14話パワスターとの戦い
「らあっ!」
「っ!」
パワスターは無駄のない、最小限の動きで己の最高速度を弾き出しながら斧を振りかぶる。
そのモーションも洗練されていて、まるでプログラミングされたロボットのように正確だった。
あの豪腕から繰り出される一撃は強烈……なら、受け止めるのではなく避ける!
「させるかっ、魔法起動」
「なにっ⁉︎」
パワスターの瞳が怪しく輝く。
同時に左腕に刻まれた紋様ーー魔権が一瞬だけ発光し、魔法を無詠唱で発動させる。
「ぐ、く!」
瞬間、体が鉛のように重くなる。
いや……違う。
俺が重くなってるんじゃない。
もっと上から、俺を押し潰すようなこの感覚。
「は、ガラ空きだぜえ!」
「はあっ!」
強引に両手を動かし、斧を目前で止める。
見た目通り凄まじい力で押し潰してくるパワスター。
「なんだあ、この程度の魔力でそこまで弱くなるたあ……テメエ、強さとレベルが見合ってねえなあ?」
「レベル……?」
ステータスの欄にあった数値か。
自分の能力値が全て測定不能だった為、今の今まで完全に頭から抜けていた。
そうか、レベルが関係しているのか。
「敵に情報を与えるなんて、随分余裕だな?」
「なんだと?」
「口は災いの元ってな……魔法起動!」
魔法を唱えるべくキーとなる詠唱を発する。
それを見たパワスターは力を強め魔法を使わせんとするが、既に手遅れ。
それに、俺が使うのは攻撃魔法ではない。
「情報介入」
俺が開発したオリジナルの魔法・ハッキング。
知りたいと思った事柄に介入し、その情報を脳内へ送る。
イメージが大事と魔道書には書かれていたが、ここまで簡単に魔法が作れるとは思っていなかった。
「……成る程、そういう事か」
「テメエ、さっさと潰れろ!」
魔法のカラクリを暴く。
何にしても、この状況はよくない。
俺はほんの少し本気を出し、斧を跳ね除け高く飛び上がる。
「ぬおおっ!」
「ふー、やっと楽になった」
俺は常に自分の力をコントロールしている。
でなければ、歩くたびに物が破壊されるからだ。
今、その枷を少しだけ緩くした。
「く……テメエ!」
「パワスター。お前の魔法の正体、分かったぜ」
「なにっ⁉︎」
俺はハッキングで得た情報を脳内で整理させる。
『重力変化』
系統・自然/属性・無/ランク・B
一定範囲の重力を変化させる。
自身のレベルより低い相手に使用すると、通常よりも振れ幅の大きい重力変化を使用出来る。
「重力変化……厄介な魔法だな」
「テメエ、何しやがった!」
パワスターは怒りに顔を歪めながら襲いかかっくる。
俺は床を破壊し、その破片を拳で打ち出す。
擬似的な弾丸……本物の銃に匹敵する速度と威力を備えた破片は、パワスターの左肩を撃ち抜いた。
「ぐううっ!」
「今のスピードだと、重力変化をする前に当たるな」
「く、舐めんじゃねえ!」
パワスターが新たな魔法を発動させた。
体が赤く光り、今までとは比べものにならない程の速度で辺りを縦横無尽に駆け回る。
それも知ってる、ハッキングで見たよ。
『身体強化』……強化魔法の派生技術。
自身の身体能力を大幅に向上させる魔法だ。
なら、俺も。
「身体強化!」
「っ、テメエエエエッ!」
俺の体は青く輝いていた。
赤い閃光と青い流星。
既に常人では視認出来ない速度に達していた。
「ふっ!」
「らあっ!」
超高速世界の中、拳と拳の激突が起こる。
蹴り、拳、蹴りーーそして頭突き。
それらの連続攻撃をパワスターは放ってくるが、俺の方が僅かに速い。
「遅い!」
「なっ⁉︎」
最後の頭突きを読み、奴の頭を跳び箱を跳ぶようにしてすり抜ける。
ガラ空きになったパワスターの背中。
絶好のチャンス、決めるなら今しかない。
「部分強化!」
拳を放つ直前、新たな魔法を起動させる。
特定の部位を強化する『部分強化』。
体全体を覆っていた魔力を拳に集約させ、砲台を放つかのように前へ突き出す。
「終わりだ!」
「がっ、ああああああああああああっ⁉︎」
ビシイイイイイイッ!
強烈な破壊音が響き渡る。
俺の拳は肉を裂き、骨を砕く。
パワスターは鮮血を撒き散らしながら吹き飛び、壁を貫いて王城の外へ飛んでいった。
「四天王、中々手強かったな」
「お兄ちゃん、大丈夫だった?」
「ああ、問題ない」
サリーが駆け寄ってくる。
「途中からお兄ちゃんも四天王も、見えなくなっちゃったから心配したよ。しかもそれなのに、戦闘音だけが聴こえてくるから」
「悪いな、心配かけて」
サリーの頭を撫でる。
俺は余裕だったが、本来ならパワスターレベルの敵は本当に用心してかかるべき敵なのだろう。
そんな相手を前に、サリーを危険に晒す訳にはいかない。
「さあ、リーリィ王女を探しに行こう」
「うん! 待っててね、お姉ちゃん」
二人で更に王城を進んでいく。
……俺は、この時気づくべきだった。
反逆の罪で囚われた王女が、どんな扱いを受けてるのかと。




