表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Cat's Whiskers  作者: 七日
28/53

第二十六話:沈黙の壁

ブラストドアは、その名の通り、あらゆる爆風に耐えうるよう設計された、分厚い鋼鉄の壁だった。

カミーユはその前に立ち、滑らかな表面を見上げる。継ぎ目一つない、完璧な一枚岩のようだ。カードキーのスリットも、認証パネルも、物理的なハンドルすらない。

「アヤ、この扉、開けられるか」

『……ちょっと待って。調べてる』

アヤが、データベースの海を高速でスキャンする音が、通信機の向こうから微かに聞こえる。数秒の沈黙。

『ダメだ、カミーユ。このドアの制御システム、完全に独立してる。ネットワークから物理的に切り離されてるみたいだ。ハッキングじゃ開けられない』

「物理的に破壊するのは?」

『装甲の厚さは、最低でも50センチ。小型の爆薬じゃ、傷一つつけられないよ』

八方塞がりだった。しかも、先ほどのハッキングで、いつ警報が鳴ってもおかしくない。時間は刻一刻と過ぎていく。

「……いや、方法はあるはずだ」

カミーユは、自らの装備に目を落とした。アルバレッテに装着された、特殊なアタッチメント。パイルバンカー。一点集中の破壊力に特化した、彼女の切り札の一つだ。

「アヤ、設計図はまだ見られるか。このドアの、構造上の弱点が知りたい」

『!……待って、すぐスキャンする!』

アヤの声が、活気づく。

『……あった! ドアの右下、床からちょうど30センチ。そこに、緊急用の手動ロックボルトがある。分厚い装甲に隠されてるけど、そこだけが、構造上、唯一の急所だよ!』

カミーユは、アヤが視界に表示したターゲットマーカーに、寸分の狂いもなくアルバレッテの照準を合わせた。そして、特殊な破城槌(は城つい)、パイルバンカー・ボルトを装填する。

「……いくぞ」

カミーユの呟きと共に、甲高いチャージ音が響き渡る。

[プシュッ、ガキン!]

圧縮されたエネルギーが解放され、先端が硬化タングステンでできたボルトが、轟音と共に射出された。ボルトは、装甲の一点に吸い込まれるように突き刺さり、内部構造を粉砕する。

耳をつんざくような金属の破壊音。

そして、重い、重い、地鳴りのような音がして、ドアのロックが外れた。

「……開いたか」

『うん、ロックは外れた!でも、自動では開かない!重すぎて、動力なしじゃ……!』

カミーユはアルバレッテを背負うと、分厚いドアの縁に両手をかけた。

「……ぐっ……!」

全身の筋肉が軋む。一ミリ、また一ミリと、巨大な鋼鉄の塊が、ゆっくりと横にずれていく。やがて、人間一人がなんとか通れるだけの隙間ができた。

カミーユは、即座にその隙間へと身体を滑り込ませた。

彼女が通り抜けた直後、ブラストドアは自重で、ドン!!という凄まじい音を立てて閉まった。

静寂が戻る。だが、それも一瞬だった。

『……カミーユ、今の衝撃で、さすがに本格的な警報が鳴った!』

アヤの、これまでになく切迫した声が響く。

『バラージの部隊が、この区画に集結し始めてる!急いで!』

カミーユは、背後で閉じた巨大な扉を振り返ることなく、暗い通路の先を見据えた。

もう、隠れて進む段階は終わった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