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理想のヒモ生活  作者: 渡辺 恒彦
一年目
23/101

幕間3【それぞれの思惑】

 善治郎の社交界デビューが決まった数日後、王宮を後にしたオクタビアは、王宮にほど近いマルケス伯爵家の王都屋敷を訪れていた。


 白い大理石のような石材をふんだんに使い、アーチを多用したその建造物は、素人が一見しただけで分かる、王宮と同時代の建造物である。

 王宮と同時代から存在する、王宮に極めて近い位置に立つ本屋敷。

 その存在は、マルケス伯爵家の王国における立ち位置を端的に示していると言える。


「ここで止めてください。少し歩きます」


 二頭立ての立派な竜車で屋敷の門を潜ったオクタビアは、竜車の中から御者席に座る従者達にそう声を掛ける。


「畏まりました」


 護衛を兼ねている中年の御者は、そう短く答えると、慣れた手綱さばきで静かに竜車を止めた。


「足元にお気をつけ下さい、オクタビア様」


「有り難う、貴女もね」


 オクタビアは、年若い侍女に手を取ってもらい、竜車から降りる。

 今は一年の中で一番暑い季節だ。攻撃的なまでの日差しに思わず眼を細めるオクタビアであったが、門の内側は外と比べると五度以上気温が低い。

 庭のあちこちに水を湛えた人工池を設置し、水面から屋敷向かって風が流れるように、樹木を植えている影響だ。

 現代日本人ならばともかく、カープァ王国生まれのカープァ王国育ちであるオクタビアにとっては、不快に感じるほどの気温ではない。


 オクタビアは、前後左右を腰に剣を下げた護衛と、お付きの侍女に固められていることをごく自然に受け入れた様子で、門から屋敷正面入り口までの短い道のりを、静かに歩み進む。


 門から入り口までの道は、照り返し対策として赤茶色の石畳が敷きつめられており、その両わきには色鮮やかな花をつけた南国風の樹木が立ち並んでいる。ハイビスカスを思わせるような赤や黄色の大きな花だ。

 カープァ王国の色彩は、自然物に限らず華やかなものが多い。

 オクタビアが今着ているロングドレスも、光沢のある明るい青色だ。形こそ身体のラインをあまりあらわにしない落ち着いたものが、その色合いは現代日本人の感覚で見れば『派手』と呼ばれる部類に入るだろう。少なくとも、オクタビアのような二十代中盤近くの既婚者が日常的に着る服ではない。


 やがて、オクタビアが屋敷の正面入り口までやってくると、大きな両開きの扉はオクタビアが何か言う前に、ゆっくりと内側から開かれる。


 扉の向こうでは、ドアを押し開けた屈強な男二人と、上品な初老の男が立っていた。


「お帰りなさいませ、オクタビア様」


 いつもと変わらぬ落ち着いた声で迎えてくれた王都屋敷の老執事に、年若い伯爵夫人は笑顔で答える。


「ただいま、セルリオ。あの人は、いつもの部屋ですか?」


「はい。お館様は、二階でお待ちです」


「そうですか。では、着替えて埃を落とした後、すぐに向かうと伝えて下さい」


「はっ、畏まりました」


「よろしく、お願いします」


 恭しく一礼する老執事を労うように、オクタビアはフワリと笑うと、侍女を引きつけて軽い足取りのまま、屋敷の奥へと消えていった。







 それから約半時間後。オクタビアは屋敷の一室で、夫であるマヌエル・マルケス伯爵と半月ぶりの対面を果たしていた。


「お帰り、オクタビア」


 年期を感じさせる木製の椅子から立ち上がったマルケス伯爵は、両手を広げて、二回り年下の愛妻を迎える。


 マルケス伯爵は、恰幅の良い中年貴族である。

 年の頃は、四十代の中盤から五十代の前半くらいだろうか? 背はあまり高い方ではない。百七十二センチの善治郎と並んでも、恐らくほとんど差がないだろう。腹回りは年齢相応に太くなっているが、短く切り揃えられた頭髪と、綺麗に整えられた口ひげが、艶やかな黒色を保っているためか、実年齢より若く見える。


