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創造の女神と子供たち  作者: オクトパス
第1章 女神の天恵
15/23

第15話 ジョブ

第15話


「おい。また『私今日から戦士よ』って。あれ今日何回言うんだよ」

 

 レントがにやにやしながらココを指差している。

 ココの異常な興奮がまだ収まっていない。

 だけど不安から開放された人が見せる反応としてはむしろ正常なのかもしれない。

 僕は応えた。


「さっきから人がひっきりなしにお祝いに来てるもんね。あと100回は言うんじゃない?」


 ココの家には朝から絶え間なく人が訪れココを祝福していた。

【ジョブ】を授かると親戚が増えるという話は決して大げさではないようだ。


 2年前当時、セレナ先生は戦士などの能力の事について、僕たちが分かりやすいように【すごく大きな力】といった表現をしていたが、調べていくうちに便利な呼び名を見つけた。

 それが【ジョブ】だ。


「ねえレント。さっきの天啓のジョブとアイテムのリストもう一回見せてよ」

「あぁいいぜ。ほら」


 僕が頼むとレントはつたない字で書かれた古びた紙をこちらによこした。

 レントが本の内容を書き写したものだ。

 

【ジョブとアイテムの因果関係】

(魔道士)

 杖・指輪・ローブ・本・木桶

(戦士)

 剣・ブレスレッド・盾・干し肉・つるはし

(ビショップ)

 魔術師と同じ

(シーフ)

 短剣・帽子・ブーツ・レンズ

(テイマー)

 鞭・チョーカー・犬笛・革袋

(影使い)

 ランプ・手袋・枕

(ニュートラル)

 上記以外のアイテム


 ニュートラルというのは、6つのジョブを得られなかったいわゆる【普通の人】の事を指すもので、若干の蔑称のニュアンスがあるため口に出すことはあまり好まれていない言葉だ。

 反対にニュートラルではない人のことを指す【ホルダー】という言葉もある。


「やっぱり書いてある。ブレスレットだから戦士で間違いないね」

「ああ。すごいな本当に。まだちょっと信じらんねえ」


 確かに僕もまだ信じられない。

 僕たちがあんなにも追い求めたものが本当に手に入ったのだ。

 

 今日までの2年間、僕たちは天恵の事を常に考えて過ごしてきた。

 あるときは胡散臭い本【希望の天恵を受けるための100の方法】に載っていたとおりに降霊儀式のような事をしたり、またあるときは戦士になったときのために木の棒で剣の練習をした。

 ひとつひとつ、夢の実現に向けて試行錯誤する毎日は本当に楽しかった。

 が、やればやるほどに、想えば想うほどに虚しさを感じずにはいられなかった。

 

 なぜなら【女神様から何を授かるのか】という点をどうしても自力ではクリアできないからだ。


 僕は確信している。

 きっとレントもココもそんな物悲しさを抱えてきたのだと。

 だからこそ二人はあの日、激しく衝突した。

 言葉にこそならなかったが、ふたりの気持ちは痛いほどわかった。


 そして次は僕の番。

 3日後の夜にはまたひとつの答えがでる。

 楽観視はとてもできない。

 ほとんどの場合その一瞬で僕たちの夢が終わる。


 ――ポン


 僕の頭に手が置かれた。

 レントだ。

 優しい表情でこちらを見ている。


「そんな顔すんなソラ。ココがこないだ言ってたとおり、待つしかないんだ。あと少しの辛抱だろ? 気合い入れろよな」


 きっと僕は泣きそうな顔をしていたに違いない。

 レントはそんな僕を、彼なりの不器用な言葉で励ましてくれた。

 だが言い方は悪いが、彼はココにした失敗からあまり学んでない。


「勝手な事言わないでって泣き崩れてあげようか?」

「ハハハ、勘弁してくれ」


 僕は少し気持ちが楽になった。

 実際に僕たちの中からひとりでもホルダーが出た事は奇跡だ。

 これほど幸運な事はない。


 ココはきっと冒険者になる。

 もしも僕たちがジョブを得られなくても、彼女が夢を叶えてくれるはずだ。




次話の投稿は明日(2017/2/19)の予定です!!

次もぜひ読んでください!!

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