第四章2【琥珀の出所】
その日の夜。予定通り、ララ侯爵邸では、王配善治郎を迎える歓迎の夜会が執り行われていた。
出席者はララ侯爵家の面々と、近隣の貴族、そして領内の有力者たち。当然だが、天井から会場を照らすシャンデリアも、料理を乗せている皿やテーブルも、王宮のそれよりは格が落ちる。一つの例外もなく格落ちになっているのは、恐らくわざとであろう。
そんな中、目を見張るのが、会場で働いている侍女達の練度だ。こちらは、王宮二女と比べてもそん色ない。非常に鍛えられていることが分かる。
夜会のメインゲストとして紹介された善治郎は、その後、ララ侯爵家の家族と対面を果たしていた。
ちなみに、次期当主である長男とその妻子は、王都に詰めているのでこの場にはいない。他にも、成人している長女次女はすでに他家に嫁いでいるので、必然的にこの場で紹介されるのは、まだ年若い三女アイダと四女ロリタであった。
「お初にお目にかかります、ゼンジロウ様。ララ侯爵家が三女、アイダにございます」
「同じく、四女ロリタです。本日は、お目にかかり恐悦至極にございます」
ドレス姿の小さな淑女、二人の挨拶に善治郎は笑顔で片手をあげて答える。
「カープァ王国国王アウラ陛下が伴侶、善治郎だ。流石は音に聞こえたララ侯爵家の令嬢だな。堂に入った挨拶だ」
善治郎の返答は、定型通りのものであったが、その言葉はそのまま善治郎の素直な感想でもあった。
ララ侯爵家三女アイダは十七歳、四女ロリタは十五歳。この年頃で、言葉もドレスの捌き方も、これほど洗練されている少女は王宮でも見たことがない。マルケス伯爵夫人オクタビアや、アウベニス伯爵夫人ペルペトゥアといった、淑女のお手本とされる人間と比べても遜色なく見える。無論、それは見る眼があまり発達してない善治郎だからで、より厳しい目で見ればまた違った感想があるのだろう。
ともあれ、今回善治郎がララ侯爵領に飛んできた主目的は、この二人である。
善治郎は、特に時間をかけて若い淑女二人と会話を交わす。
「そうか、アイダは自分のドレスを自分で造っているか。私には女性の服飾はあまり分からないが、似合っていると思う」
善治郎の言葉に、三女アイダはにこりと笑う。
「ありがとうございます、ゼンジロウ様。でも、まだまだお母様からの合格はなかなかいただけないのですよ」
もっと精進しないと、とアイダは屈託なく笑った。
一般的に「自分でドレスを造る」という言葉の意味は、二種類ある。
一つは、文字通り自ら鋏と針をもってドレスを縫うという意味。もう一つは、布地の種類や色、ドレスの具体的な形のイメージを伝えて職人に作らせるという意味だ。
王都の場合、平民の女が「自分でドレスを造る」と言うと前者のことが多く、貴族の女が「自分でドレスを造る」と言うと、後者の意味が多い。
しかし、アイダは侯爵令嬢という飛び切りの貴族なのだが、どうもその言葉は、前者の意味も含んでいるようだった。
さすがに今着ているような公式の社交用ドレスは、職人に任せているが、自室でくつろぐ時用のドレスなどは、自ら鋏と針を手に持って作っているらしい。
「大したものだな。そう言えば、ガジール辺境伯家のルシンダ嬢も最低限針仕事の腕はなまらせないようにしている、と言っていたな」
思い出したようにそう言う善治郎に、アイダだけでなく隣に立つ四女ロリタもそろって頷く。
「辺境住みならば、その辺りは共通するのかもしれませんね。いざというとき、繕いも出来ないようでは、足手まといですから」
そう言って、四女ロリタははにかんだように笑った。この世界は、現代日本ほど物にあふれた世界ではない。特に、数年前まで行われていた大戦の真っただ中では、流通は滞り、畑は荒れ、人手も多くが戦場にとられた領地が多数存在したという。