「お久しぶりです、あなた」


 飾らない素の笑顔を夫に見せたオクタビアは、そのまま軽く抱擁を受ける。恰幅の良い夫と、華奢で小柄な妻はしばし抱擁をした後、部屋の隅に設けられた席に向かい会う形で腰を下ろした。


 窓から差し込む日差しは相変わらずの暑さだが、窓の下には流れのある水堀が設けられているため、部屋を吹き抜ける風は意外と涼を運んでくれる。


 恰幅の良いマルケス伯爵は、侍女に持ってこさせた冷茶で喉を潤すと、少し真面目な表情で、話し始めた。


「ご苦労だったね、オクタビア。急な依頼ですまなかった」


「いえ、尊きお方の教育役という大任を仰せつかったのですもの。お礼を言うのは私の方ですわ」


「そうか。うん、そうだね」


 相変わらず、毒気の欠片もない妻の返答に、マルケス伯爵は表情を取り繕うことなく苦笑を漏らす。

 一般に上流社会の女は、言葉と表情を取り繕うことに長けているというが、この年若い後妻は、数少ない例外だ。もし、彼女の言動が全て演技だったとすれば、マルケス伯は深刻な女性不信に陥るだろう。


「それで、ゼンジロウ様はどのような方だった? お前の忌憚ない意見を聞かせてくれ」


「はい、とても感じの良い方でした。学習意欲も高く、人間的にも信頼の置ける方だと思います」


「ふむ、なるほど」


 マルケス伯爵はいちいち頷きながら、しばらくの間、妻の口から女王の伴侶の人となりについて聞き出した。


 オクタビアの人物鑑定眼は、「人が良すぎる」という欠点を除けば大方信頼が置ける。彼女が言う美点を十分の一ぐらいにさっぴき、欠点を十倍くらいに拡大して考えれば、おおよその人物像は想像が可能だ。


 オクタビアの言を、マルケス伯爵なりに翻訳すると、どうやらゼンジロウという男は、「甘いくらいに下の者に寛容」で、「覇気や向上心といった、男らしい美徳は欠片も無く」、「自分の置かれている立場を理解できる程度の知能はある」人間ということになる。


 正直、王家にちょっかいをかける足がかりとしては、あまり適当ではない人格である。

 野心がなく、保守的で、そのくせ理性的な人間というのは、陰謀に巻き込むのが難しい。

 とはいえ、ゼンジロウは事実上カープァ王家唯一の男だ。手出しが難しいからと言って、黙って見ているには惜しい人材である。


 しばし黙考した後、マルケス伯爵は率直に意見を求めた。


「では、オクタビア。仮に、ゼンジロウ様に側室を宛がうとしたら、お前はどのような人物が良いと思う?」


 オクタビアも、一応は上級貴族の生まれだ。この手の話題には慣れているはずなのだが、意外な事にオクタビアは少し苦笑した後、首を横に振る。


「それは、しばらくはやめておいた方が良いと思います。私が直接、アウラ陛下とゼンジロウ様が並んでおられるところを拝見したのは数えるほどですが、ゼンジロウ様の日頃の言動や、後宮に務める侍女達の話からだけでも、お二人がとても中睦まじいことは感じられます。


 今、後宮に側室となる方が上がられたとしても、おそらくは身の置き所がないのではないでしょうか?」


 当たり前だが、通常側室の立場というのは正妃に比べて圧倒的に低い。まして、今回のケースは『王』と『王妃』と『側室』ではなく、『女王』と『その伴侶』と『側室』だ。


 通常、正妃と比べて公的な立場が弱く、生まれも低い事が多い側室が、唯一正妃に勝る可能性があるのが王の愛情だ。その愛情において、ゼンジロウと女王アウラの間に入り込む余地がないのだとすれば、確かに放り込まれた側室には、むごい未来しか待っていない。


