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創造の女神と子供たち  作者: オクトパス
第1章 女神の天恵
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第9話 レント=マーティグスク


「レントー。ご飯よー。」


 母さんが呼んでいる。


「はーい。」


 俺は返事をしてから、読んでいた本をパタンッと閉じた。

 学校の図書館から借りてきた女神の天恵について書かれた本だ。

 2年前、セレナ先生に天恵の事を教わってからというもの、何度となく読み返している。

 当時はとても厚く重く感じたこの本も、随分軽く感じられるようになった。


「ふぅ……」


 さっきまで明るかった月に雲がかかり始めている。

 俺は窓の景色を横目に食卓へ向かった。


「さ、早く座って。今夜はレントの好きな鴨シチューよ」

「えー、こないだもそうだったのに」

「うるさいなー。イヤなら食べるな!!」


 母さんの料理のレパートリーは決して多くない。


「食べるってば……。あれ? 父さんは?」

「なんか、ちょっと前に連絡が来てね。猟師の組合で集まってどこかへ行くって言って出て行ったわ。」

「こんな時間に?」

「ええ。詳しい事は聞いてないけど、慌てた感じだったわね。」


 母さんはそう言いながら木の皿に料理を盛り付けている。


 夜に父さんが家を空けるのは珍しい。

 いったい何があったんだろう。

 そんな事を考えていると、玄関から音が聞こえた。


――バタンッ


「ただいまー」


 父さんが帰ってきた。

 母さんが出迎え、二人で何やら話している。

 

「父さんおかえり。なんかあったの?」


 二人が話し終わるのを待って父さんに尋ねた。


「あぁ。実はヤースが猟の帰りにツノガエルを見かけたらしいんだ。」


 ヤースさんは父さんの猟師仲間。

 そのヤースさんが見たツノガエルというのは、村の東側の森の中にいる比較的弱いモンスターの亜種の事だ。

 こぶしぐらいの大きさで、人に直接危害を加えることはない。

 理屈はよくわからないが、ツノネズミというモンスターがカエルとあれして生まれるらしい。


「それがどうかしたの? ツノガエルぐらい見かけるんじゃない?」

「それが……見かけたのが結界の中だったって言うんだよ」

「え……、それって」


 俺も何度かツノガエルを見たことがあるが、それはあくまで村の周囲を取り囲む結界のすぐ外の話だ。


「あぁ。結界が役に立ってないってことになる。ツノガエルぐらいどうってことないんだが、結界に穴でも開いてるようなら厄介だ。」


 村は普段、強力な結界によってモンスターの侵入を防いでいる。

 この土地に人が住むようになってすぐに設置されたものだ。

 それが機能していないとなると凶暴なモンスターがいつ入ってきてもおかしくない。


「ど、どうなるの?」


「村の周辺を見回ったが、今のところ被害は出ていない。明るくなるまでは原因はわからんが、念のために内側の結界を発動することになった」

「内側の結界?」

「ああ。こういう時のために普段よりも小さな輪で村を守る結界があるんだ。だからあまり心配しなくても大丈夫だ。」


 確かにそうすれば被害は出ずに済みそうだ。


「どのあたりまでが範囲なの?」

「そうだなぁ……。西側で言うと、だいたいカエル池のあたりまではすっぽりと覆われるぐらいだな。」


 意外と広いな。


「そうなんだ。ねぇ一緒に行って結界張るところ見てもいい?」

「お。一緒に行くか。」


――カン!カン!カン!


 金属音が鳴り響く。

 母さんが鍋を叩いた音だ。


「はいはい馬鹿な事言わないの! 話は終わり! レントはさっさとご飯食べて! お父さんはさっさと結界張ってきなさい!」

「わかってるよフィーナ……冗談だよ」

「それなら急いで行ってらっしゃい。早く行って早く帰って来ないと私とレントでご飯全部食べちゃうわよ」

「ふう……じゃあいってくる。愛してるよフィーナ」

「わたしもよ、ユーゴ」


――バタン


 と玄関の扉がしまり両親のやりとりが終わった。

 仲が良いのか悪いのかよくわからない。

 まぁ悪くはないか。


 俺は用意された鴨シチューに手をつけた。

 内側の結界について何か大切な事を思い出しそうになったのだが、今はそんなことよりシチューが美味い。

 

「お母さん、おかわり!」



次話は明日(2017/2/13)更新予定です。

お楽しみに!!


ご意見ご感想お待ちしております!!

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