90話 鈍感もじゃ
宿へ戻るエリック
ガチャ
ぐーかー
「起きてたのかイルマ」
イルマは浮遊しながら魔術の本を読んでいる
「まぁ、復習は大事と教わったからな」
「そうか…それはよほど頭の良いイケメンに出会ったんだな君は」
ぺら
「そうだな、だが頭は良いが顔はそこまでじゃない」
「言うなれば中の下の……………下の下の下だな」
「それもう下の下だよね?」
パタン
イルマは本を差し出す
「読むか?頭がスッキリするぞ?」
「あぁ、ありがたく読ましてもらう」
エリックは部屋の椅子に腰掛け本を読む
「どうだイルマ」
「一緒に復習でも?」
笑うイルマ
「仕方がない、さびしんぼのエリック君に付き合ってあげるよ」
イルマは肩に乗る
「なぁエリック…」
「ん?なんだ」
ぺら
「悩みがあるなら聞くぞ」
ぺら
「あぁ、話す時が来たら話すよ」
「その時は一緒に悩んでくれるか?」
ぽん
エリックのもじゃに手をのせる
「あたりまえだ、何回でも悩んでやる」
「お前の悩みが消えるまで」
ふっ
「どこで教わったんだよそんな言葉」
「お教わったんじゃない、元々あった言葉だ」
「そうか……それはキザなやつがいたんだな」
「あぁ……僕にとっても大事な言葉だ」
夜が明ける
「よっしゃ!行くぜ海賊船!」
「うぅ……せぇぞアンス」
アンスはベッドに立ち片手をあさっての方向に突き出し奇声を上げる
「朝は弱いと思っていたぞアンス」
「何言ってんだイルマ!海への冒険は男のロマンだろうが!」
「それをおめおめと寝ていられるかってんだ!」
「そうなのか?エリック」
「知らん」
「早く支度して行こぉぜぇい!」
「…………」
エリックの目は半開きになっている
ドン
アンスはエリックのベッドに飛び移る
「どうした、いつもは誰よりも早く起きてるのに」
「まさか!…」
「お前も海賊船が楽しみで寝れなかったんだろぉぉ」
バシ
「ガァ!」
アンスの顔を押し除ける
「お前昨日爆睡してたろうが」
「まぁそんな細かいこと言うなよ」
「これから俺たちは大海原に行くのだから」
シーン
「じゃ支度するかイルマ」
「うん」
2人は洗面所へ向かう
「てかあの2人は?」
がららら
ペッ
「ん……知らん」
バシャ
イルマは顔を洗う
「そういえば昨夜届いた荷物を開封して喜んでいたぞあの小娘ども」
昨夜リリア宛に届いた荷物
「へぇ……まぁあと1時間あるんだし、勝手に出てくんだろ」
「それまで俺たちは何すればいいんだ…」
アンスは思考を巡らす
エリック
「俺は本を読んでる」
イルマ
「僕も本を読む」
……………
「じゃ俺も本よも」
ガチャ!
通路から扉が開く音が聞こえる
「おっ、出てきたんじゃねぇかあいつら」
コンコン
エリック達の扉がなる
カチ
扉の鍵をあける
「どうぞ」
ガシャ
対面するエリックとリリア
「おはよう!どうよこれ!」
「……………?」
エリックは質問の意図を汲み取ることができないでいた
ジー
リリアを見る
「うーん」
「髪きった?」
はぁぁぁ
リリアは特大のため息を吐く
「だからあんたは女の子から嫌われんのよ」
「えぇ!俺嫌われてんの!?」
「もういい、どきなさい鈍感もじゃ毛男」
どん
「人を怪物の名前みたいに言うな」
ガシ
リリアは腰に手をつく
「どう?2人は気づいてくれるわよね?」
「もちろんだ……なぁイルマ?」
「あぁ……そうだな、確かにいつもより綺麗だ」
なぜか訳のわからない緊張感が場を支配する
ふっふっふ
リリアは笑う
「そうでしょ!この服!リュカに頼んで海上用に作ってもらったのよ!」
「あぁ………かわいいね」
(服だったのか……気づかなかった)
アンスとイルマは胸を撫で下ろす
「おいおかしいだろ」
鈍感もじゃ毛男は物申す
「絶対2人わかってなかったぞ、いいのかそれで」
ギロ
リリアの鋭い眼光が光る
「そうなの?」
「いやいや気づいてたぞ俺は」
「てか自分が気づけなかったからって文句言うなよ鈍感もじゃ毛男爵」
「おい勝手に地位を向上させるな」
「僕も気づいてたよ最初からね」
得意げなイルマ
「それにわからなかったら文句じゃなくまずリリアに謝罪をするべきだろ鈍感もじゃ毛の人」
「第三者みたいに言うな」
「まぁ最初から期待してなかったから大丈夫よ」
「鈍感もじゃもじゃの森」
「人じゃねぇだろそれ」
「てかヒヨルはどうした?」
「あぁ、ヒヨルね」
何か隠しているリリア
「ん?」
リリアはドアに目を向ける
それを追うように目線を外に向ける3人
空いてるドアから見える黒髪
「何してんだあいつは」
「なんか恥ずかしいみたい」
「はい?」
リリアは扉まで行き何かを引っ張る
「かわいいんだから恥ずかしがること…ないでしょ!」
「やです!、リリア以外にはみられたくないです」
「ヒヨルが私の後ならって言ったから最初に私の服見せたんでしょ!」
口論する2人をみる3人
「何この時間?」
「それは言ったらダメだ」
「待つことにも意味を見いだせエリック」
エリックの一言を否定する2人
バタバタ
「とりあえずあの鈍感3人に見せても何も起こらないから」
グサ
突き刺さる言葉の針
「じゃあ……笑わないって約束してください!」
………?
「あんた達笑わないって約束して」
リリアはまたしても鋭い眼光を発動させる
頷く3人
「なんでリリアはヒヨルをあんな見せたいんだよ」
エリックはアンスに小声で話す
「しらねぇよ、知ってたらこんな地獄な時間過ごしてねぇって」
カタ
「どうでしょう……か」
「やっぱ私みたいな野性の人間が着てはいないですかね……へへ」
「おま……え」
驚愕するアンスとエリック
目の前には純白のワンピースを着るヒヨルが立っていた
((!!??))
「あぁ……ああぁ」
言葉を失うエリック
(なんていえばいいんだ…別に普通だけど)
「綺麗だ!!」
アンスは突如として奇声を発する
「えぇ!そう……ですかね」
モジモジするヒヨル
「あぁ似合っている!」
後ろで首を縦に振るリリア
ヒヨルは恥ずかしながらも笑顔で服を見る
ふぅ
その光景を見るエリック
「そうだな……あいつらもまだガキだったな」
「キモいぞその顔」
イルマは肩に乗る
「イルマ、お前も欲しいものがあれば言えよ」
「買ってやるからな」
「そうだな……」
考えるイルマ
「まぁ買いたい物が見つかったらその時言う」
「あぁそうか……」
カラカラカラ
馬車はジェス港に向かい進む
操縦席にはエリック
「……………」
荷台ではそれぞれの行動を取っている
アンスは街で買った船の本を読んでいる
純白のワンピースを………眺めるヒヨル
ふふふ
リリアもいつもの服を着ている
エリックはなぜあの時服をわざわざ着てきたのか疑問を抱いていたが誰に相談するわけでもなく手綱を握った
ジェス港まであと数km




