3話ステータス
「ええと、まずお名前は?」
「ダイチです、星野大地」
「エルナと申します」
お姉さんが書類に名前を書き込んでいく。
そういえば、どうして日本語が通じるんだろう。
文字も読めるし不思議だなぁ。
あ、でも書くのは無理っぽい。
「では、こちらの水晶に触れてください」
水晶玉を取り出すお姉さん。
青く澄んでいて綺麗だ。
何となく光っている。
「これは?」
「ステータスを投影する魔道具です、これでお二人の潜在能力を調べます」
ふむ、潜在能力か。
俺は早速触れようとするが、エルナが控えめな声で俺を呼び止め言った。
「あの、私が先に調べてもらってもいいですか?」
「いいけど、どうして?」
「ダイチさんの後だと、気まずそうで……」
よく分からないが、まあいい。
遅いか早いかの違いだ。
「じゃ、じゃあ触れます」
「はい、どうぞ」
エルナが恐る恐る水晶に触れる。
すると水晶玉が光を放ち、水晶の下に置かれていたカードのような物に光が吸収されていった。
「ありがとうございます、これで登録完了です」
「み、見てもいいですか?」
「勿論です」
エルナがカードを受け取る。
そういや、ステータスって何だ?
お姉さんに聞いてみる。
「潜在能力、技能を数値化したものです。冒険者ギルドではその《ギルドカード》が冒険者の証になりますので、紛失しないよう気をつけてください」
ふーん、ゲームみたいだな。
「ダイチさん、私のステータス、見てください」
「いいのか?」
「はい!」
そうか、なら遠慮なく。
♢エルナ♢
レベル1
筋力:E
敏捷:D
耐久:E
魔力:B
技術:D
【スキル】
〈成長促進・B〉
新しい事を覚えようとする時、上達するスピードが通常よりも早くなる。
この数値はどういう意味なんだろう。
またお姉さんに聞いてみる。
「各項目にA〜Eと記号が割り振られていて、Aが最高位Eが最低位です。エルナさんは魔力の項目が高めなので、魔法使いになるのがいいかと」
「へぇ、凄いじゃないかエルナ、魔法使いなんて」
「そんな……ダイチさんには及びませんよ」
エルナは照れてるのか、顔が赤い。
魔法使いかぁ。
俺も一度は魔法を使ってみたいものだ。
「それじゃ、俺の番だな」
「ダイチさんはきっと凄いステータスですよ」
「はは、どうかな」
余り期待はしていない。
ギルドで適当な仕事が出来ればそれでいいのだから。
そう思いながら水晶玉に触れた。
「……はい、これで登録完了です」
「ありがとうございます」
ギルドカードを受け取る。
さてと、俺のステータスはと。
「エルナ、一緒に見よう」
「是非とも!」
二人でステータスを確認した。
ホシノダイチ
レベル1
筋力:測定不能
敏捷:測定不能
耐久:測定不能
魔力:測定不能
技術:測定不能
【スキル】
〈???〉
〈???〉
〈???〉
「……なんだこれ?」
「さあ……?」
思わず声に出てしまった。
いや、これはきっと故障だろう。
お姉さんに言ってやり直させてもらうか。
「あの、これ何ですけど」
「一体どうしええええええええええっ⁉︎」
突然お姉さんが叫び声をあげる。
そして震えながらギルドカードを凝視、何度も俺とカードを見て再び叫んだ。
「す、全ての項目が測定不能って何ですか⁉︎」
「「「測定不能⁉︎」」」
お姉さん、声が大きいよ。
他の冒険者にも聞かれてしまった。
結果、ギルド内は先程よりもザワつき始まる。
「おい、測定不能って……」
「ど、どうせ魔道具の故障とかだろ?」
「でも、さっきバニッシュをぶちのめしてたし……」
再びギルド内の視線が一斉に俺へ向けられる。
エルナはそれを尊敬の眼差しで見ていた。
困ったな、こういうのは俺の趣味じゃないんだが。
「お姉さん、魔道具の故障とかじゃないんですか?」
「故障なんてあり得ません、これは王家のみ製作が許された魔道具……この魔道具を疑う事は、王家、つまり国の技術力を疑う事になりますから」
「つまり、測定不能は?」
「……この魔道具では計れない、強すぎる力を、ダイチさんは保有してる事になります」
お姉さんの断言でいよいよギルド内は混乱の極みになった。
突如現れ、測定不能を叩き出した無名のルーキー。
これはまずい、一旦帰ろう。
「エルナ、一旦帰らなかいか?」
「何処へですか?」
そうだった、俺たちには帰る場所がない。
最悪野宿でもいい、食料を買えるだけの金を稼ぎたいが、この状況じゃなあ。
「ダイチさんはもっと堂々としていればいいんですよ」
「そうかな?」
「はい、だってダイチさんはその力で、その……私を助けてくれた時みたいに、人を助けるんですから」
人助けか。
意識した事は無かったけど、そう見えるのか。
正義なき力は暴走する。
俺にはその正義があるから、エルナは大丈夫だと言ってくれているのか。
「ありがとう、エルナ」
ポンと頭を撫でる。
それに対しエルナは。
「はわ、はわわわわ……!」
オロオロしながら顔を真っ赤に染めていた。
とても愛らしき仕草をするので、ついつい撫でるのを止められずいつまでも続けてしまう。
そんな俺を見る周りの目は、いつしか期待のルーキーから不審者を見る目に変わっていた。
違うんだ……これはその、とにかく違うんだ。
しかしそのおかげもあって、測定不能のステータスに関しては取り敢えず流れていっていた。
これは好機、さっさと依頼を受けに行こう。
「エルナ、どんなのがいいかな?」
「これなんてどうですか?」
彼女が手にした依頼用紙を目に通す。
♦︎オルトロス討伐♦︎
依頼難度:激
魔の森からオルトロスが表れて暴れています、優秀な冒険者の方々に退治してもらいたいです。
「いや、これは止めろう……」
「ダイチさんなら瞬殺だと思うのですが」
「過信や慢心はよくない、もっと簡単なものを受けよう」
「成る程、勉強になります」
結局、荷物運びという雑務に落ち着いた。
エルナと二人で協力してこなし、何とか安宿に泊まれる程度の金をギリギリ稼いでその日は眠る。
明日からどうしようかな。
何となく、元の世界の事を思い出していた。
4月21日、ステータスの表記変更及び一部セリフ変更。




