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4話王の素質

 

「や、やめてくれえええええっ!」


 翌日、冒険者ギルドへ向かおうとした時、街中の方から老人の悲鳴が聞こえてきた。

 不審に思い、エルナと共に声の元へ向かってみる。

 すると、信じられない光景を見た。


「頼む、この家は婆さんと孫と暮らした、思い出の家なんじゃああああっ!」

「黙れ、税金を払わぬが悪いのだ」


 老人の住居と思われる家を、兵士達が斧やハンマーで取り壊し、金目の物を手あり次第奪って荷台に積んでいた。

 これじゃ盗賊と変わらない。

 兵士がこんな事をして許されるのか?

 近くの人に事情を聞いてみた。


「ほかの国から来た旅人か? なに、あんな光景各地でしょっちゅう見れるよ。わざと税金を重くして、払えない人間の財産をああやって強奪してるんだ、今の皇帝は」


 それは……酷い話だ。

 国民を道具としか思っていない、悪魔の所業。

 今この国はそんな事になっていたのか。


「エルナ、本当か?」

「はい、ヴァーミリオン帝国は今、激しい内戦中なのです」

「内戦?」

「前皇帝が数年前に死去したのですが、皇帝の子供達は女の子だけで王位継承権が無かったのです。だから公爵家の青年を国王にしたのですが……その方が、ここ数年圧政の限りを尽くしてまして」


 そういう事か。

 調子に乗った若者の暴走、と言ったところか。

 この町は圧政に関してはまだマシな方で、王都方面の主要都市はそれはもう酷いらしい。

 不当な搾取に初夜権の乱用、平民を面白半分で殺し逆らう者は皆殺し。


 そしてそんな国王を玉座から引きずり下ろす為、各地で内戦が絶えなくなってしまったようだ。


「酷いな……」

「はい……だからでしょうか、お金に困った私の両親は、私を売って……」

「エルナ……」


 彼女がとても悲しそうな顔をする。

 国民がこんなに苦しんでいるのに、国王は何もせず兵士は便乗して略奪を繰り返す。

 これはもう、目に余る光景だ。


「エルナ、少し待っててくれ」

「ダイチさん?」

「あれを止めてくる!」


 人混みを大ジャンプで飛び越え、老人と兵士の間に割って入る。


「な、何じゃあ⁉︎」

「貴様、何者だ!」


 老人は腰を抜かし、兵士は武器を構える。

 兵士の数は六人か。

 全員、槍を装備している。


「おい、今すぐこの略奪行為をやめろ」

「なんだと?」

「お前らが勝手に勢を引き上げたんだろ、なのにこの仕打ちは酷いじゃないか」


 老人に手を差し伸べ立つのを手伝う。


「爺さん、大丈夫か?」

「た、助けてくれのか……?」

「ああ、この家は必ず取り返す」

「貴様、勝手な事を言うな!」


 六人全員の槍が俺へ向けられる。


「逆らう者は殺してよいと国王陛下より言われておる、死にたくないならさっさと去れ!」

「あんたらの役目は、国民を守る事じゃないのか?」

「我々に逆らう者は国民に在らず!」


 兵士の目は本気だった。

 はあ、この国は近い将来滅ぶだろうな。


「もう一度言う、今すぐ略奪をやめろ」

「貴様こそ、さっさと消えろ!」


 槍が一斉に突き出される。

 俺は咄嗟にしゃがみ込み、一回転して包囲網を脱出して様子を伺う。

 仕方ない、やるしかないか。


「ふっ!」

「がっ⁉︎」


 兵士の一人を殴り飛ばす。

 続けてもう一人を回し蹴りで処理し、槍を奪い取ってバキバキに折ってやる。

 それを見た三人の兵士は恐れをなして逃げだした。

 残ったのは一人の兵士のみ。


「ば、馬鹿な……こんな馬鹿な事が!」

「まだやるのか?」

「く、国に逆らうのか貴様あああああ!」


 喚きながら特攻してくる兵士。

 最後の最期まで無様だな。

 俺はお決まりの右ストレートで、兵士を空高く殴って吹き飛ばした。


「ぐああああああああっ⁉︎」


 兵士は空高くて飛び、星になった。


「爺さん、これでもう安心です。壊れた家の修理、手伝います」

「私も手伝います!」


 エルナが散らばっていた家具などをかき集める。

 そんな様子を爺さんはぼーっと見つめ、そして涙を流して感謝を述べてきた。


「だ、誰かは分かりませんが、ありがとう……ありがとうございます……ワシの為に、あんな」

「いいんです、見過ごせない所業だったんで」


 俺たちが家の修理をしていると、周りの人たちも壊れた家具などを集めるたりと手伝い始めてくれた。


「すげーぜ兄ちゃん!」

「ああ、ムカつく奴らを殴ってくれてありがとう!」

「俺らも手伝うぜ」


 町の人たちと一致団結する。

 その様子を見るに、皆んな国王に苦しまれてると分かってしまう。


「凄い……ダイチさんが立ち上がって、皆んなが一つになってる……ダイチさん、王の素質があるのかも?」

「おいおい、それは褒めすぎだよ」


 王の素質って、せいぜいリーダーシップがあるくらいだよ、俺は。


「ダイチさんが統治した方が、この国は良くなりますよ!」

「うーん、それは難しいかなぁ」


 王族でもない人間が国王になる。

 階級社会のこの国で、それはとんでもなく難しい。


「まあ、今の国王には一言言ってやりたいね」


 その日は爺さんの家の修理で終わった。

 お礼として泊めさせてもらったので、結果オーライかな。

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