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Poetry Verse Poems

ぽつ、ぽつ、ぽつり

掲載日:2014/01/23

 ぽつ、ぽつ、ぽつ。


 男が呆然と立っていた。


 さても慄然、呆然、いや、唖然。


 心が曇天の薄暗がり。


 この雨は、この心が降らせたもうた――


 上着の肩が、色が変わるほど雨滴の染み込んだ様相で。


 ただ、男は立っていた。


 さても泰然、憮然、いや、超然。


 元からそこにあるように。


 銅像がただ、あるように。


 男は一人、立っていた。


 ぽつ、ぽつ、ぽつ。


 ああ、雨が降る。


 男は気付いているのか。


 それとも。


 ああ、構うまい、この景色の中で、そこに立つ男は。


 高き天より降り注ぐ、雨。


 オーケストラの伴奏のごとく。


 男の感情は今や今やと昂っている。


 丁重に迎えよ。


 かの者の凱旋ぞ。


 濡れそぼつ身体にある一条の熱が宿る。


 振り下ろさんとするでもなく。


 ただ硬く握られた男の拳には、赤い雫が滲み行く。


 ぽつ、ぽつ、ぽつ。


 過ぎ行く人も、去り行く人も。


 さあ、寄って参れ見て参れ。


 ぽつ、ぽつ、ぽつ。


 さあ、導かれてやってきた。


 我を訪ねて黄泉の国。


 鋼の鎌を携えて。


 連れて行こうか黄泉の国。


 この気持ちに嘘はない。


 偽らざる楽園よ。


 今振り上げたるこの拳。


 たとえ頭蓋を割らんとも。


 さても渾然、依然、いや、陶然。


 業火に身を焼く、心砕く。


 その裏切りの代償は。


 真っ赤に咲いた、彼岸花。


 鏡に映る、その姿。


 瞳はまあるく、見開かれ。


 振向く刹那、悪戯に。


 連れて逝こうか、恋の路。


 裂くも乱れて、断末魔。


 ぽつ、ぽつ、ぽつり。


 雨が降る。


 真っ赤な真っ赤な雨が降る。


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