そんな時は、領主の妻や娘も大事な労働力だ。最低でも、自分の身の回りのことは自分でできるようになっていなければならない。ガジール辺境伯家や、ララ侯爵家はそうした考えのようだった。
もちろん「馬鹿を言うな。職人まで戦場に取られないように差配するのが、貴族の役割だ」という価値観の家もある。どちらかが正しく、どちらかが間違っているという問題はない。
だが、四女ロリタはともかく、三女アイダは明らかに「辺境女の嗜み」というレベルではなく、服飾に多大な情熱を傾けているようだった。
「私、いずれこの国に流行を作り出してみたいのです」
そう言ってあまり豊かではない胸を張る三女アイダの目には、夢とも野心とも言える明るい色が見える。
「そうか。ならば、アイダは王都に出たいのか?」
善治郎がここに来た理由が、ガジール辺境伯家次期当主チャビエルの正妻として、アイダとロリタを推薦するためであることは、彼女たちも承知の上のはず。それなのに、このようなことを言い出すのは、ひょっとして三女アイダは、チャビエルとの婚姻にあまり乗り気ではないのだろうか?
そんな善治郎の懸念を、三女アイダは笑顔で否定する。
「いいえ、場所にはこだわりません。有利不利はございますけれど、どこからでも流行は発信できますから」
その言葉の裏の意味は、「ただし、どこに行っても服飾の流行発信は諦めない」と言ったところか。
おそらくは、それが善治郎からチャビエルへ伝わることを狙ったのだろう。
服飾に関することは、女が積極的に行っても何らおかしくはない趣味なのだが、それなりに金もかかるし、流行を広めようとすれば、社交界のようなものを定期的に開催する必要もある。
そのため、自分の妻子のそうした活動を歓迎しない男も珍しくはない。チャビエルがそういった男であることを、懸念しているではないか、と善治郎は推測した。
「なるほど、アイダにとっては大切なことなのだ。覚えておこう。ロリタにはそうしたこだわりはないのか?」
話を振られて四女ロリタは、小首をかしげてしばし眼が得た後、恥ずかしそうに目を伏せる。
「私はこれと言ってなにも……」
無趣味を恥じる妹の言葉に、三女アイダがフォローを入れる。
「ロリタは私と違って器用なんです。私が十歳で覚えたことを八歳で覚えてしまうくらいに。でも、そのせいか特定のことに執着があまり持てないみたいで」
「そんなことありません。私はお母様から合格を貰うのに必死なだけです」
姉の言葉に、妹はそう言ってはにかみながら俯いた。どうやら、三女アイダと比べると、四女ロリタは随分と引っ込み思案のようだ。
「では、ロリタは暇な時には何をしているのだ?」
通常ならば突っ込みすぎなことを、善治郎はあえて聞く。アイダとロリタは、チャビエルの婚約者候補として善治郎が送り届けるのだ。大げさな言い方をすれば、仲人のような責任感を暴走させている善治郎である。
そんな善治郎の思惑など知らぬ四女ロリタは、素直に答える。
「そうですね。活動期でしたら、中庭の芝生の上で日向ぼっこをするのが楽しみです」
「それは、本を読んだり、編み物をしたりするのか?」
「いえ、何も持たず」
「何も持たず」
「はい」
何も持たずに日向ぼっこ。それは本当に楽しいのだろうか? 他人の嗜好にとやかく言うのは良いことではないと理解している善治郎でも、内心首をかしげてしまう時間の使い方である。
「では、酷暑期は? 酷暑期に日向ぼっこは出来まい?」
「はい。酷暑期は、部屋の中で、水を張った桶に足を入れて、ぼうっとしています」
「ぼうっと」
「はい、ぼうっと」
「雨期は?」
「部屋の中から、雨の降る窓の外を見ています」
