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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

サンタちゃん

作者: やまとりさとよ

超絶怒涛の 1.5/2 (遅刻)

空は黒く染まり、静かに降る雪だけが白く映えている。


薄く固まった氷の結晶は緩やかに下降しながら少女の鼻先に落ち、赤く染まったそれの上に小さな水玉を作った。


が、少女はそれを気にした様子もなく大きな瞳を輝かせ、ただ降り行く雪を見つめt



轟音。



降りかかる土煙と大量のネバネバした何かしら。


少女の目の前に落下してきたのは巨大な頭部。目はそれにスケーリングしてなお大きい。

口はなく、まだらに配置された穴が空いている。

それらは例外なく成分不明の緑色の液体を垂れ流しており、完全に脱力し生気を失っていた。


「ちょおおおおおおおお!!??」


「あー、すまーんサンタちゃん。」


「三田ですけどおおおおおお!!!」


「あっっははははは。」


絶叫する少女、もとい三田吹雪は怪生物の体液で汚れた顔を頭上に向け、爆笑する上司に向かってさらに叫んだ。



…。



「ごめんってサンタちゃん。皮膚の一部だけ取ろうとしたら思ってたより戦闘で首取れかかっててさ、ちょーっと動かしたらグラって言ってブチブチブチーって取れちゃったんだって。」


旧居住区。

荒廃した都市の残骸の中を走る装甲車の中で言い訳気味に黒髪の女が銀髪の少女に向かって話しかけていた。


「サンタじゃなくて三田です!み・た!

エイリアン解体の時は周囲に気をつけろって八代先輩が教えてくれたんじゃないですか!それに、これの匂いなかなか落ちないんですよ。」


助手席に座る三田吹雪は運転をしている八代柚木に口を尖らせながら言った。


「あー。まぁ特に脳漿あたりの液はなぁ。なんか発酵してる感あるし。自爆型なら…ってちょ。」


黒髪のロングヘアを掻き軽く笑いながらそう言う八代に向けて三田は先ほどまで着ていたスーツを入れた袋の開口部をむけていた。


「これは罰です!この体液洗濯機で洗えないから手洗いなんですよ!しかも防護機能もオフにしてたから中まで染みてるし!ちょっとは私の苦労を受け取れえー!!」


「うわっちょ、やめ、くっさ!、やばいやばいって、くっっっさ!やめろおおおお!」


「そうでしょうそうでしょう。私は帰ったらこれに正面から洗濯板と共に挑むのです。ちょっとは反省してください。」


「いやうんわかったわかった、ごめんごめんてばサンタちゃん。…ってちょっと静かに。」


「ん。」


装甲車の中で暴れていると、唐突に無線機がなった。


『こちら本部。こちら本部。えー、旧居住区4-7付近でエイリアンが発生。至急近くの隊員は現場に急行されたし。繰り返す。旧居住区4-7付近でエイリアンが発生。至急近くの隊員は現場に急行されたし。』


