第6話 大人になるには
本日2話目です!!
「ん……んん……」
鼻の奧の方が鈍い痛みを主張している。
体が気だるく、柔らかいベッドの沼に沈んでいってしまいそうだ。
(あれ……? 確かココとふたりで池から帰ってて……)
そこまで記憶をたどった段階で自分の身に何が起こったのか思い出した。
「はぁ……」
どうやら今僕は自分の家にいるようだ。
見慣れた天井のシミや母さんがいつも焚いているお香の匂いがそう教えてくれた。
そういえば、いったいココは何に気付いて欲しかったんだろう。
確かに何か違いはあったような気もするのだが――。
「まぁ考えても仕方ないか」
リビングからはカチャカチャと食器同士が当たる音と人の話す声。
父さんと母さんともうひとり。
「ココの声だな」
状況はすぐに理解できた。
ココが僕をここまで運んできたのだろう。
――グゥと、お腹が鳴った。
いったいどのぐらい気を失っていたのだろう。
外は夜闇に包まれている。
「先生ー、ソラさんの意識が戻りましたよーっと」
ひとりでふざけながら起き上がり、ベッドの脇に立つと、僕はみんながいるリビングへ向かって一歩踏み出した。
すると、
「あんなに小さかった、3人がもう天恵を授かる歳だなんてな。ほんとあっという間だったねミレイ」
「そうね。まだまだ子供なのには違いないにしても、世の中では一応一人前って認められる歳なんだもん」
「えーひどいよ、おばさん。私はもう子供じゃないわ」
「そうよね。ごめんごめん。そりゃあ大人になったんだし、男の子に胸なんか触られたらびっくりしちゃうわよね。ソラにはよく言っておくわ」
「さ、触られてはいないわ!?」
「そうなの?! 触られてもないのにあんなことになったの?! じゃあ何されたの?!」
「さっき説明したじゃない!!」
「「あははははは!!」」
「な! なにがおかしいのよ!!?」
そんな会話が聞こえてきた。
「......うん、確かに触ってはいない」
そう呟いた僕は傍にある丸い木製のイスに腰掛ける。
なんだかあの場に登場するのは憚られた。
正直親の前でおっぱいの話なんかしたくない。
僕はイスにすわったまま窓に肘をかけ頬杖をついた。
(女神様か......。)
さっき父さんが言っていた天恵とは、正確には【創造の女神の天恵】と呼ばれる事象のことだ。
――誰もが通る道。
使い古された言い回しなのであろう言葉だが、僕たちはまさにその誰もが通る道を目前に控えていた。
次話は明日(2017/2/10)更新予定です。
時は2年前、学校での出来事を書きたいと思います。
お楽しみに!!
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