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第6話:試される適性、砕ける心、戦いの決意

川の水はゆっくりと流れていた。

アリシアは洗濯を終えたばかりで、冷たい水に濡れた手と腕がまだ震えている。

彼女は服を丁寧に乾かしながら、まるでその作業が心の疲れを和らげてくれるかのように静かに動いた。

しかし、帰ろうと立ち上がった瞬間、足が止まった。

川辺に立つ一人の男が、彼女の行く手を塞いでいた。

ジョーコ・ドネガン。

村の警備員だ。

彼は一瞬動けずに立ち尽くし、勇気を振り絞るように口を開いた。

「アリシア…聞きたいことがある」

アリシアは優しく微笑み、目に浮かぶ不安を隠すように答えた。

「ジョーコ、何を聞きたいの?」

ジョーコは唾を飲み込み、アリシアを見つめる。

その視線は、ただの質問以上の意味を含んでいた。

「アリシア…本当に異世界の男と結婚するつもりなのか?」

アリシアは一瞬沈黙し、ゆっくりとうなずいた。

ジョーコは俯き、言葉は残さずにその場を去った。

足取りは重く、口にできない重荷を背負っているようだった。

田んぼの中

村の別の場所では、広い田んぼが広がっていた。

黄金色に染まった稲が風に揺れ、静かな音を立てている。

佐々木はゆっくりと歩いていた。

目は揺れる稲穂を見つめ、顔には不思議な落ち着きがあった。

――「ああ…この稲穂の広がり…」

――「心が癒される…」

彼は俯き、指先で稲穂に触れた。

――「久しぶりだ…稲を直接見るのは。」

その言葉は小さく、誰にも聞こえないように呟かれた。

その時、ジョーコの声が田んぼの静けさを破った。

「佐々木様!あなたと決闘したい!」

佐々木は驚いて振り向いた。

近くにいた村人たちも、一斉にその声に注目する。

「決闘だと!?」

佐々木は眉を上げ、ジョーコの言葉の意味が理解できない様子だった。

ジョーコは一歩前に出て、顔を引き締める。

緊張がその姿に滲んでいた。

「試練を与えたい」

彼は声を強くした。

「君がアリシアと結婚するにふさわしいかどうかを確かめたい。

俺はこの村で一番強い。証明してほしい。」

稲の列の間から、村人たちの囁きが聞こえた。

佐々木は眉を寄せた。

「待って…意味がわからない。」

ジョーコは手を上げ、すでに準備ができていることを示した。

「ルールは簡単だ」

ジョーコが言った。

「相手を倒した方が勝ちだ。」

返答を待たず、ジョーコは素早く走り出した。

「構えろ!」

最初は戸惑っていた佐々木だったが、突然体の中に熱が流れるのを感じた。

混乱していた目が、急に真剣な色に変わる。

ジョーコが迫ってくる。

その瞬間、佐々木は無意識のうちに動いた。

それは彼が正式に学んだことのない格闘技の技術だったが、彼の体に自然と馴染んでいた。

ドネガン。

動きは速く、滑らかで、予測できない。

その一撃で、ジョーコはバランスを崩した。

ジョーコは地面に倒れ込み、息を切らして胸を押さえる。

見ていた村人たちは驚き、拍手を送った。

佐々木は倒れているジョーコを見て、

「え…」と声を漏らした。

そしてすぐに我に返り、慌てて駆け寄った。

「ジョーコさん!大丈夫か?」

ジョーコはゆっくりと頭を上げた。

目は潤み、声が震えている。

「君…本気で強いな」

「もしグレゴルが来たら…」

その時、遠くから重い足音が聞こえた。

「何だ、騒がしいな…」

その声は、村で尊敬されている老人――グレゴルのものだった。

クリフハンガー

グレゴルが近づき、二人を鋭い目で見渡した。

倒れているジョーコと、立っている佐々木。

「田んぼで何の決闘をしている?」

グレゴルの声は静かだが、威圧感がある。

ジョーコはゆっくりと立ち上がり、

普段とは違う視線で佐々木を見た。

「グレゴル様…

ただ彼がふさわしいか確かめたかっただけです。」

佐々木はジョーコを見返す。

勝敗以上の何かが、この戦いにはあった。

ジョーコは田んぼの方へ目を向け、再び佐々木を見た。

「もう…君と戦うつもりはない」

静かに言う。

「これからは…君を助ける。」

佐々木は眉を寄せた。

「どういう意味だ?」

ジョーコは長く息を吐いた。

「俺は…アリシアに相応しい者ではないとわかったからだ。」

その瞬間、稲の向こうから、ありえない音が響いた。

馬の足音。

そして、さらに冷たい声が聞こえる。

「もう見つけたぞ。」

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