95話 船の常識
海上に進む一隻の船
バタバタ
メグリとディクスは甲板で椅子に座り航路調整の作業をしている
マストの上部にある偵察台に立つリリア、ヒヨル、ニネット
「どうにゃ?この景色」
「うん……すごいねこの景色」
一面青の大地
リリアはどこまでも続く海の広大さに言葉を失う
「やっぱ陸地からの景色とはまた違った大きさがあるね」
スゥ
ヒヨルは目一杯空気を吸う
「おいしい……」
ふふ
笑うニネット
オロロロロロロロ
はぁ
リリアはため息を吐く
「台無し」
下に目を向けると船尾付近で前屈みになるエリック
「うぅ……無理だ、もう下ろして」
エリックの目には大粒の涙
「今は喋るな、海に謝りながら吐け」
イルマは背中をさする
「おい大丈夫かエリック」
ジャルダンは濡らした布と水をエリックに渡す
「お前そんな酔う奴じゃなかったろ」
ぐい
エリックは口を拭う
「はぁ……気にすんな……はぁ………慣れれば……だいじょ……」
うぷ
シャァァァァ
はぁ
イルマは顔を手で覆う
「エリックは僕が見てる…ジェルダンは作業してくれ」
「あぁ……そうさせてもらうよ」
「何か欲しいものがあったら言ってくれ」
「あぁ助かる」
シャァァ
船内 厨房
「そうでしたか……」
神妙な面持ちのゴイツ
「あんま気にすんなよ、師匠も今ごろ元気に鍛冶育英に励んでるからよ」
「それに師匠だって心配して止まるより
見張り台
「ていうか今更なんだけどさ」
「この船って魔石で動いてないの?」
リリアは帆や速度から動力源について疑問を抱いていた
は!!!
ニネットに電撃が走る
「そ……」
バッ!
「おぉ……」
顔を近づけるニネット
「それだけは船長の前で言っちゃだめにゃ!」
「……そうなの?」
「船長は近代的な魔道船を嫌い旧式の船をこよなく愛する人にゃ!」
「言ったら拳骨がお見舞いされるにゃ!」
「わ……わかったよ」
グイ
リリアはヒヨルの方向を見る
「ヒヨル!」
「はっはい!なんでしょう」
「今の聞いてたよね」
「はい聞いてました」
「ぜーーーーーたいに言っちゃダメだからね」
「わかった?」
リリアの目は真剣
「はい……そんな念をおさねくても大丈夫ですよ」
各々が船の上での行動をとり数時間
ガタッ
「さぁ昼食を取ろう!」
ゴイツとアンスは甲板のテーブルに食べ物を運ぶ
「わぁ〜すごい美味しそうです」
じゅるり
テーブルにはパンで野菜や刺身などが挟まれたサンドが並んでいる
みな席につき今や遅しと待ち構える
………………
2席の空席
リリアは辺りを見渡す
「何やってんのよあの森は」
「森?」
ディクス
「森って誰だよ」
ヒヨルは苦笑い
「あぁ……エリックさんの事ですよ」
ピンとこないディクスと船員一同
「お前は……通じるのか」
アンスは無言で頷く
「そうか………」
(森で呼ばれるエリックって一体……)
「あ」
イルマが船尾から降りてきた
隣にはうなだれる森
着席
「待たせてすまないいただこう」
イルマは淡々と喋る
「……大丈夫なの?モリックは」
リリアは心配そうに顔を覗かせる
今にも死にそうな森
「あぁ……心配すんな……慣れれば大丈夫」
パチン
ジェルダンは手を叩く
「ではみんな揃ったしいただこうか」
「いただきまぁす!」
「「「「「「いただきます」」」」」」
「俺は……エリックだ」
遅いツッコミは誰にも届かない
バグッ
「ん〜うまい!」
リリアは海鮮のサンドを頬張る
「そうですね!とても美味しいです!」
ヒヨルは野菜のサンドを頬張る
「ゴイツさんはすごいお料理上手ですね!」
ヒヨルは目を輝かしゴイツを褒めちぎる
「そう言っていただけて作った甲斐があります」
ゴイツは照れる
ドンドン
ディクスはゴイツの肩を叩く
「おうおうよかったじゃねぇか」
「やっぱ料理できる男はモテるねぇ」
「お前はどうなんだ」
メグリの一言
「俺はイケメンだからいいの」
ふっ
メグリは呆れ息を吐く
「そうか?」
イラ
「お前こそ初対面でろくに話せねぇだろ」
「それじゃモテねぇぞ」
メグリは席をたち横へ移動する
「いいの……私にはイルマがいる」
「ね?イルマ」
後方からイルマに抱きつく
……………
無言のイルマ
ププ
「嫌がってんのがわかんねのかよ」
「かわいそうに」
ビキ
「うるさい」
ブゥン!
ヒョイ
「っと」
メグリのパンチを避けるディクス
「あぁ!」
「どうしたゴイツ」
ジェルダンはゴイツの方を向く
「おま……ニネット!何度言ったらわかるんだ」
「私の昼食に干物を入れるんじゃない!」
「あにゃ!」
体をビクつかせニネット
「ち……バレたかにゃ」
シュン!
サンドを持ち去るニネット
「コラァ!」
それを追いかけるゴイツ
バタバタ
周囲がざわめく
ドン!
ピタ
騒ぐ四人は焦りの表情を浮かべ音のなる方へ視線を向ける
笑いながら怒るジェルダン
「仲が良いことは喜ばしいことだが客人の前でしかも食事中に戯れるのは」
「そこまでだよ」
ガタ!
席に戻る4人
リリア達は理解した
この船団の常識はジェルダンなのだと
食事を終えた一行はそれぞれ行動を謳歌する
バシャ
「気持ちぃですねこれ」
浴室にある湯船に浸かるヒヨルとニネット
「そうにゃ!私も水は嫌いだけど浸かるのは気持ちいにゃ」
「うま」
遅れること数時間
甲板にはサンドを貪り食う森とイルマ……
と抱きつくメグリとゴイツ
「お前うまいなこれどう作ってんだ」
はっはっは
「そうですね……調味料と火にかける順番には気を使っています」
「明日にでも見ますか?」
「良いのか!」
森はテンションが跳ね上がる
辺りを見渡す森
「所で他の奴らはどうしたんだ?」
ゴイツは上を指差す
「ディクスは上で周辺の監視を」
「ニネットとヒヨルさんは浴場に……アンスは船先端に行き海を感じるだとか…」
「あと……」
「船長はリリアさんと二人きりで話したいと言ってましたね」
ふぅん
扉を見るエリック
「まぁ…いいか」
がぶっ
ガチャ
ジェルダンの案内でリリアは寝室へと招かれる




