第13話 ブレスレット
昨日はあの後、ソラが家まで送ってくれた。
目を腫らして帰ってきた私を見たママはびっくりしていたけど、何も聞いてはこなかった。
きっと隣にいたソラの表情をみてなんとなく状況を察したのだろう。
結局そのまま泣き疲れて寝てしまい、気付けば今日になっていた。
朝起きると以外にもすっきりとした気持ちになっていたので、なんとなくホッとした。
今日学校は休み。
特にすることを作らずに家で一日中本を読んだりゴロゴロしたりしながらゆっくりと過ごした。
あのあとレントとはなんの和解もしないままだけど、引っかかることはない。
そのあたりはお互い分かり合えているつもりだ。
レントはレントで女神の天恵を迎える私を心配してくれていた。
それはよくわかってる。
「でもあんな言い方することないのに......」
そうつぶやくとママがそれに反応した。
「うん? 何か言った?」
「え?! あ、ううんひとりごと!」
「あら、そう。ふふ」
「何よー。」
「12歳にもなったら色々あるわよね」
「もちろんよ」
「立派になったわね。ねぇパパ」
「あぁ。ココは自慢の娘だよ」
「やめてよ。恥ずかしいよ」
「ふふふ。さてもう夕飯片しちゃいましょうか。お腹はもう大丈夫?ココ」
「うん。もうお腹いっぱい。パパ、ママ、誕生日を祝ってくれてありがとう」
「改めておめでとうココ。ママに似てすごくキレイな大人になったね」
「やめてよパパ、ふふ」
「はいはい。ごちそうさ……ま……」
ふっと体の力が抜ける。
すぐにパパが隣で肩を支えてくれた。
目をやると、全身が白い光に包まれている。
「は……はじまるのね」
「そうだね。心配ないよ。女神様にしっかり挨拶して来なさい」
「は……い。パパ……ママ……いってきます……」
視界が一気に暗くなり、フワッと宙に投げ出されたような感覚が体を襲った。
暗闇に目が慣れてくると赤や黄色の星が輝く夜空のような場所にいることがわかった。
上にも下にもそんな景色が広がっている。
私は宙に浮いているようだ。
「綺麗……」
遥か向こうモヤっとしたひかりの塊が見える。
私の体はその光に向かって引っ張られている。
ゆったりと小川に流されるように、
光はだんだん強くなり私の体を飲み込んでいく。
眩しくてなにも見えない。
気がつくと私は何もない真っ白な空間に立っていた。
どこまでも続いていて果てが見えない。
思いの外、心は穏やかだ。
『ココ=ルマリアですね』
ふいに頭の中に優しい声が広がる。
声の主を探し振り返ると、そこには純白の布をゆったりと身に纏った美しい女性が立っていた。
「女神様……ですか?」
そう聞くと女神様は微笑みながら頷いた。
透明に限りなく近い透き通った美しさ。
あまりの神々しさに、感情や思考が吸い取られてしまいそうだ。
また女神の声が響いた。
『これをあなたに』
女神様が何かを手渡してきた。
私はそれを受け取る。
「これは……ブレスレット……」
私が言うと女神様はまた優しく笑った。
『これからも強く、優しくありなさい我が娘よ』
「……はい。……女神様」
そう答えた。
意識が遠くなる。
――チュンチュン、チュン
鳥の鳴き声が聞こえる。
目を少し開けると自分が寝室にいるのがわかった。
「朝か」
頭はもやもやとしてすっきりしないが、意識はしっかりある。
天恵は授けられた。
次話は明日(2017/2/17)に投稿します!
お楽しみに!
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