「ぼうっと、か?」
「はい、ぼうっとです」
ようは一年を通して、空き時間はぼうっとして過ごしているということか。それでいて、物覚えは早く、両親から命じれたことに対しては、卒なくこなすのだという。
人の指示に従うことに抵抗がなく、指示通りの仕事ができる能力があると考えれば、これはこれで辺境領主家の家内として得難い資質なのかも知れない。
『待機状態』。暇があればぼうっとしているという四女ロリタの言葉に、善治郎はそんな言葉がつい頭をよぎるのだった。
◇◆◇◆◇◆◇◆
二日後。
前日三女アイダ、本日四女ロリタを無事、王都へ『瞬間移動』させた善治郎は、その後自らにも『瞬間移動』をかけて、王都へ帰還を果たした。
元々の予定では、侍女イネス、侍女マルグレーテ、騎士ナタリオの三名も『瞬間移動』で帰国させる予定だったのだが、善治郎の滞在期間を短くするために、取りやめた。
幸い、三人とも野外活動にはそれなりに慣れている。ララ侯爵領領都と王都の距離はそれなりに離れているが、国内だ。多少時間はかかっても、危険はまずないだろう。
ともあれ、王宮に帰還を果たした善治郎は、石室に詰めている兵士を通して女王アウラに帰還の報告を入れた後、一休みして王宮へと向かう。
善治郎が向かった王宮一室で待っていたのは、ガジール辺境伯家長女ルシンダだった。先に飛ばしたララ侯爵家の三女アイダ、四女ロリタに言伝を頼み、予定を変更して今日善治郎も帰還することを伝えていたのだ。
そのため、こうして無駄なく移動したその日から仕事を再開できる。
「ゼンジロウ様、無事のご帰還、何よりでございます」
立って自分を迎えてくれるルシンダに、善治郎は軽く片手をあげて答えると、対面ソファーに腰を下ろし、ルシンダにも座るよう促す。
「ありがとう、ルシンダ。初めてのお役目だったが、どうにか無事果たすことが出来て、ホッとしているところだ」
地方から王都へ人を『瞬間移動』で飛ばす。終わってみれば難しいことはなかったが、成功させるまでは中々に緊張する仕事だった。今後は、同じような仕事が増えるのことが予想される。慣れていかなければならないだろう。
「アイダ、ロリタとの顔合わせはまだなのか?」
善治郎の言葉に、ルシンダは首肯する。
「はい。お二人とも、王都の生活に慣れるまではしばらく時間がかかるでしょうから。頃合いを見て、私の方が小規模な昼食会か何かにお二人を招待しようと考えております」
歯に衣着せぬ言い方をすれば、まずは親族であるルシンダが、嫁候補の品定めをするということだ。
ルシンダもララ侯爵とララ侯爵夫人の噂については聞き及んでいる。先の大戦の英雄と、その妻であり、女王アウラの乳母ある女。両者が推薦する娘を信頼しないわけではないが、世の中には相性というものがある。向こうにとっては自慢の娘でも、こちらにとっては遠慮したい妻ということは往々にありうるのだ。
「分かった。レガラド子爵家の娘も、一時的に後宮からの外出許可を出しておく。そちらもよろしく頼む」
「承知いたしました」
ルシンダは、落ち着いた声でそう答えた。
そうして、善治郎とルシンダが話し合いを続けていると、コンコンと部屋の扉がノックされる。
「なんだ?」
問う善治郎の声に、扉の向こうから兵士の声が返る。
「フランチェスコ殿下が面会を申し込んでいます。ボナ殿下もご一緒です。お通ししてよろしいでしょうか」
善治郎は思わず対面に座るルシンダを見る。ルシンダも目をパチパチとさせて、首を横に振る。どうやら、ルシンダにも話は通っていない、正真正銘の突発性アポなし突撃のようだ。
まあ、フランチェスコ王子の場合、特に珍しいわけではないし、彼がなぜそのような行動に出たのかも、理解はしている。幸いと言っては失礼だが、ルシンダとの対話も大事な部分についてはすでに終わっている。
