13話突入
「遂に……この日が来た」
サリーが神妙な顔つきで言う。
杖を両手で強く握り、準備万端といった感じだ。
「必ず、お姉ちゃんを助ける」
「ああ、そうだな」
元々、その為にクズル打倒を掲げていた。
しかし俺もこの国に住んでる以上、理不尽な圧政を見て見ぬ振りは出来ない。
略奪行為が正義だなと、絶対に言わせるものか。
「ダイチよ、準備が整ったぞ」
「分かりました。行こうサリー」
「はい」
俺とサリーは王女リーリィを救出する部隊だ。
それと、一番槍も兼ねている。
俺が真正面から突っ込み騎士や兵士を粗方片付けた後、リーリィ派の私兵団が突入するのが開戦の合図。
エルナは今回、後方でシェルナの護衛を務めている。
「しかし、本当に大丈夫なのか?」
「ええ、任せてください」
屋敷の外に出る。
そこには何人もの兵士がひしめき合っていた。
彼等は全員、『転移魔法』で王城の前にまで移動させる。
王城そのものには転移を防ぐ結界が張られているが、その周りは普通の空間だ。
数で劣るリーリィ派が奇襲戦法を取るのは至極当然。
が、それは敵も分かっている。
「だから、俺が暴れて更に撹乱させる」
「その間にお姉ちゃんも助け出す」
「……むう、もう君に頼るしかないな」
三人で転移魔法陣の上へ乗る。
この魔法、起動させるまで二日間もかかるらしい。
「さあ、そろそろ飛ぶぞ」
「おわっ⁉︎」
「きゃっ⁉︎」
瞬間、視界が一瞬で切り替わる。
そして目の前には、王城の外観が広がっていた。
周りを見ると、既に他の町の兵士も到着しているようだ。
「ルドル伯爵」
「これは、ゼンリョウ公爵!」
すると、俺たちの元に金髪の男性がやってきた。
歳は四十代くらいだが、しっかりと鍛えられた体からは老いを感じさせない。
「君からクーデターの案を聞いた時は驚いたが、いつかはこうなると私も考えていた……決断の後押しをしてくれね感謝する」
「それもこれも、彼のお陰ですよ」
「ほお、君が例の最強……」
最強って……俺の通り名的な名前か。
だとしたら恥ずかしすぎる。
「上手く広まってるみたいですね」
「サリー……」
君か。
「サリー王女、よくぞご無事でした」
「ゼンリョウ公爵、貴方こそよく、ここに馳せ参じてくれました」
ゼンリョウ公爵が十二歳の女の子に跪く。
こうして見ると、サリーとの身分の違いを思い知る。
「今は幻影魔法でカモフラージュしていますが、それも時間の問題でバレるでしょう。その前に兵を編成し、整い次第奇襲をかけます」
「はい、そっちの方は貴方に任せます」
こちら側の総大将はゼンリョウ公爵だ。
地位的にはサリーのが上なのだが、戦争だし兵士の士気的にも幼い少女より彼の方が適任だろう。
それから数分間だけ打ち合わせをする。
ワルダクとクズルを見つけた場合、可能ならば捕獲、無理なら殺害しても構わないらしい。
「……そろそろ、時間です。サリー王女、ご武運を」
「貴方もです、ゼンリョウ公爵。ご武運を」
「ダイチ殿、私は貴方の事をよく知らぬ。だが、サリー王女が信じる貴方を私も信じよう」
「はい、任せてください」
ゼンリョウ公爵が兵団の方へ戻る。
それから少しして、煙玉の合図が上がった。
「いくぞ、サリー!」
「うん!」
俺は思い切りジャンプする。
そして城の遥か上空へ。
着地点を正門へ修正し……ダイヴ。
ドッ、ゴオオオオオンッ!
轟音と共に地面が砕け、土煙が舞う。
俺は煙に姿を隠しながら素早く動く。
「な、何だ⁉︎」
「空から何か降ってきたぞ!」
「至急おうえーーがっ⁉︎」
「どうした、なっ⁉︎」
応援を呼ぼうとした兵士を手刀で気絶させる。
殺してもよかったが、服が汚れるのでやめた。
この先何人も戦う事になるだろうが、その度に殺してたんじゃ血の匂いが取れなくなりそうである。
「悪いが、瞬殺させてもらうぞ」
「貴様、なにも」
「ふっ!」
超高速で繰り出される鉄の拳。
外傷と同時に体内へもダメージを送る。
兵士は崩れ落ち地面へ倒れ伏す。
まだまだいるな……面倒だ。
まとめて吹き飛ばそう。
「サリー、ついてこれてるか!」
「な、何とか!」
「そうか。今からここら一帯を吹き飛ばす、魔法でガードしといてくれ」
「う、うん!」
何重にも障壁を自らの周りに展開するサリー。
あれなら大丈夫だろう。
さて、やるか。
「うおらあっ!」
拳を思い切り大地へ叩きつける。
俺の生み出したエネルギーは地面を割るだけに留まらず、その余波で周囲の兵士達を次々と吹き飛ばしてゆく。
「「「ぐああああっ⁉︎」」」
四方八方から兵士の悲鳴が聞こえてくる。
こんなところ、後はーー
「全隊、出撃!」
ゼンリョウ公爵が門へ向かって突撃する。
うん、これだけ兵士の数を減らしたんだから、安全に城内へ突入出来るだろう。
「お兄ちゃん、凄すぎるよ……」
「まあ、こんなもんだ。それより早く行こう」
俺とサリーは兵士の波に呑まれる前に城内へ入り、リーリィ王女を探す。
王城はファンタジー世界観を体現したかのような内装で、煌びやかな装飾が所々に施されていた。
こんな状況でなければゆっくり見て回りたいものだ。
「サリー、リーリィ王女がいそうな所に心当たりはあるか?」
「……分かりません。お姉ちゃんの私室なら分かりますが、恐らく幽閉されてると思うので」
「そうか……て、危ねえ!」
「きゃっ⁉︎」
突如、壁がくり抜かれたように崩壊していく。
そして出来た穴から鉄球のような物が投げ込まれるが、サリーを庇いながらそれを右手で破壊する。
「へえ、オレ様の鉄球を避けるとは、やるじゃねえか」
「誰だ!」
崩壊した壁の向こう側から、一人の男がやってくる。
筋骨隆々とした大男で顔に十字の傷が刻まれてた。
「オレ様は帝国四天王、剛力のパワスター」
「帝国四天王? ああ、カルミの仲間か」
「まあ、そういう事だ」
パワスターはニヤリと笑みを浮かべ、背中に担いでいた巨大な斧を前へ突き出す。
戦闘態勢……交渉の余地は無い、か。
「オレ様は細かい事は嫌いだ、生きるか死ぬか、それくれーシンプルなくらいが丁度いい」
「見てれば分かるよ」
「へへ、じゃあ行くぞお!」
パワスターが弾丸のように跳ねて突進してくる。
「サリー、下がってろ」
「……うん。お兄ちゃん、頑張って」
ーー帝国四天王・一人目。
VS、剛力のパワスター