「ふむ、それほどか……」


「はい」


 オクタビアの返答に、マルケス伯爵は虚を突かれたような様子で首をひねった。

 マルケス伯爵は、決して愚鈍でも、頭の固い人間でもないが、それでもあの『女王アウラ』をそこまで愛する事の出来る男がいる、というのは少々想像の外にある。


 オクタビアを後妻に迎えていることでも分かるように、マルケス伯爵の女の趣味は、基本的にカープァ王国の一般的貴族男性の例に漏れない。


 すなわち、出しゃばらずに男を立てる、黙って後ろに付いてくるような女が、『良き女』の基準なのだ。


 そんなマルケス伯爵から見ると、アウラ・カープァと言う人間は、王としては「女に生まれたことが惜しいくらいの女傑」であるが、一人の女としては、とてもではないが魅力的とは言い難い。


 念のため確認するように、マルケス伯爵は再度問う。


「ゼンジロウ様は、心底よりアウラ陛下に愛情を注いでいると?」


「はい。そもそも、あのような野心も権力欲もお持ちではない方が、生まれ育った世界を捨ててまで、この世界にやってきた理由は、陛下への愛情しかないのではないでしょうか?」


 正確に言えば、善治郎がアウラとの結婚を受け入れた理由は、アウラへの愛情が半分、半ブラック会社務めからの逃避衝動が半分と言った所なのだが、そこまで詳しい事は、善治郎本人しか知らない。


 しかし、いずれにせよ、女王アウラが善治郎の好みのタイプなのだとしたら、マルケス伯爵としては少々やりづらい話である。カープァ王国は大陸南西部に覇を唱える大国だが、アウラのような女はアウラしかいない。少なくとも、マルケス伯爵の手駒にはいない。


「ふむ。であれば、しばらくは、両陛下の仲を取り持つ方向で立ち振る舞った方が得策か」


 マルケス伯爵はそう呟く。元々、マルケス伯爵家は、現政権においても十分な権勢を誇る名家だ。一族の繁栄といっそうの領地拡大のため、権謀術数を張り巡らせるのは、高位貴族の半ば本能のようなものだが、リスクを承知で賭に出る必要がある立ち位置にはいない。


 女王と婿の仲がそれほど良いのであれば、当面の間は二人の蜜月を応援することによって、女王の心証を良くすることに終始した方が良いのかも知れない。


 実際、女王が婿と子供を作ることは、婿が側室を持って王家の血を拡散させることより優先されるのは、紛れもない事実である。


「はい、私もそれがよいと思います」


 夫の出した結論に、オクタビアは心底嬉しそうな笑顔で頷いた。

 オクタビアも、高位貴族の性として、貴族・王族の婚姻は、男女の恋愛より血の存続や、家同士のつながりが優先されることも承知している。

 しかし、そう言った現実を踏まえた上で、やはり感情的には、愛し合う男女は横やりを受けずに幸せな家庭を築いて欲しいと思う。


 そんな愛妻の内心など知るよしもないマルケス伯爵は呟く。


「それにしても、ゼンジロウ様の女の趣味は分からん」


 アウラの耳に入れば、不敬罪で問われかねないその呟きは、マルケス伯爵の本心からの言葉だった。






 ◇◆◇◆◇◆◇◆






 同じ頃、女王アウラは、久しぶりに王都外れの王軍演習場を訪れていた。


 大陸南西部に当たるこの辺りの植物は、異常なくらいに成長が早く、手入れを怠るとすぐに畑が雑草まみれになることで有名なのだが、流石にここは千人単位の武装した人間や、何百匹もの走竜が常時走り回る演習場だ。

