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理想のヒモ生活  作者: 渡辺 恒彦
二年目
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第三章2【愛息の笑顔、愛妻の笑顔】

 その日の夕刻過ぎ。


 善治郎とアウラは、後宮の一角に設けられている、愛する息子、カルロス・善吉・カープァ、通称、カルロ=ゼン王子の部屋で鉢合わせていた。


 王宮での業務を終えたアウラが、真っ直ぐ我が子の所に向かうのは、いつものことだが、そこに善治郎がいるというのは、かなり珍しい。


 こう言うと、母であるアウラに比べて、父である善治郎の我が子に対する愛情が乏しいように聞こえてしまうが、そんなことはない。


 カープァ王国における母国語である『南大陸西方語』を話せない善治郎は、初期習得言語に混乱を来さないため、王子の前で言葉を発することを禁じられているのである。


 いくら気をつけていたとしても、長時間接していれば、ついつい我が子に話しかけたくなるのが、人情というものだ。そのため、長時間息子の部屋に滞在することを善治郎は、涙を呑んで遠慮しているのである。


「…………」


 無言のまま、善治郎は、愛息の部屋を見渡す。


 広さは、せいぜい八畳間くらいだろうか? 後宮の一室としては、特別に狭い。


 というのも、本来はもっと広いはずの部屋を、木製の衝立を立てて、わざと狭くしているのである。無論、ゆえあっての事だ。


 本来ならば広いはずの部屋を、なにゆえわざわざ手をかけて狭めるのか?


 その理由は、この部屋に一歩でも足を踏み入れれば、理解することが出来るだろう。


 涼しい。いくら日が落ちたとはいえ、まだまだゆうに三十度はあるはずなのだが、この部屋だけ明らかに五度以上気温が低く感じられる。


 その理由は、部屋の隅に設置されている大きな『氷塊』と、その前で一生懸命大きな団扇を動かしている若い侍女にある。


 人力でおこされた風は、氷塊を舐め、部屋全体にその冷気を漂わせる。もちろん、乳幼児であるカルロ=ゼン王子に、直接風を吹きかけるのは、逆に体調を崩す可能性があるので、行わない。


 氷を大きな団扇で扇ぐことで、室温自体を下げる。その効率を少しでも高めるための、部屋の衝立だ。部屋が広ければ、それだけ氷による温度低下の効果が下がってしまう。


「あ、このままで失礼します、ゼンジロウ様」


「…………」


 善治郎は、団扇を動かす手を止めないまま、そう挨拶をしてくる侍女に、無言のまま、小さく頷くことだけで、彼女の労を労う。


 一定時間の交代制とはいえ、休まず団扇で扇ぎ続けるというのは、結構な重労働だろう。


(延長コードがここまで伸びれば、扇風機もこっちに持って来てあげられるんだけどな)


 侍女の労を思い、そんなことを考える善治郎であったが、実のところ、そんなことをしたら、侍女は、さぞかし嘆き悲しむことだろう。


 実はこの、氷を扇ぐ係というのは、今現在後宮侍女達の中で、もっとも競争率が高い人気職の一つなのである。


 氷を団扇で扇ぎ続けるというのは、確かにそれなりの重労働だが、どのみち侍女の仕事など、どれもこれも皆ある程度重労働であることに変わりはない。


 ならば、氷の側で冷気を満喫できるこの係は、他の仕事より人気があるのも当然と言える。少なくとも、炎天下の庭で芝を刈ったり、厨房の窯の前で火力が一定になっているか見張り続ける係と比べれば、『天国』と言っても過言ではない。