「ルシンダ、聞いての通り急用が入った。本日はここまでにさせていただきたい。この埋め合わせは後日させてもらう」
「はい。お気になさらずに」
善治郎の言葉に、ルシンダは小さく笑ってそう返す。プジョル将軍とニルダ・ガジールの結婚式の装飾品と結婚指輪を担当したことで、ルシンダも、フランチェスコ王子、ボナ王女とはそれなりに面識を持つようになっている。
そのため、フランチェスコ王子とボナ王女の人となりについても、一通り理解している。
「それでは、私はこれで失礼いたします」
「ああ、手を」
「ありがとうございます」
善治郎はソファーから立ち上がるルシンダに手を貸すと、出口までエスコートした。
その十数分後。同じ部屋、同じソファーに座る善治郎の対面には、金髪の王子と、栗色の髪の王女が座っていた。
「いやあ、突然押しかけてすみません」
「申し訳ございません、ゼンジロウ陛下」
相変わらず悪びれずに笑うフランチェスコ王子の隣で、こちらも相変わらず恐縮仕切のボナ王女が体を小さくしている。
「流石に慣れましたよ。それで、ご用件は?」
いかに双王国の王子とはいえ、非常に礼儀を逸した行為であることは間違いないため、「お気になさらず」とは言えない。それでも言動から、善治郎が気にしていないことは伝わるため、ボナ王女は少しだけ肩の力を抜く。一方、元凶たるフランチェスコ王子は元から気にもしていない。
「なんでもゼンジロウ陛下は、特別な石を手に入れてくださったとか?」
満面の笑顔でそう言ってくる。それは、フランチェスコ王子からの緊急の面会希望が来た時点で、予想していた言葉だった。だから、最初からこの場にその石は持ち込んでいる。
「耳が早いですね」
確かに特別隠していたつもりはないが、善治郎が今日『瞬間移動』で王宮に持ち込んだ物の情報を、どうしてフランチェスコ王子が知っているのだろうか?
若干の疑問を抱きつつも、善治郎は後ろに控えていた従者に指示を出し、小さな箱をテーブル上に乗せる。
長方形の箱の蓋を取り、中が見えるようにすると、フランチェスコ王子だけでなく、隣に座るボナ王女もその目をらんらんと輝かせた。
「それは、琥珀ですね」
「凄い、綺麗……なんて濃厚な金色……」
フランチェスコ王子の声に、ウットリしたボナ王女の声が重なる。ボナ王女の反応からすると、この琥珀はかなり良いもののようだ。
「どうですか? フランチェスコ殿下。装飾油灯の『目』に使えそうですか?」
善治郎の言葉に、フランチェスコ王子は即答せず、滅多に見せない真剣な面持ちで言う。
「手に取ってみてもよろしいですか?」
「どうぞ」
「失礼します」
すっと小箱を引き寄せたフランチェスコ王子は、服のポケットから白い布製の手袋を取り出すと、それをしてから琥珀をその手に取った。
「…………ゼンジロウ陛下。この琥珀の産出地、分かりますか?」
滅多に見せないフランチェスコ王子の真剣な面持ちに若干圧力を感じながら、善治郎は考える。出所はほぼ間違いなく仮想敵国であるトゥカーレ王国。少々不穏撫で出所であるが、それを特別隠しているわけではない。元々フランチェスコ王子に渡して、結婚式の装飾油灯に使ってもらうつもりなのだから、何かあるとしたらフランチェスコ王子に隠しておいた方が害は大きいだろう。
そう結論付けた善治郎は、素直に打ち明ける。
それを聞いたフランチェスコ王子は、顎に手を当てて考え込む。
「なるほど。トゥカーレ王国ですか。私は南大陸大陸西部にはそこまで詳しくないのですが、トゥカーレ王国は琥珀の産地でもあるのですか?」
フランチェスコ王子の問いに、善治郎はオクタビア夫人との講義を思い出しながら答える。
