表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

19/49

【番外編】下位互換イベントと手合わせ(ローザ視点)

昼下がりの廊下。

書類に目を通していると、やけにざわめきが大きくなる。

「聖女様が……!」「騎士様が抱き上げて……!」

なにそれ、どういう状況?


(……今度は何をやらかしたのかしら?)


この学園に来てからというもの、あの子のまわりだけ現象の密度が高い。

火竜の暴走もそうだった。

まぁ、引き起こしたのは私なんだけど。


(あの時は、本当によくやったわ。

 光は、扱うのが難しいのよ。

 なのに、ちょっとコツを掴んだら、すぐに結界をあんな規模で展開してしまうなんて)


――その光の軌跡を、私はまだ掌に覚えている。

光は扱えない私にとって、それは――少し、感動的ですらあった。


(光以外の属性は全部あるのに、ね)


噂の出所をたどって中庭を抜けると、医務室の前に人だかりができていた。

(……見に行く気はなかったのに)

扉のすき間から覗くと、彼女がベッドに座って頬を真っ赤にしている。


その隣には、あの騎士――ライナー・ヴァン・アルデン。

あの真面目さで、また全力で何かしたのだろう。

たぶん彼も、リリエルと同じ、”この世界の特別な人”だ。


(でもきっと、リリエルがヒロインで、彼は……なんだろう?リリエルほどには特別じゃない気がするわ)


「……どうしてあそこにいるのが私じゃないのかしら」


誰にともなくそう呟いて、静かに踵を返す。

怒っているわけじゃない。

ただ、胸の奥に言葉にならないもやが残る。


わかってる。

私の”特別”は、たぶん、彼らとは違う種類だ。


窓の外、夕陽が校舎を照らす。


(……まあいいわ。いざというときにリリィの力になれるのは、私よね)


書類を抱え直して、静かに歩き出す。

背後で「お姫様抱っこはもうやめてください!」と騒ぐ声が聞こえた。

肩をすくめて小さく笑う。

「……意味はわからないけど、まあ、元気ならいいか」


赤く染まる空がリリエルの髪をピンクに染める瞬間を、頭に思い浮かべた。





(――思った以上に観客がいるわね)


放課後の訓練棟。

アルデン先輩の「手合わせ」は本気だったらしい。


(あまり目立ちたくないのだけれど……)


でももう遅い。

こういう場合、負けておくのが無難かしら?

と、一瞬だけ思う。


ちらりとリリィのほうを見ると、何やら緊張しているようだった。


(ふふ、結構顔に出るのよね)


「クロイツ令嬢!それでは、よろしくお願いします!!」


学園では私のほうが後輩なのに、こういうところは律儀な人だ。

そう思ったところに、鋭い一撃がやってきた。


(ふうん、肉体強化……土と火、かしら?

 スピードもあるから風もね)


戦闘センスはなかなか。

私は風の流れをうまく利用して攻撃を避ける。


正直、肉体の動きは“見える”から、そこまで脅威ではない。


(距離をとって攻撃魔法を仕掛けてもいいのだけれど……

 さて、どうしようかしら)


そう考えていた瞬間。


――大きな衝撃が襲った。


(驚いたわ。

 肉体強化の域を超える衝撃派……

 これ、火竜にぶつけてたやつね)


反射的に闇魔法で吸収する。

――ちょっと面白いかも。

ぴりり、と私の闘争心に火が付くのを感じた。


(……いいわ。

 せっかくだし、接近戦で叩きのめしてあげる)


ライナーは今の攻撃が効いていないことに動揺している。

そういうところはまだ未熟ね。


(ふふ、お返しするわね)


私は大して得意でもない打撃を繰り出す――

“ふり”をして、さっき吸った衝撃をそのまま返した。


ドゴン!!


ライナーが壁に衝突すると同時に、どっと歓声が上がる。


ちらりと横目にリリィを捉えると――

うん、たぶん、闇魔法使ったって気づいたわね。


目で合図を送ると、あきれたような顔。

ジュリアン殿下がクスクス笑っているのも見えた。


(あらあら。この二人にはバレちゃったわね)


それがほんの少し嬉しくて、口元が緩む。


クラヴァ―ル先輩がいなくてよかった。

また暴走されたら面倒だもの。


(口止めに、甘いものでもご馳走しなくちゃね。

 何がいいかしら ? 今の季節なら――)


そんなことを考えながら、

私はさらにライナー先輩をぼこぼこにして――


結局、目立ってしまったのだった。






初のローザ視点でした。いかがでしたか?

次回から新章突入です!水曜日20時更新


ブクマや評価、励みになります。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