「え、今私たちどこにいます?」


「あー。旧居住区4の…6。」


「うええええええええええ。」



瞬間。


轟音が鳴り響く。


道先の建物が吹き飛ばされ、大量の破片が降り注ぐ。


舞う土煙が晴れた先には一体のエイリアンが立っていた。


体長4メートル程度。

四足歩行で体毛はなく、全身が薄ピンク色の肉で覆われている。

顔面は体に対して大きく、目測四頭身。

目は潰れたように瞼の肉が垂れ下がり、唇は溶けたように張り付いている。

全体的に太った赤子のような姿をしたエイリアンがそこにいた。


「よっと。」


八代は装甲車のドアから飛び降り、展開型のスーツを身に纏って電子銃器の電源を入れた。


展開音と共にガトリングガンの様相を呈した銃器は青色の光を放つ。

スーツもまた薄い青色の障壁を展開させた。


「うぇぇぇぇ…まじでこの状態でやるんですかぁ…。」


その横で情けない声を上げる三田。


スーツは八代同様起動しているが、明らかに緑色の粘液が付着しており、体を動かすたびに糸を引いていた。


「いや、しゃーないしゃーない。なんか奢るから。」


「絶対ですよぉ…。」


半べそになりつつ三田は武器を取り出す。


刀型の三田の武器は展開と共にオレンジ色のスパークを放ち、銀色の刀身が赤熱し三田のショートの銀髪を照らす。


「2秒で殺します。」


「お、おう。」


隠そうともしない殺気で銀髪を揺らす三田にたじろいだように八代が答える。


「それが私がこのスーツで動いて耐えられる限界活動時間です。」


「なるほど…」


「全力で振り抜くので体液が飛び散ったらすみません。」


「…。」


「お詫びは高級アイスでお願いします。」


「え、いやちょ」


三田が抜刀の姿勢に入る。


姿勢を低く、地を踏み締める。


瞬間。


スーツがより激しく青く光った。


影すら残さない速度でオレンジと青が混じった光線がエイリアンを貫く。


緑色の体液が周囲にぶちまけられる。


装甲車付近に飛んできた体液を、八代は武器を変形させ展開したシールドで防いでいた。



…。



技術革新にしろ世界平和にしろ、物事の進歩というのは必要性が最も大きな原動力となる。


凡そ五年前に地球の外からエイリアンが攻め入ってきた時も同じことが起こった。


それらは例外なくあらゆる地に降り、周囲の環境を破壊し尽くした。


おおよそ現代科学では太刀打ちできない存在。


銃や大砲はその身に一切のダメージを与えること叶わず、生物兵器、毒ガス、ミサイルでさえも、所詮人間文明に対してのみ通用する程度の兵器は尽く無効化された。


この未曾有の大災害に世界は一つとなった。


全ての技術の矢印はエイリアンを討伐することにのみ集約され、全世界の研究者がエイリアンへの対抗策を研究した。


対エイリアンの兵器に関する技術は圧倒的な速度で発展し、結果として人類の技術はたった五年でエイリアンを倒すまでに至った。


それらの技術は世界中に共有され、徐々にエイリアンに支配された土地が人類に解放されつつあった。


そしてエイリアンの侵攻が最も激しかった地、日本のエイリアン対策本部の居住スペースで美味しそうに高級アイス頬張る少女がいた。


「うまいですねこれ。」


「だろー。高かったんだからそれ。」


「いくらですか?あんま高かったならちょっと返します。」


「いやいやいいって。一応お詫びなんだから。」


「さすが八代先輩。愛してます。」


「サンタちゃんに手出したら捕まるからな。」


「いや、こんなんでも成人してるんですけど。」


「なに?じゃあウェルカムってこと?」


「気色悪。」


「なっ、乙女の純情を弄びやがってー!」


「ぎゃー」


『消灯時間です。隊員は直ちに睡眠を取ってください。』


騒ぐ二人の元に天井からのアナウンスが届いた。


「もう11時か。」


「今日は夕方に出動しましたからねー。」


「スーツは洗ったの?」


「洗いましたよ。あ、いま風呂場を開けないほうがいいです。換気扇と匂い取りで全力で脱臭してるので。」


「うげぇ。じゃあ風呂は朝入るかぁ。」


