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創造の女神と子供たち  作者: オクトパス
第1章 女神の天恵
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第11話 マイア=レスナー


「わかりました。では三ヶ月を目途にこちらで護衛の任務に就かせていただきます。」

「すまん――、何もない村じゃが、食う寝るに関しては不自由させんでのぅ」

「そんなことないですよ。生まれ故郷がよく似た環境なのでなんだか落ち着くんです。何もなくともお世話になりたいぐらいです」

「ほっほっほ。お世辞の方の鍛錬も抜かりがないようじゃな」


 村長に合わせて私も笑った。


「いやいや。では、書状で結構ですので冒険者協会(ギルド)の方に申請をお願いします」

「うむ。ではこれからしばらくよろしく頼む。」

「よろしくお願いします」


 そう応え、村長が差し出してきた右手を握り返した。


「マイア、続けざまにすまない。派遣を依頼する魔導師についてなんだが、今構わないか?」


 村長との握手が解かれるとオートンが白紙の紹介状と羽ペンを手に話しかけてきた。


「ええもちろん」


 私は紙と羽ペンを受け取った。

 必要事項を記入しサインすると、オートンにそれらを返した。


「信用できる男ですし、これを見れば快く引き受けてくれることでしょう。」

「ありがとう。この先君が村にいてくれるのはとても心強い。しかも魔導師まで紹介してくれて感謝してもしきれないよ。」

「いいえ。不謹慎だとは思いますが、私にとってもありがたいお話です。余計なお気遣いはなさらないで下さいね」

「いやいや何を言う。何せ小さな村だ。十分なお礼もできないと思うが本当に構わないのか?」

「えぇ、実は――」


 このタイミングで私が村に来たことは、村にとってみれば渡りに船だったに違いないが、私にとっても願ってもいない幸運だった。

 つい先日パーティメンバーのコリンの両親が突然の事故で亡くなり、まだ幼い兄弟たちの動向を定めるために故郷に一度帰ることになった。

 話し合いの結果、パーティは一時的に休止してコリンの帰りを待つことに決まったのだ。

 私を含めて5人のメンバーは3ヶ月後の再会を約束してそれぞれ単独で行動していた。

 

 村長と約束した報酬は冒険者としてのそれとしてはいささか物足りないものではあったが、それでもよかった。

 お世辞ではなく故郷を感じさせるこの村に親近感が湧いていたのだ。


「――というわけです」


 かいつまんで今の身の上を正直に話した。


「そうか。お互い大変なときだったのだな。だがそういうことなら遠慮はいらない。アルザを第二の故郷だと思ってゆっくり過ごしてくれ。」

「ありがとうございます。誠心誠意努めますので、短い間ですがよろしくお願いします」

「こちらこそよろしく。まぁうちの村にも年頃の男がそれなりにいるからな。なんなら本当に第二の故郷にしてくれてもいい」

「な?! そ、それは、ど、ど、どういう意味ですか?!」

「そのままの意味なのだが……。田舎者は好みではないか……」


 オートンが事も無げに放った言葉にすっかり動揺してしまった。

 相手は昨日今日に知り合った仲ではない。

 軽口などではないという事が分かるだけに、適当にいなす事が出来なかった。

 まだまだ修行が足りないな。


「そ、それはまぁ、おいおい。任務が落ち着いたら考えさせてもらいます」

「そうか。わかった。では早速依頼文と紹介状を送る準備にかかるよ。あと、悪いが村の子供たちが集まっている。行って一声かけてやってくれ。きっと喜ぶと思う」

「わかりました。ではしばらくお世話になります」

「では」


 軽く挨拶を交わしオートンの背中を見送った。

 

 なんとなく目線を向けると、若い葉の茂る山の向こうに、澄み渡った空が薄い雲をゆっくりと運んでいるのが見えた。

 どこからか懐かしい匂いがする。

 

 さて、子供たちの待つ講堂へ向かうとしよう。

 私は「よし!」と気合いを入れ直した。



次回はいつもの3人の回です!

明日(2017/2/15)更新します!


ぜひまた読んでください!

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