12話魔法
「恐らくその女は帝国四天王の一人、魔女王のカルミだ」
「帝国四天王?」
デュークデーモンに勝利した後、俺は事の顛末をルドルさんとシェルナに話した。
女の特徴を言っていくと、ルドルさんが知らない単語を交えて召喚魔法使いの正体を言い当てる。
「帝王が認定した、帝国最強の四人の人間だ。軍に属する事は無いが、多大な富の代わりに有事の際は帝国を助ける為その力を使う」
「その一人が、どうして?」
「大方金で買収されたのだろう、こうなると他の四天王もクズル帝王側に付いてると見て間違いない」
帝国四天王……か。
まあ、俺なら問題無いだろう。
カルミも結局逃げ出したし。
「俺なら大丈夫です、負ける気は全く無いですから」
「まあ、我々もそう思うが」
「ダイチさんなら楽勝ですよ」
「お兄ちゃんは、最強無敵」
エルナとサリーが無い胸を張って自慢げに言う。
それをシェルナが微笑ましく見ていた。
直後、俺にこっそりと耳打ちしてくる。
「……手は出していませんよね?」
「勿論ですよ⁉︎」
シェルナの目が怖い。
やっぱり周りからはそういう風に思われてるのか。
俺は空気の誤魔化しも兼ねてルドルさんに言う。
「とっとにかく、王城へ攻める日は決まったんですか⁉︎」
「同志達にも準備がある、三日程待ってくれ」
「三日……はい、分かりました」
三日後が決戦か。
そう思うと、少しだけ緊張してくる。
「エルナ、サリー、三日間どうする?」
「私達は魔法の訓練をします……お姉ちゃんを助けるには、もっと強い力が必要だから」
「私も、サリーと特訓します」
二人ともこういう時は仲が良い。
もしかして、俺がいるから喧嘩してるのか?
そうだとしたら複雑だなぁ。
「ダイチさんは何をするんですか?」
「んー、そうだな……適当に街を見て回るよ」
ついでに、帝国軍が攻めてこないかの見張りもする。
この目で確かめた方が確実性が高い。
そんな感じで、今日は解散となった。
俺は部屋に戻って、とある本を手に取る。
タイトルは『デミウス流魔道書』。
俺も魔法……遠距離攻撃の手段が欲しいと思い、エルナから借りてきたのだ。
ページを開くと、様々な項目に分かれて魔法の構造、発動までのプロセスが乗っていた。
「えーと、魔法の詠唱は自己暗示の面が強く……」
曰く、詠唱は己の意識を高める自己暗示に似たもの。
だからやろう思えば無詠唱でも発動出来るが、効力が安定しないし最悪の場合暴発の危険性があるとの事。
カルミは流石の四天王、という訳か。
「自己暗示……」
起動詠唱は何でもいい。
戦闘の場合、極力短い方が隙をなくせる。
となると、そうだな。
俺は自分に馴染みのある言葉を口にする。
「……魔法起動」
瞬間、魔道書が一瞬だけ輝く。
魔力が通った証拠だ。
よかった、俺にも適正はあるらしい。
というか全ステータス測定不能なのだから、魔力も桁違いにあるのだろう。
そのまま次のステップへ移行する。
「基礎的な魔法は……強化魔法?」
物体の強度を高める『強化魔法』。
物に自分の魔力を流し込む、基本中の基本魔法。
これが出来なければ始まらない、とまで書かれている。
「……ふぅ」
目を閉じ、意識を集中させる。
強化させる物は……この羽ペンでいいか。
羽ペンを手に取り、魔力を流し込むイメージを膨らませる。
詠唱の次に大切なのがイメージだ。
魔法は世界の理を崩す。
なので、出来る限り自己の中でその幻想を固定化させ、現実世界に反映させやすくする。
「……強化開始」
キインと、何処からか音が響く。
体の底から魔力が外界に流れるのが分かる。
エネルギーを消費してる感覚も覚えた。
羽ペンが一瞬発光し、強化が行われたと理解する。
「魔法終了」
強化魔法を止める。
やりすぎると羽ペンが魔力に耐えられず自壊するからだ。
「おおっ、成功してる!」
俺の手には、硬くなった羽ペンが握られていた。
これが強化魔法か、色々応用が効きそうだ。
俺は夢中で魔道書のページをめくり、覚えられそうな魔法を見つけては訓練していく。
「ん?」
その中で、不思議な項目を見つける。
『魔権』ーーなんだろう、これは。
俺はそのページを読んでいく。
「魔法使いの技術を込めた、特別な刻印……?」
元々親が子へ魔法を伝えるのに重宝した術式らしく、今では多くの魔法使いの家系が必ずと言っていいほどこの魔権を作り出している。
己の技術や知識を魔権に刻み、次代へ繋ぐ。
それを何代も重ね続ければ、やがて最強の魔法使いが誕生するという訳だ。
それに魔権を宿していれば、魔法の効率も跳ね上がる。
無詠唱の魔法行使は不安定と言ったが、その魔法が魔権に印されていれば無詠唱でも問題ない。
「俺も、いつかは作っておこうかな」
もし子供なんかが出来た時に魔権を作っておけば、将来の役に立つだろう。
まあ、子作りする相手がいればの話だが。
「……」
不意にサリーとエルナの顔が頭に浮かぶ。
いやいや、あの二人は勘違いしてるだけだ。
幼い子が将来お父さんと結婚する、なんて言ってるのと同じで、もっと成長して視野を広げれば他に好きな男が出来るだろう。
最も、それでも俺を好きでいてくれるなら……その時は俺も男として対応する。
て、何を考えているんだか。
こんなんだからシェルナに怪しい目で見られるのか。
「……ふぅ〜」
息を整え、再び魔法の修練に励む。
今度、サリーからアドバイスでも求めようかな。