「一応共用浴場は消灯後もしばらく空いてると思いますけど。」


「えー。遠いなぁ、サンタちゃん来てくれる?」


「私はもうスーツ洗うついでに入っちゃいました。」


「ずるっ!」


「だってあの時先輩ゲームしてたじゃないですか。」


「しゃーないんだって、スタミナちょうど溜まってたんだから。」


「はぁ。そろそろ寝ますよ。」


「ういぃ。」


三田と八代は2段ベットに入る。


「おやすみなさい。」


「おやすみぃ」


三田はリモコンを操作し、部屋の照明を消した。



…。



朝。


『8:10よりミーティングを開始します。隊員はミーティングルームに集合してください。』


「八代先輩!あと10分です!起きてください!」


「んん…あと10分したら起きる…。」


「10分後だっつってんでしょ寝坊助!」


「ぎゃぅ」


三田は布団に抱きついて離れない八代を文字通り叩き起こし、着替えさせた後引っ張って部屋を出た。


ミーティングルームは部屋を出て突き当たりの廊下の先にある。


部屋の前方にはホワイトボードが置かれ、それに向けた椅子と机が幾つか置かれている。


三田と八代がミーティングルームに入ると、既に集合していた隊員が一斉に二人を見た。


「よし。これで全員揃ったな。これよりミーティングを始める。」


気まずそうに目線を潜り席についた二人を見、ホワイトボードの前に立った中年の男が声を上げる。


「ここ1ヶ月で発生したエイリアンの件数は先月の8倍強。隊員学校で習ったと思うが、原因はこいつだ。」


中年の名前は岩垣幸三。

身長は凡そ180センチ強。

若干剃り残しのある無精髭。

禿げ上がった頭が目立つが、彼は対エイリアン戦闘部隊の隊長であった。


岩垣が示すホワイトボード上には一枚の写真が貼ってあった。


それはエイリアンの写真。


明確な比較対象は存在しなかったが、その粗さとそれの周囲に取り巻く多くのエイリアンからそれがはるかな大きさを有していることがわかる。


姿も他のエイリアンとはかけ離れており、極めて人間に近しい姿。

80歳程度の人間の男のようなシワの刻まれた顔にそれを覆い尽くすほどの白い髭。

頭に盛り上がったようにつく赤色の帽子のような器官。

全身は映っていないが、顔以外は真っ赤な肌が覆っている。


その姿は伝説状のとある存在に酷似していた。


「サンタクロース…!」


三田の前に座る男の隊員、宮城が声を上げた。


「その通り。こいつは年に一度、12月25日に地球にやってくる。正体不明、生態不明、こいつを討伐しようとこれまで人類は奮闘してきたが、それは叶わなかった。よって唯一わかったこいつの習性を利用した追い返しが毎年行われている。」


岩垣がホワイトボードを示した。


「こいつは手前の袋に物を入れたがる習性がある。初回の第一次サンタクロース災害では都市丸ごと、二回目の第二次サンタクロース災害では計一万千二百九十発の発射された核ミサイルだ。」


岩垣は話を続けた。


「以上の結果からサンタクロースはある一定の質量の物質、またはそれに準ずるエネルギーを袋に入れる習性があるとわかった。以降三年目からはサンタクロースに直接エネルギーを吸収させるといった対策が毎年取られている。

去年はこれをアメリカが担当していたが、今年はその役が日本に渡ってきた。


諸君らにはこれを行う際にサンタクロースと共に襲来するエイリアンの討伐を頼みたい。

決行は1週間後のクリスマス!よろしく頼む!」


「「はいっ!」」


岩垣の言葉にミーティングルーム内の隊員が返事をした。


その後は軽い報告といくつかの注意点で朝にミーティングは終了した。



…。



「クリスマスにやってくるサンタクロースだけどさぁ。」


「エイリアンの方の?」


「そそ、エイリアンの方。」


ミーティングが終わった後、食堂で朝ごはんを食べながら八代が間延びした声で三田に話しかけた。


「サンタクロースっていう割にはやってること本物の真逆よね。」


「というと?」


「だって本物のサンタクロースはこそこそ煙突から入ってバレないようにプレゼントを渡してくるじゃない?