 とくに、手入れと言うほどのことは何もしていないのに、この辺りは見渡す限り、剥きだしの赤土が広がっている。


 本日、演習場を使用しているのは、王国軍の最精鋭とも言うべき、『弓騎兵団』の面々だ。

 一般に、大陸南部で人を乗せる生き物は走竜と呼ばれる大きなトカゲの一種である。

 走竜は、大陸北部で使用される『馬』と比べると若干速度では劣るものの、馬の倍以上の体躯を誇り、そのパワーは馬の比ではない。北方諸国で軍馬として使用される大型馬と比べても、おおよそ三倍から五倍のパワーがあるとされている。


 変温動物の性として、一定より気温が下がると途端に活動が鈍るという致命的な弱点もあるにはあるのだが、ここ大陸南部ではほとんど表面化することのない弱点である。


 演習場を訪れたアウラは、傍らにファビオ・プジョル将軍を従え、目の前に整列する百を超える騎兵達に目線を向ける。


 アウラの服装は、軍装だ。カープァ王家の象徴色でもある赤を基調としたその軍装は、襟や袖に金糸で飾り模様が縫われているものの、原則動きやすさと頑丈さを追求した代物である。

 しかし、『野暮ったい』と表現しても良いその軍服も、アウラが着るとまるで別な印象を受ける。


 軍服の厚めの布地でも、アウラの豊かな胸元や、大きめの尻を隠しきることは出来ない。まして、腰には剣を下げる必要性から、太いベルトでギュッとウエストを締めているのだから、尚更だ。

 否が応にも、くびれたウエストが胸と尻の豊かさを強調してしまう。

 この場に善治郎がいれば、さぞかし「眼福、眼福」と喜んだことだろう。


 もっとも、鍛えられた王国騎士達が、演習中に女王に不埒な視線を向けるはずもない。

 広い演習場は、水を打ったように静まりかえっている。


「…………」


 その静けさ自体が、この騎士達の練度を物語っている。人間だけならばともかく、目の前の騎士達は全員走竜に騎乗しているのだ。

 百を超える走竜が一所に集まり、誰も隊列も乱さなければ、興奮して走竜を嘶かせたりもしないというのは、中々出来ることではない。


 その結果に満足したのか、アウラは一つ頷くと、右手も持つ短鞭でピシリと軽く左手を叩き、命令した。


「始めよ」


「はっ。それでは、演習はじめ!」


 アウラの言葉を受け、隣に立つプジョル将軍が、その立派な体躯に見合った大声で、騎兵達に命令を飛ばす。


「「「オウ!」」」



 騎兵達は、怒号のような声を上げると、日頃の修練の成果を見せるべく、竜に鞭を入れるのだった。






 竜騎士達は、威勢良く、女王と将軍に日頃の成果を見せつける。

 手に長槍を持ち、突撃をする者。ぬかるみや、倒木を並べたりして作った悪路を巧みに走竜で行く者。そして、花形とも言うべき、騎乗弓術を披露し、竜の背に跨ったまま、遠くの的を矢で射貫いている者。


 アウラは、立ち上る土埃で顔や髪が汚れることも全く気にもとめず、傍らに立つプジョル将軍に話しかける。


「なかなかのものだな。よく、ここまで鍛え上げた」


 女王の言葉に、野心家の将軍は神妙に頭を下げる。


「はっ、ありがとうございます。現状、騎兵の充足率はやっと八割を超えたところです。今年か、来年中には予定の数を揃えられるかと」


「五年で八割まで戻したか。よくやってくれた、将軍」


 先の大戦でもっとも深刻なダメージを被ったのが、国軍の柱とも言うべき、この騎兵団であった。


 騎兵の補充には、金も時間も莫大にかかる。竜を育て、竜を調教すると同時に、その竜に乗る人も育てなければならないのだ。

 六,七年で定数に戻すことが出来るというのであれば、確かにそれは一つの功績と言えるかもしれない。もっとも、補充される騎士は実戦経験のない若い騎士ばかり。数は戻っても、質は戦中の騎士団には、遠く及ばないだろう。


