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創造の女神と子供たち  作者: オクトパス
第1章 女神の天恵
7/23

第7話 セレナの課外授業


――カーン、カーン、カーン


 授業の終了を告げる鐘の音が鳴り響く。

 ここはアルザ村の中心に建てられた学校。

 7歳から12歳までの子供たちが、生活に必要な知識を身に着ける場所である。

 

 校舎は赤いレンガを使った頑丈な作りになっている。

 もし村がモンスターに襲われた時には、村人が一斉に避難するための機能も兼ねていた。


「はーい、じゃあ今日はここまで。みんな気をつけて帰るのよー」


 セレナは、教科書をトントンと整えながら子どもたちに向かって言った。

 彼女は村出身の22歳。

 この学校で10歳クラスの担任をしている。

 仄かに茶色がかった黒髪を後ろで一つにまとめた髪型は彼女の本来の清潔感をさらに助長していた。

 今日は清楚な彼女に良く似合う白いシャツに麻のロングスカート姿で教壇に立っていた。


「はーい! セレナ先生さよならー!」

「さよならー!」


 子供たちは元気に挨拶をしながら慌ただしく教室を後にしていく。

 村の学校は昼過ぎには授業が終わるため、子どもたちは遊びに出かけたり、家の仕事を手伝ったりとそれなりに忙しい午後が待っている。


 セレナがそんな子供たちを見送りながら、自身の帰り支度をしていると……


「セレナ先生!」


 と、後ろから声がかかる。

 セレナが振り向くと、そこには自分が受け持つクラスの3人の生徒が立っていた。


「どうしたの? 先生に何かご用?」

「うん! 先生教えて! 冒険者ってどうやったらなれるの?」


 そのうちのひとり、レントが唐突な質問を投げかける。

 残るふたりはソラとココ。

 いつも一緒に行動している仲良し3人組だ。


「冒険者? レント君は冒険者になりたいの?」


「うん! 俺もだし、俺たちみんなそうだよ。一緒にパーティを組むんだ! な!」

「「うん!!」」

「俺たちが冒険者になったらさ――」


 レントは目を輝かせながら自分たちがいかに冒険者になりたいのか熱弁し始めた。

 ソラとココの二人もレントほどではないにしろその想いに共感しているようだ。

 時折自分の言葉を挟みながらレントの意見に賛同している。


 セレナは、子供たちの話を「うんうん。」とうなずきながら聞いていた。


 冒険者というのは子供が必ず一度は憧れる職業だ。

 国営の冒険者協会――通称ギルドに所属し、ダンジョンの探索やモンスターの退治、特別なアイテムのハンティングなどを生業とする人のことをそう呼ぶ。


「ねぇ先生! どうやったらなれるの? 冒険者!」


 レントはひとしきり熱い想いを吐き出すと本題に帰ってきた。


「冒険者かー。先生もあんまり詳しくはないんだけど、知ってる事だけでもいい?」


 セレナは隠そうとしているわけではなく、本当に詳しい事を知らなかった。

 なぜなら冒険者とは、とある狭き門をくぐり抜けた幸運の持ち主が就く職業であり、セレナの友人はおろか、知り合いの中にすら冒険者はひとりもいなかったからだ。


「えー、先生なのにわかんないのー?」


 とソラが冷やかした。


「んー、わかんないんじゃなくて、よく知らないのよ。でもなり方なら知ってるわ」

「え! 聞きたい聞きたい! どうやってなるの?!」


 ココも随分前のめりだ。


「えっとね、じゃあレント君は冒険者ってどんな事してる人達か知ってる?」

「知ってるよ! ダンジョンに行って宝物を探したり、モンスターを倒して困ってる人を助けたりするんだ!」

「うん。そうだね。だいたい合ってると思う。じゃあそういう事が出来る人ってどんな人?」

「そりゃーすごく強い人だよ!」

「うんうん。それもそんなに間違ってないかな。じゃあ今度はココちゃん。この村でそんな強い人は見た事ある?」

「んー、パパのお友達にいたような気もするけど……。あ、ソラのパパがおっきい斧を使って木を切ってるのは見た事あるよ! ね、ソラ」

「うん。お父さんはすごく力持ちだよ?」

「うーん、確かにソラ君のパパは力持ちなんだけど、冒険者になるにはもっともっと強い力がいるんだよ?」


 そうセレナが告げると3人は顔を見合わせて驚きの表情を見せた。

 セレナは続ける。


「それに力だけじゃなくて、強い魔術も使えるようにならないとモンスターには勝てないの。わかる?」

「「「うん!!」」」


「で、ここからが大事なの。よく聞いて。みんなは天恵の話は聞いた事がある?」

「うん、あるよ」


 と、ソラが返してきた。


「そっか。じゃあそれはどんなお話?」

「えっとー。確か12歳の誕生日に、夢に女神様が出てきてプレゼントをくれるって言ってた。かな。合ってる?」

「うん。合ってるよ。よくできました」


 セレナはそう言ってソラの頭を――クシャッと撫でた。

 ソラは嬉しそうに目を細める。

 そんなソラを横目にレントがセレナに詰め寄る。


「その話なら一緒にソラのパパから聞いたけどさー。冒険者といったい何の関係があるの?」

「じゃあそこから説明しよっか。天恵っていうのはね――」



次の更新は明日(2017/2/11)を予定しています。


引き続きセレナ先生に冒険者のなり方を伝授してもらいます。 


ご感想お待ちしております!!

ぜひご意見お聞かせくださいませ!!

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