19話これからの事
「この戦い、我々の勝利だ!」
「「「うおおおおおおおおおおっ!」」」
王城前でゼンリョウ公爵が高らかに宣言する。
その一言で帝国兵士はすっかり意気消沈し、全員武器を捨てて投降した。
クズルやワルダクの身柄は既に渡している。
大臣や今回の件に加担していた貴族達もだ。
「お兄ちゃん!」
「ダイチさん!」
戻ると、サリーとエルナが出迎えてくれた。
二人とも満面の笑みを浮かべている。
そんな俺も、少し笑顔だ。
「ダイチさん、今回も大活躍って聴きました、凄いです!」
「お兄ちゃんはこの国の英雄だよ!」
手放して褒めてくれる二人。
そう言われると、良い気分になってくる。
そうか、英雄かあ。
「とにかく、これで王位を取り戻せました」
「そうだ、次の王って誰なんだ?」
「ゼンリョウ公爵が相応しい人物を探すと」
あの人が探すなら大丈夫だろう。
「とにかく、今は休みたいよ」
魔力の使い過ぎ、というのを初めて実感した。
♢
それからの事はとにかく早かった。
まず、クズルとワルダクの処刑。
それに加え中心メンバーの大臣、貴族の爵位剥奪。
事態は混乱を極めたが、ゼンリョウ公爵の華麗な手腕で問題無く進められる事が出来た。
そして、王女リーリィの復活。
彼女は帝国の若い貴族達から陵辱を受けてたにも関わらず、国民の前で頭を下げ謝った。
「今回の事件、王族は恥を晒しました。今後はより一層、国の為、皆様の為に尽くそうと思います」
当面は、彼女が代表として国を纏めるらしい。
その後正式に国王を決めるとゼンリョウ公爵が言っていた。
だが……水面下で、思いも寄らぬ事が起きていた事を、この時の俺は知らなかった。
「ダイチさん、これからどうするんです?」
「そうだな、金は沢山貰ったし、正直目標が無いというか、やるべき事が無い」
俺は国からかなりの金額をお礼として貰った。
庭付きの家が建てるくらいの金額なので、冒険者として働く必要も無くなってしまった。
「ま、暫くは町を見て回ってみるよ」
「私も行きます!」
「勿論だ。でも、サリーは……」
サリーは第一王女として王城に戻るようだ。
リーリィが実務面を担当し、彼女は王族の象徴的存在……革命を成し遂げた少女として活動するらしい。
これがもし、周りから祭り上げられての事だったら、俺は待ったと言っていただろう。
だかこれは、彼女自身がやりたいと言い出した事だ。
少しでも国の為、姉の為に力になりたい。
数日前、そう言っていたのを思い出す。
「寂しくなるな……」
残念だが、俺はただの平民だ。
これから先、彼女と会う事は難しいだろう。
と、俺が悲しそうな顔をしていると。
「大丈夫ですよ、ダイチさん」
「エルナ?」
エルナが、ギュッと俺の手を握ってくる。
柔らかくて暖かい。
「きっとまた会えますよ、サリーもそう思ってます」
「……そうだな、うん、会える会える」
「はい、それにーー」
そっと俺に寄り添ってくるエルナ。
そして、母のような慈愛のこもった笑み浮かべながら言う。
「私は、ずっとダイチさんと一緒にいます。私にはもう、何もありませんから」
「エルナ……」
両親から裏切られた少女、エルナ。
確かに彼女には、もう何もない。
俺という存在以外に。
ーーダメだな、もっとシャキッとしないと。
「よし、とりあえず王都を見て回るか!」
「はい!」
未来は、幾重にも広がっている。
それは無限大で誰にも予測出来ない。
だからこそ、毎日は楽しい。
俺がこの世界にやってきたのも、そんな運命の一つ。
なら、やってやろう。
それが俺の、未来だから。




