89話 宿につき情報交換
がさぁ
宿につきひと休憩をする一行
「夜メシは適当に食べててくれ」
「ん?エリック、お前なんか用あんのか?」
「これから浴場行こうと思ってたんだが」
「悪りぃな先入っててくれ」
イルマは赤子モードになる
「僕も行く」
「だめだ」
「そうか……気をつけろよ」
「どうせいかがわしい店でも行くんでしょ」
「前みたいに」
リリアの一言
!!!!
「バカか!違ぇしここにはそんな店そもそもない」
ヒヨルの目は落ちる
「エリックさん……最低ですね」
はぁ
「もういい……出立前には戻るから朝も食っとけ」
エリックは外へと歩き出す
ガチャ
ドドド
「……なんだアンスまだ何かあるのか?」
アンスはエリックの肩を掴む
「次行く時は俺を誘ってくれよ」
ウィンク
「あ…………はい」
酒屋「ウッテンド」
からんからん
扉が開く
静けさ漂う暗めな雰囲気
客はそれぞれグラス片手に酒を嗜む
ガタ
エリックはカウンター席に座る
「マスター1発で酔えるのをくれ」
「あいよ……で何年ものをご所望で?」
「そうだな……20年いや27年くらいのやつが飲みてぇな」
「金は気にしねぇからあうやつ頼むよ」
「お客様」
「では裏に100万エトラの上物がご用意しております」
「いかがでしょうか?」
エリックは席を立つ
「いただくよ」
マスターに招かれ裏の部屋に行く
「では私はここで失礼致します」
「あぁ、ありがとう」
ガチャ
無機質な内装
部屋には机と二脚の木製の椅子が置かれている
「会うのは宿場町メティス以来かエリック」
ばさっ
フードを外す
緑髪が肩まで降りている
耳は少し尖って目は大きく丸い
顔は幼いが雰囲気は大人びている
「少し老けたか?エリック」
エリックはかみをくしゃる
「うるせぇ、色々あったんだよ」
「ティルガちゃんにはわからんだろうがねぇ」
「ちゃん付けするな……殺るぞ」
「悪かったよ……おっかねぇなお前は」
「じゃあ始めるか情報のすり合わせ」
ティルガは手を差し出す
「じゃお先にどうぞ」
「まず勇者の娘のリリアが並行魔術を扱えるらしい」
ピク
尖った耳が動く
「ほう、それは興味深いね」
「それに伴ってジュケディアルカラスに会うことを勧められている」
くく
ティルガは笑う
「それは………良いな」
「何が良いなだよ」
「あの偏屈ジジイにまた会うなんてごめん……」
「なんて言える状況じゃねぇから仕方がねぇからまた会う」
「はぁぁ……たくめんどくせぇ」
エリックは大きく息を吐く
「次に憑依型魔生物については現在確認されてるのは3体」
「討究機関に2体、あと1体はまだ魔導研究者のミレニアムが保持してるらしい」
「アトロスで使われたのは大量生産の憑依型魔生物だったが魔術の複製とか臨界天劣化版を使ったらしいが戦闘に関してはそれ程脅威にはならない」
「あと勇者の鍛冶屋について腕を失ったのはシグナリア関係じゃない可能性がある」
「ざっとこんなところだな……」
「そうか…まぁこう言ってはあれだが並行魔術の方が驚いたな」
「それは言わないでくれ、俺もそうだから」
エリックは手を差し出す
「じゃ次どうぞ」
「では最初に反乱軍の残党について」
「残党は恐らく世界各地に散らばりまた機会を伺っている」
「機会?」
「あぁボスのマジュラが死ぬ時何か信号を送り各部隊長へと受信される仕組みだったらしい」
「その信号は撤退の合図、初めからマジュラは数人の仲間しか魔石を配っていなかった」
「それを見るに本当に信頼がおける奴ら以外は逃げる上官に戸惑いながらもついて行ったってところだな」
「各員はアウトポイントに身を潜めてる、そこで名無し人をさらっては匿ってる」
エリックは腕を組む
「名無し人を匿ってる……か」
「あぁ、恐らくだがまだ捕えられていない名無し人から形成逆転のコマを探しているか」
「人数勝負の大博打を狙っているか…どちらにせよもう少し泳がさないと見えてこない」
「次にヒヨルの父親、ライカクについて」
「以前の報告はもうヒヨルには話したのか?」
エリックは頷く
「その件で勇者秩序のメルザと小競り合いが起きたらしい」
「だがニュースに掲載されていない事から大事になっていないか揉み消されたかだな」
「やつは軍事大国を作りたいそうだ、出自、身分関係なく力を持つ奴らを片っ端から集めている」
「それに魔道兵器にも手を伸ばしてる、「ロスト」に近づくのも時間の問題だな」
ちっ
「やることは明確なのに時間がないとは嫌なもんだな」
「それで最後の情報は……エリックお前の個人的な調査依頼「魔人王バアル」の所在について……」
………
エリックは苦悶の表情を浮かべる
「勇者を殺したと思われる最有力候補だな」
ペラペラ
ティルガはメモ帳めくる
紙には解読不可能な落書き
「そうだな……魔王征伐後「配下12魔軍」の生き残った5体の幹部達は世界の各地へ散らばり身を潜めた」
「その内4体は賢明なる英雄たちによって滅ぼされたが残りの1体……しかも最高位幹部魔人王バアルは未だ世界のどこかでなりを潜めている」
「でも優秀なティルガはその魔人王の情報を持っているんだろ?」
ティルガは笑う
「あぁもちろんだ」
「魔人王バアルは………………………」
「とこんな感じだな」
エリックは頭を下げる
「いつもありがとな、まじで助かる」
「よせ、私はただ趣味でお前に協力してるだけだ」
「必要な情報は必要な人物が知って初めて価値を見出す」
「ただ私は橋渡しをいているに過ぎないよ」
ティルガは出口へ歩き出す
「最後にこれは情報というか噂程度の代物だが」
「輾転回帰は幾千年生きているらしい」
「全てはそいつに還る、過去も現在も未来までも……とか」
「まっ、頭の隅にでも入れといてくれ」
「健闘を祈る、また」
ガチャ
「過去……ね」
パチ
パチ
部屋上部で光る魔石が点滅する
エリックは壁にもたれかかる
(なぁエリック!)
脳内に流れるあの日の声
(俺たちがいれば世界中の悪い奴倒してみんなが幸せになれると思わないか!)
(魔王も魔人も倒してさ!俺たちは英雄になるんだよ!)
エリックはそっと目を閉じる
浮かぶ景色
ボロい教会
今にも倒壊しそうな教会の周りには走る子供、追いかける父の姿
それを笑いながら見守る3人の子供
パチ!
「はっ……はぁ」
エリックは目を開く
腕を出し力を込める
ドクン
ドクン
ドクンドクンドクン
グッ
腕に魔力を込める
グシャ
「うぅ………がは!」
ドサ!
その場に倒れ込む
「はぁ……くそったれが」
エリックの腕には紫色の紋様が浮かんでいる
「なぁ……俺は正義を間違えてねぇよな」
「教えてくれよあの時みたいに……答えてくれライズ」




