目の色を変えた。
「おい、そこを退け」
「嫌だな。お前ら、サリーに何をするつもりだ?」
「貴様には関係ない!」
武装集団が俺をとり囲む。
「最期通告だ、おとなしくするなら手出ししない」
「それは俺のセリフだ、サリーを狙う理由を話せ」
「……やれ!」
何本もの矢と何種類もの魔法が飛来する。
しかし俺は、それを全て拳で叩き落とした。
「な、なんだこいつ⁉︎」
「強い……こんな奴がいるなんて聴いてないぞ!」
「くそ、ワルダク公爵の命令だ、やるぞ!」
遠距離は無駄だと悟ったのか、接近してくる男達。
残念、それは悪手だ。
「ふっ!」
思い切り地面を叩く。
するとビキビキと亀裂が入り、地盤が崩れ始める。
俺は咄嗟にジャンプして避けたが、男達は全員隆起した地面に足を奪われ倒れていた。
「じ、地面を割っただと!」
「ば、化物だあああああ!」
男達は全員無様に逃亡した。
その一連の流れを、サリーはポカンとした表情で見ていた。
「これで目の前の問題は解決した、事情を話してくれるか?」
サリーに問う。
すると彼女はハッと意識を取り戻し、頬を少しだけ赤く染めてから言った。
「……わ、分かった」
ここじゃ何なので場所を変える。
そうだ、エルナが店で待ってるんだ、そこへ行こう。
エルナも俺の仲間だし、話し合いの場にいてもいい。
「あ、もう何してたんですかダイチさん!」
「悪い悪い、ちょっとね」
「……え、サリーさん?」
エルナはサリーを見て驚く。
直後、ジトっとした目で睨まれる。
「な、何かな?」
「いえ、別に……お優しいんですね、ダイチさん」
「?」
むう、全く分からない。
が、サリーの方は。
「そういう事……私、負けないから」
「わ、私だって!」
女の子同士通ずるモノがあるのかな。
俺は首を傾げるばかりだが。
ああそうだ、エルナに事情を話さないと。
「ーーて、事があったんだ」
エルナはとりあえず納得し、近くの喫茶店(のような店)に入って三人で席に着く。
そして俺は、正面からサリーに聞いた。
何故、男達に追われていたのかと。
「今から話す事は、信じてもらえないかもしれない」
少しだけ緊張する。
何となく、この話を聞いた瞬間、俺の人生が大きく変わってしまう気がしたからだ。
「実は私…………この国の王女なの」