 善治郎がそんなことを考えている間に、アウラは、我が子の眠る寝台に近づくとソッとその中をのぞき込む。


「……ファア?」


 カルロ=ゼン王子は、母であるアウラがのぞき込んだのとタイミングを合わせるように、パチクリとその大きな瞳を開いた。


「む? なんだ、起きていたのか、カルロス」


 愛らしい我が子の寝顔をのぞき見ることに失敗したアウラは、少し不満げに口を尖らせる。


「ええ。先ほど眼を覚ましたところです。今はご機嫌のようですね」


 そう言って朗らかに笑う乳母の目元には、薄く隈が滲んでいる。


 恐らく、この乳幼児の王子様は、昨晩も盛大に夜泣きをして、乳母の睡眠時間を大幅に削ってくれたのだろう。


 こうした乳母の苦労を見るたびに、女王である自分は、母としての責務を十全に果たすことは不可能なのだと、思い知らされる。


 だからこそ、こうして我が子と接触する時間を大切にしなければならない。


「抱き上げても、大丈夫か?」


 我が子をこの手に抱くのに、乳母の許可を得なければならないというのも少し情けないが、現状我が子のことは、生みの母である自分より、育ての母である乳母の方が精通しているのだから、意地を張っても仕方がない。


「はい、もちろんですとも、陛下。ささ、殿下にお母さんの温もりを与えてやって下さいまし」


「うむ」


 乳母の言葉を受けて、アウラはソッと両手をカルロ=ゼン王子の頭と身体の下に入れ、慎重な手つきで、この上ないくらいに暖かくて柔らかな生き物を抱き上げる。


「アアァ!」


抱き上げられた赤子は、母親の腕の中で楽しげに笑い声を上げると、そのプクプクとした両手をアウラの顔に向けて延ばす。


「ふふふ、どうした、カルロス? なんだ、その手は?」


 日頃の気の強さはどこへやら、『だらしがない』と表現したくなるくらいにとろけた顔つきで、女王は我が子の手に顔をくっつけるように、首を倒し、抱いている子の身体を顔に近づくように抱き寄せる。


