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プロローグ:失われた空の記録
2232年10月23日。その日、人類は空を失った。
原因は、所属不明のハッカー集団による全地球衛星網の基幹制御キー『イカロス・キー』の漏洩。ハイジャックされた軍事衛星群は意図的に相互衝突し、連鎖的な破壊『キネティック・カスケード』を引き起こした。低軌道は航行不可能なデブリ帯と化し、GPSは沈黙し、大陸間通信は途絶した。
後に『オービタル・ブラックアウト』と呼ばれるその事件は、一夜にして世界経済を崩壊させ、人類を分断された都市国家の時代へと逆行させた。
それから10年後の2242年。
旧国家の瓦解後、空白となった権力を掌握したのは、独自のローカルネットワークと私兵戦力を持つ超巨大複合企業だった。
フランスの廃都リヨンは、欧州の覇権を狙う二社の代理戦争の最前線となっている。
バイオテクノロジーによる人類の『完成』を目指すリュミエール・エテルネル社と、AIによる機械的秩序の確立を掲げるバスティオン・インダストリー社。
彼らは『ランカー』と呼ばれるエリートサイボーグ傭兵を使い、この街に眠る旧世界の利権を巡り、終わりのない暗闘を繰り広げている。