「殿下もご存知の通り、トゥカーレ王国の血統魔法は『解得魔法』ですから、あの国は多種多様な鉱物資源を誇ります。断言はできませんが、琥珀もその中の一つであっても何らおかしくはないかと」
「そうですか……」
「どうしたのですか? フランチェスコ殿下?」
なおも考え込むフランチェスコ王子に、ボナ王女がいぶかし気に声をかける。
フランチェスコ王子は、一粒の琥珀を手袋をした右手で掴んだまま、首を横に向けると、
「ああ、ちょっと気になってね。ボナはこの琥珀に見覚えはないかい? 見た目だけで分からないなら、その手で持ってみると良い」
「見覚えですか? ゼンジロウ陛下、私も失礼します」
そう断ると、ボナ王女も手袋をしてもう一つの琥珀をその手で掴む。そして、その感触に目を見開いた。
「……硬い? なんですか、これ? これ本当に琥珀?」
鍛冶、彫金を通して宝石、貴金属を刻むことに熟練しているフランチェスコ王子とボナ王女は、その手で掴んだだけで、対象の硬度をある程度把握できる。元々琥珀というのは、宝石の中では比較的硬度の低い石だ。しかし、この琥珀は明らかに硬かった。
驚きを隠せないボナ王女に、フランチェスコ王子が先ほどよりは少し柔らかくなった口調で言う。
「琥珀で間違いないよ。ただ、通常の琥珀よりも圧倒的に硬度が高い。重さも若干重いかな。そして、この濃厚な黄金色。私はこれとよく似た琥珀に見覚えがあるんだけど、どうやらボナは見覚えがないみたいだね」
フランチェスコ王子に言葉に、ボナ王女は首肯する。
「はい。これほど見事な琥珀、一度でも見ていたら忘れているはずありません」
断言するボナ王女に、フランチェスコ王子は一度頷くと、視線を対面に座る善治郎に戻し、口を開く。
「シャロワ王家に伝わる秘法の一つ。『封竜石』と呼ばれる宝石に酷似しています。この濃厚な黄金色も珍しいですが、それ以上にこの琥珀にはあり得ないほどの硬度は、正直『封竜石』と同じ鉱脈から掘られたとしか思えません」
「……その『封竜石』の出所はお聞きしても良いでしょうか?」
善治郎の問いに、フランチェスコ王子はいつもの軽い笑みを取り戻し、答える。
「先祖がこの南大陸に来る前から、所持していた物の一つと伝わっています」
つまり、北大陸産ということだ。
フランチェスコ王子の説明は続く。
「北大陸では、知恵ある古代竜を信仰する教えが広まっていることは、ゼンジロウ陛下もご存知でしょう。その教えの一つに、知恵ある古代竜の一柱が、自らの身を琥珀で覆い、来るべき時まで長き眠りについている。というものがあるのですよ」
その手の、何らかの形でこの世界に残っている知恵ある古代竜の話は、非常に多く残されているという。当然その大半が、ただのおとぎ話だ。フランチェスコ王子もその話自体を信じているわけではない。
「まあ、シャロワ王家に伝わる琥珀が、本当に知恵ある古代竜を封じていた琥珀の欠片だとはさすがに信じていませんけれどね。文献から見ても、『封竜石』は、我々が北大陸にいた頃から所有していた石であることは確かだと思います。
となりますと、私の目が確かなら、この二粒の琥珀は、北大陸で産出された者なのではないか、と」
無論、別な鉱脈からよく似た色合いの琥珀が見つかることもあり得ないことではない。しかし、宝飾品にはうるさいフランチェスコ王子がここまで「酷似している」と断言する以上、無視も出来ない。
「分かりました。申し訳ありませんが、少々こちらでも調べさせてもらいます。お返し願えますか?」
「あ?」
「え?」
善治郎の言葉に、琥珀を手に持っていた王子と王女は、反射的にその手の中にギュッと琥珀を握り隠すのだった。