「ダア、ダア、アア」


 アウラの指二本よりまだ小さい、王子の手の平が、アウラの顔をペタペタと撫でる。


「ふ、ふふふ、なんだ、ん? こら、くすぐったいぞ」


「ア、ア、ダアア」


 見ているだけで思わず笑みがこぼれるくらいに、微笑ましい母と子のふれあい。


 それまで黙って見ていた父親が、我慢の限界が来たかのように、母子へ歩み寄り、口を開く。


「善吉、パパだよー」


 善治郎の口からその出た言葉は、『南大陸西方語』である。


 こちらの世界に来てから一年間、それなりにこちらの世界の文字を学んだ善治郎は、多少は『南大陸西方語』を操ることが出来るようになっている。


 操ることが出来る、と言ってもせいぜい「平均的な日本の中学三年生の英語力」程度のものだが、それでも、何百語かは、善治郎の頭の中に収まっている。


 その中でも、今口にした「パパだよ」という言葉は、唯一アウラや、家庭教師のオクタビアから、「発音も含めて問題なし」、のお墨付きをもらった言葉である。


 それ以外の言葉は、今のところ、「意味は通じるが訛りがきつい」ということで、カルロ=ゼン王子の前で、発声する許可は下りていない。


 そのため、善治郎は、我が子に対する思いの全てを、その短い言葉に込める。


「善吉、パパだよー」


 そう言って善治郎は、顔の横で両手をヒラヒラさせ、おどけた表情で我が子の顔をのぞき見る。


「ファ? ファア、ファア!」


 その変顔が面白かったのか、それともヒラヒラ動く手の指に興味を持ったのか、息子の視線は母親から父親へと移行する。


「む……」


 面白くないのが、アウラだ。愛する夫とはいえ、我が子を前にしたときだけは、その小さな天使の視線と笑顔を奪い合う、ライバルである。


「ほらほら、カルロス。こっちを向け。んん、カルロスはママが一番好きなんだもんなぁ?」


「ダア、ダア」


 ユラユラと抱いている我が子をゆすり、話しかけ、半ば強引に注意を自分へと戻す。


「ふふん」


 我が子の関心を引き戻した女王は、善治郎に挑発的な視線を投げかけ、勝ち誇るように笑う。


 流石にこれには、善治郎も少し、ムッとしたようだ。アウラの挑戦を受けるように、善治郎も今一度、我が子に近づき、声をかける。


「善吉、パパだよー」


 しかし、悲しいことに、善治郎の発することが許されている言葉はそれだけだ。


「カルロスは、ママが大好きなんだよー。パパは二番目なんだよー。パパもそれでいいよねー?」


 勝手な事を言うママに、パパは一生懸命首横に振り、言う。


「善吉、パパだよー」


 必死の形相で首を横に振る善治郎を、アウラはニヤニヤと人の悪い笑みを浮かべつつ、


「どうしたのかなー? 違うなら違うってはっきり言ってくれないとわからないよー、ねー、カルロスー?」


「善吉、パパだよー!」


「うわあ、大きな声だなあ、カルロスがびっくりしちゃうよー。怖いよ-、パパ、怖いよー」


 むきになる善治郎に、アウラは、必死に笑いをかみ殺しながら、胸に抱く王子を善治郎の視線から遠ざけるように、クルリと背中を向ける。


 よく見ると、横で椅子に座っている乳母も、部屋の隅で団扇を動かし続けている侍女も、笑いをかみ殺して、プルプルと肩をふるわせていることに気づくが、今はそんな外部の視線を気にしている場合ではない。


 アウラにからかわれていることは承知しているだろうに、すっかりムキになった善治郎は、ドタドタと、アウラの前へと回り込むと、


「善吉、パパだよー!!」


 今日一番の大声を上げる。


 素早い回り込み、必死の形相、そして今日一番の大声。


 三つの要素が組み合わさった結果は……。


「フ……フ……フエェエエエ!」


 愛するわが子の号泣であった。






 ◇◆◇◆◇◆◇◆






「プクククク……!」


「アウラ……笑いすぎ……」


 リビングルームのソファーの上、笑い続けるアウラに、対面に座る善治郎は憮然とした表情で窘める。


「す、すまぬ。だが……だ、駄目だ。カルロスに泣かれたときの、そなたの情けない顔を思い出したら……が、我慢が、フハハハ!」


「…………」


 目尻に涙を溜めて笑い転げている妻から、善治郎はプイと不機嫌そうに視線を逸らす。


 どうやら、これは何を言っても無駄なようだ。


 最愛の息子を泣かせてしまったあの場をアウラと乳母に任せて、逃げるようにしてリビングルームに戻ってきた善治郎は、しばらく一人で落ち込んでいたのだが、少し遅れて戻ってきたアウラは、部屋に入って来るや否や、この状態だ。


 ソファーに突っ伏して、バンバンと手を叩きながら、笑い続ける妻の姿は、まあ率直に言って、あまり愉快なものではない。


 珍しく、ちょっと悪い目つきで笑い転げる妻を見下ろしつつ、善治郎は低い声で最終通告をする。


「アウラ、ねえ、そろそろ、そのへんにしとこうか?」


「フハハハ、わ、分かった。今、やめる……む、無理だ、アハハハハ!」


 どうやら、善治郎の最終通告は、事実上無視されたようだ。


 仕方がない。最終通告を無視された以上、残るは『実力行使』のみである。


「…………」


 無言のまま、立ち上がった善治郎は、アウラが笑い転がるソファーへとゆっくりと近づき、


「ええい! そんなに、笑いたいなら、もっと笑わせてやる!」


 倒れ込むようにして、アウラに覆い被さった。


「ちょっ、ゼンジロウ!?」


「この、この、この!」


 隙を見て、アウラの上に覆い被さることに成功した善治郎は、そのままその両手でアウラのウエストや、脇の下をコチョコチョと擽る。


「ひっ!? ちょっ、ヒャ、ヒヒヒヒヒ、だ、駄目……!」


「うり、うり、うり」


 体力的には、アウラが勝っているはずなのだが、体勢が悪すぎるのか、アウラはソファーに押し倒されたまま、善治郎にひたすらいいように擽られ続ける。

 

