第4話 ソラの家
丸太を組み上げたこぢんまりとした家の煙突から煙が上がっている。
夕飯の用意をしているのだろう。
村人同士が協力し合いほぼ自給自足の暮らしをしている辺境の村アルザにおいては、ごくごく一般的な民家だ。
周囲には同じような家がポツポツと並び、それぞれの家からオレンジ色の光が漏れている。
日はすっかり暮れていたが、辺りは月明かりに照らされほのかに明るい。
――コンコン
「こんばんわ……」
ドアがノックされた。
――タッタッタッタッ
中から人が駆け寄る音が聞こえた後、ドアがガチャリと開かれた。
「あら、ココちゃん。――え! ソラどうしたの!?」
まだココの腕の中で眠っているソラについて尋ねているのはソラの母親のミレイだ。
「私……。おばさんごめんなさい。私また手をあげちゃって……」
ココがそう告げると、
「あらまぁ。どーせまたソラが失礼な事言ったんでしょ? ごめんなさいね。さ、まぁとにかく入って入って」
そう言ってミレイはココを家の中に迎え入れた。
「じゃあ、そのままソラをベッドに寝かせてきて。そのうち起きるでしょうから」
「はい……」
「おや? ココちゃんいらっしゃい」
「お邪魔します……」
食卓の奥からソラの父マルコが声をかけたが、ココはソラに傷を負わせたきまずさからか控えめに返事をして、ミレイに促されるままに寝室へ向かった。
ココにとっては幼い頃から頻繁に出入りしているソラの家だ。
部屋の位置などは把握している。
寝室に入り、3つ並んだベッドのひとつにソラを寝かせると「ふぅ……」と息をついた。
フルフルっとしびれきった腕を揺する。
「あははははは」
「ふふふふ」
ココが振り返った。
ドアの向こうで笑い合うマルコとミレイの声が聞こえたのだろう。
「はぁ……本当に気をつけよう……」
ソラの両親とも生まれて以来の長い付き合いだ。
今回のような事でお咎めが無いのは察しがついているが、ふたりが気にしていない様子を改めて感じてココはホッと胸を撫で下ろした。
「ココちゃーん!」
ミレイがココを呼んでいる。
「はーい!」
少し元気を取り戻したココは、いつもの明るい声で返事をして、ミレイとマルコのいるリビングへ向かった。
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