第5話:待つのをやめた
木造の一番大きな家の中、村の空気は重かった。
暑さのせいではない。
その中で下される決断のせいだった。
古い木の長机には、村で影響力のある者たちが並んでいる。
グレゴル(グレゴル)は右側に座り、背筋を伸ばしているが、顔には重い疲労が刻まれていた。
他の男たちも腕を組み、鋭い目でありながらも迷いを含んでいる。
そして机の端には、あの男が静かに座っていた。
彼の服は、前の世界で着ていた作業着のままだった。
生地は粗く、色は褪せ、この世界には似合わない。
疲れた顔。
逃亡の翌日から消えない、目の下のくすみ。
しかし、彼が話すとき――
声は落ち着いていた。
全てを失ったばかりの人間の声とは思えないほどに。
「村をいくつかの作業グループに分けるべきだ」
彼が言った。
カメラが顔に寄るように――
顎は緊張し、しかし目は集中している。
まるで役員会を仕切る社長のようだった。
「巡回。
食料の確保。
交易。」
彼は手のひらを机に置く。
「これは発展のためではない。
生き残るためだ。」
数人が静かに頷いた。
彼は椅子に寄りかかり、グレゴルを見た。
「当ててみよう。
オブライエン家が崩壊する前、村はただの補助基地だったんだろう?」
彼が言った。
グレゴルは長い息を吸う。
カメラはグレゴルの顔へ――
深い皺。
落ちた目。
「そうだ」
と彼は呟く。
「この村はテガル(テガル)という都市の食料備蓄を補うために作られた。
オブライエン家本家が支配する都市だ。」
彼は拳を握った。
「その代わり、この村は都市の軍に守られていた。
だが今は……
私たちには所有者もいない。
守る者もいない。」
絶望が空気に沈んだ。
男はゆっくりと頷いた。
「なら、だからこそだ」
彼の声が少し強くなる。
「私たちは自立しなければならない。」
彼は立ち上がる。
カメラが下から彼の動きを追う。
圧力を感じさせるように。
「村を自立させれば、
今後起きる政治問題にも耐えられる。
誰にも従わずに済む。」
初めて、いくつかの顔に小さな希望の火が灯った。
その日のうちに、役割分担が行われた。
儀式も、掛け声もない。
ただ決断があるだけ。
村の警備グループ
ルメル(ルメル)、ハメル(ハメル)、ユーディ(ユーディ)、ムリャント(ムリャント)、そして数人の若者。
彼らは朝と夜に巡回し、森と川のルートを見張る。
家事・洗濯グループ
サイラ(サイラ)、クスリ(クスリ)、イナ(イナ)、そして他の若い女性たち。
衣服や包帯、日常の世話を担当する。
交易グループ
佐々木(佐々木)とアリシア(アリシア)。
森の産物を交易し、外の世界の情報を集める。
食料確保グループ
グレゴル(グレゴル)が自ら率い、数人の狩人と農民と共に森の奥へ入る。
長期の備蓄を確保するためだ。
分担が終わり、グレゴルはすぐには立ち上がらなかった。
彼はアリシアを見た。
そして男を見た。
「もう一つだけ」
と彼は静かに、しかし確固として言った。
部屋が再び静まり返る。
「オブライエン家の未来のために、
強い絆が必要だ。
戦略だけでは足りない。」
彼はアリシアに向き直った。
「アリシア、
私は決めた……
お前は彼と結婚する。」
時間が止まったようだった。
カメラが男の顔を切り取る――
眉が少し上がる。
驚き、しかし慌てない。
アリシアは黙ったまま。
頬が赤くなるが、拒絶はしない。
その前に、佐々木が立ち上がった。
「――待ってください」
と彼は早口で言う。
「その件って……アリシアも私に――」
グレゴルが鋭く振り向く。
「知っている」
と冷たく言った。
「そしてお前が断ったのも知っている。」
佐々木は口を開けたまま、閉じる。
「私は英雄様に言いました」
とアリシアは静かに言う。
佐々木が彼女を見る。
「アリシア?!」
「あなたが怒ると思った」
アリシアは正直に言う。
「でもこの世界の慣習では、結婚は感情だけの問題ではない。」
グレゴルが口を挟む。
声が大きい。
「これは家の存続の問題だ。
お前が否定しても、
決定は覆らない。」
佐々木は拳を握る。
拒否の表情が見える。
しかし反抗する余地はない。
男は何も言わず、
壁の割れたオブライエンの紋章を見つめていた。
朝。
アリシアの結婚の噂は、村中に広がっていた。
告知もなければ、公式な発表もない。
ただの囁きで広まった。
井戸のそばで、数人の女性が水を汲みながら集まっている。
桶の音と笑い声の間に、その話題が混ざった。
「本当なの?アリシアが結婚するって」
「昨日来た男と?」
「なら……結婚式はあるのかな?」
笑い声が出る者もいれば、
顔を見合わせて不安そうな者もいる。
「式?」
「今の時代に?」
「小さなものでも、オブライエン家の結婚だものね。」
その群れの中に、男が一人立ち止まった。
彼は村の警備服を着ている。
肩には木の槍。
目立たないほど普通の顔。
カメラがゆっくり彼の顔に寄る。
目が一瞬見開かれた。
冷や汗がこめかみに流れる。
手が槍の柄を強く握る。
「結婚……?」
と彼はほとんど聞こえない声で呟いた。
彼は唾を飲み込み、顔をそらす。
何も聞かなかったかのように歩き出す。
だが歩みは速くなり、
呼吸は乱れていた。
夕方。
川岸で、女性たちが衣服を洗っている。
冷たい水が流れ、布を絞る音と軽い会話が混ざっている。
アリシアは川の端に膝をつき、袖をまくって洗っていた。
会議のときより、少しだけ落ち着いた顔をしている。
カメラは茂みの向こうから見つめる。
足音が近づく。
警備の者の一人――
ルメルでも、ハメルでもない――
アリシアの後ろで立ち止まった。
「一人か?」
と彼は静かに言う。
アリシアは振り向く。
そして表情が変わる。
川の水は流れ続け、
鳥は鳴き続ける。
だが、
何かが
おかしい。