「アハハハ、ま、待て、やめ、ファヒャハアハハ!」


「ほれ、ほれ、ほれ」


 段々と、善治郎も楽しくなってきたのか。王子の私室とは立場を逆にしたかのように、少し意地の悪い笑みを浮かべつつ、両手でなおも激しく愛妻の身体をあちこちと擽っていく。


 ウエスト、脇の下、内もも、首筋、足の裏。さらには、脇の下から身体の正面にずらしたポイントや、ウエストから少し下の身体の裏側あたりも、どさくさ紛れに、目一杯堪能する。


「ヒ、や、め……!」


「フヒヒヒヒ、ういやつ。よいではないか、よいではないか」


「ちょ! そなた、最初と趣旨が変わっとらんか?」


 結局、その夫婦のじゃれ合いは、浴室担当侍女が、入浴準備完了の報せを持って来るまで、熱く、仲睦まじく続いたのであった。






 ◇◆◇◆◇◆◇◆





 一日の汚れと汗を浴室で流してきた、善治郎とアウラは、いつも通り、ラフな夜着姿でリビングルームへ戻ってくる。


「まったく、確かにカルロスの前でそなたをからかいすぎたのは、私だし、その後、大いに笑ったことも悪かった。しかし、あれはないぞ。擽るだけならばともかく、今は王としての責務がある故、次の子を宿すことは厳しいと言っておいたのに、あのような……」


「いや、ちょっとした冗談だったんだけど」


「……そなたは、冗談で女の肩紐をほどくのか?」


「嫁さん限定で、たまには」


 和気藹々と言い合いながら、戻ってきた二人は、珍しくリビングルームのソファーに腰を落ち着けることもなく、そのまま真っ直ぐ寝室へと足を向ける。


「まったく……まあ、よい。それでは、見せてもらおうではないか。成功したのであろう? そなたが前から言っていた『エアコン』とやらの設置に」


「うん、まあ、一応ね。今のところは、問題なく稼働している、と思うんだけど」


 アウラの言葉に、自信なさげな表情で、善治郎はそう答えると、寝室のドアに手をかける。


 ほぼ一日を費やし、どうにか設置作業を終えたエアコン。試しに稼働したときには、問題なく冷風を吐き出してくれていたので、そのまま電源を入れたまま、にしておいた。


 そして、その後はまだ、一度も寝室ドアを開けていない。


「ずっとかけっぱなしにしておいたからね。期待通りに動いてくれていれば、今頃は」


 寝室のドアに手をかけたまま、目を瞑った善治郎であるが、一つ深呼吸をすると、祈るような表情で、勢いよくドアを引き開ける。すると、


「……よっし!」


 ドアの向こうからは、善治郎の希望通り、酷暑期のカープァ王国にはあり得ない、ヒヤリとした空気が流れてきたのだった。







「これは、たいした物だな。照明や冷蔵庫を始めて見た時も驚いたものだが、この衝撃はそれに勝るぞ」


 夫婦共用のキングサイズベッドに腰を下ろしたアウラは、設置されたばかりのエアコンから吹き下ろす冷風に、両手をかざし、感嘆の言葉を漏らす。


 湯上がりの火照った身体に、エアコンの冷風が心地良い。


「ふう……」


 あごを撫でられた猫のように眼を細めるアウラであったが、ふと隣に腰を下ろす夫の表情が今一さえないことに気づく。


「どうした、ゼンジロウ? 浮かぬ顔をして、なにか不満があるのか?」


 隣からこちらの顔をのぞき込む愛妻に、善治郎は少しばつが悪そうに頭をかくと、


「ああ、うん。まあ、正直言えば、まだまだ不完全なんだよね、これ。エアコンのパワーに比べて部屋がちょっと大きすぎるし、木戸を閉めても機密性が低いせいであっちこっちから、熱気が入って来るし。