 アウラのお褒めの言葉に、プジョル将軍は厳つい表情を崩さないまま、首を横に振り答える。


「その言葉は、竜厩舎の飼育員達にかけてやって下さい。彼等こそ、最大の功労者です」


「そうだな、そうしよう」


 プジョル将軍の言葉に、アウラは素直に首肯した。


 人が育てる騎乗動物として、走竜が馬に大きく劣っている点を上げるとするのならば、その寿命の長さがある。


 一般的な馬の寿命が二十年から三十年なのに比べ、走竜の寿命は五十年前後だ。

 寿命が長いと言うことは、戦場で活躍できる期間が長いということでもあるが、同時に生まれた竜を実践に投入できるようになるまで、より長い時間が掛かるということでもある。

 馬であれば、生まれて四年か五年で軍馬として一応の形が付くのに対し、走竜は最低でも十年はかかる。


 つまり、この五年で新たに軍に加わった走竜達は、全て戦時中に卵からかえった竜と言うことだ。

 大戦の最中、予算が大幅に削られた中で、馬よりも遙かに大きな竜の餌を確保し、死なせることなく育てた飼育員達の労苦は、並々ならぬものがあっただろう。


 いずれにせよ、国防の根幹を担う、騎兵団の充実はアウラにとっても大きな朗報である。


「そう言えば、来年から多少ではあるが、軍事費を上乗せできそうだ。今のうちに、使い道を考えておけ」


 アウラはふと思い出したように、プジョル将軍にそう通達する。

 上乗せできる軍事費というのは、他でもない。善治郎の再計算によって発覚した、地方貴族の脱税分の話である。


 地方貴族達と、数日に亘る丁々発止の話し合いを設けた結果、国庫に納められる税額をそれなりに増やすことに成功したアウラは、その大半を軍事費に回すことにしたのである。


 元々、地方貴族達はその金を地方軍の軍事費に充てていたのだ。そういった素性の金を、軍事費以外に当てると言うことは、単純に考えれば国内の軍事力を落とす結果になる。


 今のところ、周辺各国との関係は、小康状態を保っているとはいえ、軍備縮小方針に舵を切れるほど、平和を確信できる状態ではない。


 アウラの言葉に、プジョル将軍は今日初めて少し口元をほころばせる。


「ほう、そうですか。分かりました。金額を確認し次第、主立った者から意見を集めて、軍の要望を纏めておきましょう」


「ああ、頼む」


 アウラは視線を、演習中の騎兵団に向けたまま、頷き返す。


「承りました。幸い、明後日の立食会に出席するため、軍の主立った人間も大部分は王都に集まっていますからな。さほど、時間を取らせずに、報告を上げられることでしょう」


 プジョル将軍の言葉に、アウラは鞭を持つ右手をピクリと振るわせる。

 明後日の立食会とは言うまでもなく、善治郎の社交界デビューのことである。

 分かってはいたことだが、この野心家の将軍は、積極的に女王の婿とつながりを持つつもりのようだ。


(はて、どうなる事やら)


 あの野心の欠片も無い婿殿と、この野心の塊のような将軍は、一見水と油のように見えるが、そう言った人間が気の置けない親友同士になったりすることもあるのが、人間の面白いところだ。


(この野心家に、妙な影響を受けて欲しくはないのだが、男同士の交友関係にまで口を挟むのは、『妻』の領分を超えているしな)


 アウラとしては、見守るしかない話だが、さほど不安に感じていないのは、それだけ善治郎を信頼し始めている証だろう。


「妹も、非常に楽しみにしております。是非、ゼンジロウ様に、妹をお目通しさせたいものです」


「そうか、私の方からも、婿殿に改めてそう伝えておこう」


 相も変わらぬ剥きだしの野心を披露するプジョル将軍に、アウラはさほど心をゆらさず、落ち着いた声でそう言葉を返すのだった。

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