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タイトル未定2025/06/26 13:34

第一章 光を見失った日

春の日差しが差し込む朝、25歳の主人公・航平は目覚ましの音にうんざりしながらベッドから起き上がった。


眠れない夜を過ごしたあとで、頭は重い。カーテンの隙間から差す光が、どこかうるさく感じる。




5歳になる娘・陽菜はもう起きていて、小さな手でパンをかじっていた。


「パパ、おはよう」


その笑顔が、航平にはまぶしすぎた。




──君のせいで、彼女はもういない。




陽菜の明るさとは裏腹に、航平の胸にはいつも冷たい罪悪感が居座っていた。


妻は、陽菜の出産の際に命を落とした。


その事実が、航平を父親にさせなかった。




陽菜に手をあげたことはない。


だが、抱きしめたこともなかった。




「早く食べなさい」


そう言っても、目は合わせなかった。


陽菜が寂しげにうなずく。




この家には、温もりがない。


残された父と娘、それぞれが光を見失ったまま、同じ空間で暮らしているだけだった。




第二章 すれ違いの日々

航平は仕事に没頭していた。


運送会社でドライバーとして働く彼は、朝から晩まで働き詰めだった。


その疲労を理由に、娘との会話はますます減っていった。




幼稚園のお迎えは近所の人に頼み、食事もコンビニ弁当。


家事は必要最低限。陽菜の髪の毛を結ぶことも忘れるようになった。




それでも陽菜は、航平に笑顔を向け続けていた。


「パパ、お花つくったよ」


「パパ、絵かいたの。ママと、パパと、わたし」




航平は反応に困る。


そのたびに、妻のことを思い出し、胸の奥にまたひとつ棘が刺さった。




──なぜこの子は、あのとき助かってしまったのか。




口にこそ出さないが、心の奥で航平はそんな感情を抱いていた。


そしてその感情が、陽菜に伝わっていないはずがなかった。




第三章 兆し

ある日、陽菜が熱を出した。




幼稚園からの電話を受けて、航平は久しぶりに早退した。


ベッドで小さく丸まる陽菜の背中が、信じられないほど小さく見えた。




「……病院、行くぞ」




道すがら、陽菜は航平の手を握った。


その手は熱を持っていて、震えていた。




「パパ……ママもこんなとき、手、握ってくれた?」




航平は答えられなかった。


代わりに、少しだけ強く握り返した。




帰り道、陽菜が言った。




「パパ、ありがとう。今日は、パパと手、つなげたから、うれしかった」




その言葉に、航平の中で何かが軋んだ。


かすかに、凍った心にひびが入った瞬間だった。




第四章 ゆれる心

陽菜は少しずつ、航平の心に入り込んできた。




一緒にご飯を作った日。


一緒に買い物に行った日。


何気ない一日が、少しずつ変化をもたらしていった。




航平も気づいていた。陽菜が、自分を見上げる目の中に、どこまでもまっすぐな「好き」があることに。




だけど――それでも、胸の奥に残る「罪」が航平を苦しめ続けた。




「パパ、ママってどんな人だった?」




陽菜の質問に、航平は震える声で答えた。




「……すごく、優しかった」




その言葉のあと、陽菜が「わたしも優しくなる」と笑ったとき、航平は自分の無力さを痛感した。




──お前は悪くない。でも、まだ赦せない。




そんな矛盾が、彼の胸を締めつけていた。




第五章 少しだけ、家族に

陽菜が描いた家族の絵は、3人が手をつないで笑っているものだった。


航平はその絵を冷蔵庫に貼った。




「パパ、これからは、毎日一緒にごはん食べよ」




「……ああ」




返事をしながら、航平の中には不思議な静けさがあった。


怒りも、後悔も、少しだけ薄れてきていた。




陽菜が航平の寝ている隣で絵本を読んでくれた夜。


小さな声で「パパ、おやすみ」と言って、航平の布団の端をそっと引っ張った。




初めて見る表情だった。




──こんな日が、続いてくれたら。




少しだけ、そう思った。


そして――その日々は、ほんの短い夢だった。




第六章 春、砕ける音

事故だった。




陽菜は幼稚園の帰り道、道路に飛び出した小さな子をかばった。


その瞬間、一台の車が急ブレーキをかけたが――間に合わなかった。




連絡を受けて駆けつけた病院。白衣を着た医師が、航平に重く冷たい言葉を告げた。




「命は助かりました。ただ……」




意識が戻らないかもしれない。脳への損傷が大きい。




航平は、病室のベッドの脇で陽菜の手を握った。あたたかいけれど、返事はない。




──なぜ、神様はこの子ばかり試すんだ。




涙がこぼれた。胸が張り裂けそうだった。




そのとき初めて、航平は心の底から願った。




どうか、娘を助けてください。




第七章 ただいま、パパ(陽菜視点)

第七章(陽菜視点)


「ただいま、パパ」




まぶたの裏に、やわらかい光が広がっていた。


朝か昼かはわからないけど、そこにぬくもりがあった。




手が、誰かに握られてる。


大きくて、あたたかくて、ちょっと震えてて――




パパだ。




心の奥がふわっとほどけた。




「陽菜……」




泣いてるパパの声。


やさしいのに、苦しそうな声。




「ずっと……苦しかったよな。


パパ、全然お前のこと……いや、陽菜のこと、ちゃんと見てあげられなかった……」




ごめんね、って何度も何度も言うパパ。




――ううん。


わたし、うれしいの。


声が聞けて。手を握ってくれて。




夢でもいい、と思ってた。


でもこれは、ちゃんと本物だ。




わたし、目を開けたくてがんばった。


ちょっとだけ光が見えた。


パパの顔があった。泣いてた。




「パパ……ママが……夢に出てきた……」




声はかすれてたけど、ちゃんと届いたと思う。




「ママが言ってたの。


『今のパパは、いちばん優しい』って……」




パパがしゃくりあげて泣いた。


その音で、わたしも泣きそうになった。




それからまた、少し長い眠りについた。




次に目を開けたとき、春の風が吹いていた。


わたしは車椅子に乗って、公園にいた。




帽子がふわっと風に飛ばされた。


追いかけたいけど、体がうまく動かない。




悔しくて、下を向いたとき――




「はい、取ってきたぞ」




パパの声がして、帽子が膝の上に戻ってきた。




「これからも、陽菜のパパだよ」




わたしはびっくりして、パパを見た。


いつもより少し照れた顔で笑ってた。




胸が熱くなって、涙があふれた。




夜、病室のベッドに戻ったら、パパがノートに絵を描いてた。


わたしと、ママと、パパ。


三人で手をつないで笑ってる絵。




「これが、俺のいちばんの夢だったんだ」




わたしは、パパの手を握って言った。




「……わたし、パパの子どもでよかった」




パパが、わたしを見て言った。




「陽菜が娘で、ほんとによかった。


これからは、ずっと一緒に生きていこう」




世界でいちばん、愛されたいと思ってた。


でもいまは――世界でいちばん、愛されてる。




【終章】


「また明日」って言える日が、


これからも、ずっと続きますように。

久しぶり書いた。

子供できた。

だからこう言うの書いた。

(なぜカタコト?)

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