だけど、エイリアンの方はあんなでっかい姿で堂々とエネルギーとか都市とかの物を奪ってく。」


「確かに、やってること真逆ですね。」


「エイリアンがサンタクロースの姿で強盗してんじゃねーよー。」


「まぁエイリアンの行動に理論性を求めるのは間違ってるのかもです。」


「確かにそうだけどさ。」


三田の言葉に八代は机に倒れ込んで言った。


「あー。なんでったってこんな年末に来るんだよー。」


「サンタクロースだからじゃないですか?」


「変なとこだけ理論性を持つなー。」


気怠そうにいう八代に三田は軽く笑って返した。





1週間後。


「寒っ」


夜はふけて12月24日深夜23:50。


三田達対エイリアン戦闘部隊は研究部に指定された地点に集合していた。


雪は吹雪となりあたりを覆い尽くしている。


付けられたライトが周囲を照らすが、降り積る雪しか見えなかった。


「今より数分後!サンタクロースとそれを取り巻くエイリアンの侵攻が行われる!我々の任務は対サンタクロース用極小反物質弾の射出機の防衛だ!皆己の任務を遂行しろ!!」


「「はいっ」」


「散!」


岩垣が声を張る。

合図と共に戦闘部隊はそれぞれの持ち場についた。


「ちゃっちゃと終わらせてゲームやろうや。」


「それフラグですよ。」


「え、マジ?」


スナイパーライフルを抱え軽口を叩く八代に刀を展開した三田は言った。


その瞬間。


『サンタクロース出現。サンタクロース出現。』


サイレンと共にアナウンスが流れた。


弾かれたように上を見ると、雲の切れ間、天を覆い尽くすほどの巨大な顔がこちらを覗いていた。


「でけぇ…。」


八代が声を漏らす。


「来ますっ!」


三田の緊迫した声。

同時に振り抜いた刀が放った赤い斬撃が突進してきたエイリアンを裁断した。


「私が上をやる!サンタは下の奴!」


「はいっ!」


三田のスーツが青く光る。


気づけば、地上には溢れるほどにエイリアンが蠢いていた。



…。



戦闘は苛烈を極めた。


カバのような姿をしたエイリアンの腹を切り裂き、背面から抱きついてきたサソリ型のエイリアンを振り向きざま真っ二つにする。

頭上からエネルギー弾を充填したロボットが照準を向ける以前にバク宙で確殺範囲から逃れたのち、キメラ型のエイリアンを盾にし衝撃から逃れる。

半分骨になったエイリアンの死骸を蹴り飛ばし、スライム型のエイリアンの体にぶち込むと、再度照準をつけようとしたロボットの腹に跳躍して刀を刺し貫いた。

スパークを放ちながら後方に倒れ込むロボットから蹴って加速し、射出機に駆けていく人型のエイリアンの首を飛ばした。


「おい!射出機まだか!」


「まだ照準が合わない!!サンタクロースの袋が見えない!」


「クソが!」


隊員の怒鳴り声が響く。


が、その声もエイリアンの叫び声でかき消えた。


「glaaaaaaaa!!!」


「!!!」


突如、三田は横から飛んできたエイリアンの拳に吹き飛ばされた。


青い障壁がガラスのように砕けちる。


三田は空中で身を翻し、刀を地面に突き立て体の動きを止めた。


「チッ」


「サンタ!!」


「!?」


八代の叫び声が聞こえる。


弾かれたように前を向くと、先ほど三田を殴り飛ばしたエイリアンがすぐ目の前まで迫っていた。


「やばっ」


障壁はまだ回復していない。

この状態でエイリアンの拳を喰らえば致命傷は免れない。


目を瞑り、来るであろう衝撃の防御姿勢をとる。


が、


激震。


爆音と振動のほかに三田にその衝撃は訪れなかった。


「強化個体か!?」


隊員の声が聞こえる。


うっすら目を開けると、そこには先ほどまでのエイリアンとは三回りほど大きな二足歩行型のエイリアンが立っていた。

先程のエイリアンはそれの足元で潰れている。


「!?」


眼科のない目を三田に向け、そしてそのエイリアンは無造作に三田を蹴り飛ばした。


「…!」


「三田!!!」


衝撃。

世界が断絶したかと思えるような激震。


三田の体は今度こそ徹底的に吹き飛ばされ、そのまま意識を失った。





「三田!おい三田!」


「ん?…んん。」


次に目が覚めた時、三田は強い光に照らされていた。


「起きたか!」


「はい…おきました…てててて」


腹に走る激痛に悶える三田を見つつ、岩垣はそれでも冷徹に話し始めた。


「すまないが状況を説明する。先程強化個体により射出機が攻撃された。幸いその後隊員によって強化個体は討伐されたが、射出機のエネルギー関連機能が一部故障した。」


「つまり…?」


「射出機のエネルギーが足りず、発射が困難だ。」


「やばいですね…それは。」


「そこでだ、三田、お前に力を借りたい。」


意識も空に聞く三田に岩垣は肩を掴んで言った。


「お前のスーツは近接特化の特注品だ。よって他のスーツより最大出力が大きいことは前説明した筈だ。」


「…聞きました」


「これからお前のスーツを射出機に直接接続する。スーツの個人認証を設定し直す時間はない。お前にエネルギーをスーツから直接送る仕様上、射出機はお前以外に発射不可能だ。」