 今は夜だから、結構涼しくなってるけど、隙間から日光も入ってきちゃう昼間は、期待したほど涼しくならなそうなんだよね」


 そう言って、溜息をついた。


 一度目のチャレンジで、エアコンを稼働状態まで持って行けたのは幸運以外のなにものでもないが、それでもやはりエアコンの恩恵は、現代日本の住宅事情と比較すると低いと言わざるを得ない。


 善治郎が持ち込んだエアコンは、一般家庭用としては最大サイズの二十三畳用であるが、この寝室は最低でも三十畳はある。


 しかも、先ほど言った通り、カープァ王国の建築物は、気密性が低い。


 これでは、今のような夜はともかく、昼間の四十度を超えるような酷暑の日には、太刀打ち出来ない気がする。


「それは、流石に贅沢が過ぎるのではないか?」


 ちょっと驚いたように眼を丸くするアウラに、善治郎は苦笑を返す。


「うん、まあ、そう言えばそうかも知れないけど、やっぱりエアコンの設置されている部屋は、『別世界』ってくらいに涼しいイメージがあるんだよね。


 それに、最大の問題がまだ残っているし」


「最大の問題?」


 問い返す妻に、善治郎は一つ頷くと、頭上で活動中のエアコンを下から睨みあげる。


「うん。果たして、今回のエアコンの設置が、「本当に成功したのか?」っていう問題。確かに今のところは、変な異音や液漏れもないし、普通に稼働しているように見えるけど。


 聞いた話では、無理のかかる取り付け方になっていて、徐々に負担が積み重なっていった結果、何日か後に停止、ってパターンが結構多いらしいんだよね」


 そうなれば、修理をするためには、その数日分、『時間遡航』の魔法で遡らなければならないことになる。


 それは、流石にアウラに『お願い』できる領域を超えている。その場合には、もうエアコンは、完全に諦めるしかないだろう。


(かすかな望みは、将来的に俺が『時間遡航』と『未来代償』を覚えてから、自分で直す可能性くらいかな)


『未来代償』とは、こちらも時空魔法の秘術の一つだ。


 簡単に言えば、明日、明後日といった未来の自分の魔力も纏めて支払うことにより、最大魔力量を超える魔法の発動を成功させるという荒技である。


 使えば当然、支払った期間の間、全く魔法を使えなくなるので、間違ってもアウラは、使用できる魔法ではないが、基本的に戦力外である善治郎ならば、使うチャンスはある。


 無論、善治郎が魔法を使えるようになったあかつきには、善治郎の魔力も『国益のため』、国で運搬するように組み込まれる可能性が高いので、そう気楽には使えない可能性が高いだろうが。


 なにせ、善治郎がその魔法を使えるようになるのは、もっとも楽観的に見積もっても来年の話だ。その時点で、エアコンを設置前の状態に戻したければ、『一年』近く時間を巻き戻さなければならない。


 それだけの長期間の巻き戻しとなると、『未来代償』で数ヶ月単位の魔力を支払う必要があるだろう。いかに自分の魔力とはいえ、王族という立場を考えれば、自分の我が儘で使ってよい領域を超えている気がする。


「まあ、考えてもしょうがないか。今のところは、問題なく動いてるんだし、しばらくはエアコンの恩恵を満喫するかな」


 割り切ったようにそう言う善治郎に、アウラはコクコクと頷き、同意を示す。


「うむ、そうだな。それにはまず、明日にでもこの寝室に、椅子とテーブルを搬入させよう。朝食や、昼の団欒を今のように、ベッドの縁に腰を掛けて済ませるのは、いささか行儀が悪いだろうからな」


「アウラ……生活の拠点を、リビングから寝室に移す気、満々だね」


 予想以上の喰い付きを見せる愛妻に、善治郎は思わず苦笑を漏らした。

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