「なるほど…つまり。私がサンタにプレゼントを贈れと…。」


「ああ。頼む。これはお前にしかできない。エイリアンからの防衛ももう長くは持たないだろう。」


頭を下げる岩垣を見、三田は裂けた唇を歪ませて言った。


「わかりました。」





「コードの接続は完了した。照準はセンサが勝手にやってくれる。三田さんはスーツのエネルギー解放と同時に射出装置を起動してくれ。」


「わかりました。」


研究員の一人が三田に説明する。


連れられてきた射出装置のあった建物は半分以上倒壊し、あたりにカラフルな体液が飛び散っていた。

崩れた壁から見える外ではなお隊員がエイリアンの侵攻を止めている。

強さをます吹雪が三田や研究員の体に纏わりついていた。


「それではカウントダウンを開始する。」


岩垣が声を上げる。


「10、9、8、7、6、」


三田はスーツのエネルギーを解放した。


「ぐっ」


「5、4」


青い光がコードから射出機全体に送られる。


三田はエネルギーが吸われていく感覚に脳が揺れるのを感じた。


「3」


あらゆるセンサが起動し、液晶がついた。


エイリアンに蹴られた腹から血が噴き出す。


「2」


センサがサンタクロースの袋に照準を合わせる。


鼻血が吹き出し、液晶を汚した。


「1」


発射可能を示すアラームが鳴り響いた。


視界が揺れ、意識が朦朧とするのを三田は自身の頭を殴って堪えた。


「0、発射!」


三田は最後の力を振り絞り、発射のボタンを押した。


「うけとれえええええええええ!!!」



爆音。


その音を聞いた瞬間、再度三田の意識は闇に落ちた。





















「うちの大事な後輩に無茶させやがってあのハゲ。」


「八代先輩も大概じゃないですか。」


「私のはいいんだよ、別にすぐ治るし。」


12月29日、12:50。

サンタクロース襲来から4日後、三田と八代は病院棟で話していた。


射出機を起動した後、三田は意識を失い、その後1日気絶、高熱に散々うなされた後やっとまともに喋れるようになったのがつい今日だった。


サンタクロースは袋に極小反物質弾を入れた後、そのまままた宇宙に帰ったらしい。

同時に来ていたエイリアンもその時点で鳴りを顰め、決戦は終了したようだった。


「熱はもう下がった?」


「そうですね。一応動けるようにはなりました。」


「よかったよかった。」


「それもこれもこれは多分八代先輩のフラグのせいだと思います。」


「まじかよ。」


「だってその証拠に八代先輩しばらくゲームできないですよね。」


「ぐは」


三田が八代の手を指差す。


八代の手は両方ギプスで固められており、その様子では何も手に持つことはできないと容易に推測できる。


「今後はフラグを踏まんようにするわ…。」


「ははは、あ、あと熱出して寝込んでる時に思ったんですけど。」


「なに?」


「エイリアンのサンタクロースって実際のサンタクロースと真逆のことしてるって話しましたよね。」


「あー。したな確かに。」


「あれ、エイリアンをプレゼント、渡すエネルギーをクッキーとか食べ物って考えたら結構順当にサンタクロースしてるって捉えることもできません?」


「いや、エイリアンがプレゼントって、それで私ら地獄見たんだけど。」


「五年前のエイリアン襲来以前のことを考えてみてください。あの時の世界情勢って国同士の戦争の火蓋が切って落とされる寸前みたいな状態だったじゃないですか。だけどエイリアン襲来によって国同士が結託して技術もたった五年ではるかに進歩した。いい方に考えすぎかもしれないですけど、これがプレゼントって考えると辻褄が会うんじゃないですか?」


「サンタちゃん、陰謀系の雑誌でも読んでた?」


「あいや、私は今回の事を好意的に捉えるならそうかなーって思って」


「はぁ、サンタちゃん、たとえ君のいうようにサンタクロースがエイリアンを使って世界の危機を救おうとしたんだとしても、私は決して、決して私から娯楽を奪ったあいつを許さ無いからね。」


「いや、八代さんはもうちょっとゲームと酒を抑えた方がいいと思います。」


「何をー!」


病室の外でなおも雪は降り続けている。


終末時計は0時を超えて手前に戻った。


世界に平和在らん事を。


三田はそう思った。


山:えーはい。


ア:2時間遅刻してるんですが。


山:いやぁ、21時から構想始めれば間に合うと思ったんだよ。


ア:連載1話2000文字に1時間30分かかる山鳥さんが短編1話8000文字を3時間で書けるわけないじゃないですか。


山:いや、元々こんな長くなるつもりはなかったっていうか、SFは慣れないっていうか、ループ系じゃない短編描いたの初めてっていうか、明らかに設定が短編用じゃなかったっていうか…


ア:見苦しい言い訳ですね。


山:うぐ


ア:次の短編はもうちょっと計画的によろしくお願いします。


山:はい…。

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