88話 馬車は回る
宿に戻り宿泊部屋(男組)を開け呆然とする3人
「何やってんだテメェら」
「あ…何って見りゃわかんだろ」
「待ってたんだよお前らを」
「だらしない」
リリアの冷たい一言
「最悪です」
ヒヨルの辛辣な一言
「出てけ怠惰なやつは外で寝ろ」
エリックの非道の一言
「なんだ!3人揃って言い過ぎだろ!」
「じゃその本をおけ、そして床に置いてある菓子をかたせ」
「あ……」
床に散らかっている本とお菓子
「なぁアンスぅ……この続きはどこだ」
イルマが手にしているのは巷で話題の空想伝記「遊点戦記」
「あぁおかえり……なんだその目は」
エリックの冷めたい目
「はぁ……ほら片付けるからどいてくれ」
無言で片付けを始めるエリック
「手伝ってくれリリア、ヒヨル」
「えぇ」「はい」
黙々と片付ける3人
「おい僕……」
「お前は本でも読んどきなさい」
イルマを遮るエリック
端に追いやられる2人
「僕たち何かしたのか?」
「まぁ………したんじゃねぇか?」
ピカー
部屋は見違えるほど整理される
「いいかお前ら…別にぐーたらするなとは言わないが」
「人のことを考えてから綺麗にぐーたらしろわかったか」
「「は〜い」」
その光景を見るリリアとヒヨル
((このチームエリック(さん)いないと何も出来ないのでは?))
で
「どうだった、お前のお師匠さんは」
ズズー
王都【セイントエルダ】にある食事処
夜飯はそこの個室を予約していたエリック達はそれぞれ注文した料理を食べながらこれからについて話し合う
「どうって……別にどうもだけど」
もぐもぐ
「おい僕たちがあれほど待ったのに成果なしとはどうなっている」
ズズー
「本読んでただけだろお前ら」
「てか別に成果がなかったわけじゃねぇよ」
「新しい情報が手に入ったが…今はとりあえずミカノツカイ皇国を目指すには変わりない」
バグッ
「でもリリアの情報が確かなら無視はできないと思います」
ムシャムシャ
「別に無視してるわけじゃない」
「今は、っていう話をしてるんだ」
ん
「リリアの魔術って何かあったんか?」
………
4人が頬張るリリアを見る
!
「ごふ……ゴホゴホ」
むせる
「あぁ!大丈夫ですか」
背中をさする
「ちょ……何よ…人の顔じっと見て」
「いや……お前何か悪いものでも食ったか?」
「どう言うこと?」
「さっきからなんかおとなしいぞお前」
「前のお前ならすぐ強くなりたい!っていうと思ってな」
ぐい
口を拭う
「別に……1週間しか行けるチャンスがない方が優先でしょ」
「まぁ…そうだな」
食事を進める一行
麺を口に運ぶアンス
(俺の話……流されてね?)
グーグー
寝息を立てるアンス
男部屋にはベッドが二つ並んでいる
床には荷物が端に並べられて本は縦積みされている
エリックは本を読んでいる
「何読んでんだエリック」
「あぁ……少し魔力の基礎を調べ直そうと思ってな」
「基礎?」
開いている本は学園で使われている魔術の教科書
「十分理解してるだろお前なら」
ペラ
「まぁ復習は大事なんだよって事、憶えておいて損は無い」
「お前も何かに息詰まったら一回1から学び直せば違う気付きがあるって話」
「そうか…」
ふわ〜
浮遊するイルマ
もち
「では僕も復習する」
ぺら
「言っておくが俺の肩に乗る事を俺はまだよしとしていないからな」
「いいじゃないか、僕重くないだろ?」
……
「言われて思えばお前肩に乗ってるとき重さ感じないな」
「重さ0にはできないだろ?」
ふふふ
笑うイルマ
「エリックでもわからないことあるんだ」
「なんで嬉しそうだんだよ」
「教えてあげようか?」
「いいよ別に…てかおりろ」
「当てたら降りてあげる」
………………
「浮遊魔術で重力による負荷を浮力で相殺させてる」
「半分正解…」
「半分?……」
「もう半分の正解は………」
エリックの神経を少し麻痺らせてる
「今すぐおりろ」
夜が明ける
「おはようございます!!!」
カンカン!!
「うぅ……るせぇ」
枕で頭を隠すアンス
がし
「はう!」
ヒヨルの頭を鷲掴みするエリック
「それ……おれの道具……だよな」
ガガガ
首を回す
「叩くものがこれしかなかったので………」
「それも叩くものじゃないんだけど」
顔は暗く冷たい
「ほ……ほーらエリックさん……笑顔で…笑顔で朝を迎えましょう……ね?」
「そうだな……じゃあ俺を笑顔にしてくれヒヨルよ」
「はい……」
「じゃあ……」
ドゴォ!
「邪魔」
「ふが!」
エリックを蹴り飛ばすリリア
「リリアぁ!」
抱きつくヒヨル
「早く行くわよ、時間は限られてるんだから」
「いい?」
皆は支度し馬車へと向かう
カラカラ
馬車は海賊船が停まっているジェス港へと向かう
操縦席にはリリアが座る
荷台ではエリックが地図を広げイルマと進路について話し合っている
「甘い!」
バシィ!
「くそ………やるなヒヨル!」
「これならどぉだぁぁ!」
バシィ!
「うわぁ!」
「うるせぇ!」
アンスとヒヨルはカードゲームをしている
「いやぁこの遊びは面白いな」
「カードに書かれてる効果とか効果範囲とか頭使わねぇとすぐ負けるってのがいい」
「ですです!アンスも分かりますかこの面白さが」
「お前らバカじゃん」
イラ
「なんですか!いいじゃないですかバカでも面白いものは面白いんです!」
「ね!アンス」
「………アンス?」
とぼーん
「俺………いや別に頭は良くないけどさ……」
「ヒヨルと同じ………それは酷すぎるぜエリック」
!
「そんな落ち込まなくてもいいじゃないですか!」
「ねぇエリック」
「馬休憩する?川見えてきたけど」
リリアが指を刺す方向から水音が聞こえる
地図に目を落とす
「そうだな……いや真っ直ぐ行こう」
「今日泊まる街まで半分くらいまできたし馬にはもう少し頑張ってもらおう」
「それに船に乗ったら馬とはしばらくお別れだから今日、明日のうちに愛でとけよヒヨル」
「あぁ!そうでした」
ぴょんぴょん
ヒヨルは操縦席へ移動する
「あぁ〜またお別れだなぁ、最後まで頼むぞハクバー、クロバー」
「ヒヨルって動物好きだよね」
「そうですねぇだって可愛いじゃないですかこの愛らしい顔…たまらん!」
ふふ
「私もヒヨルの顔かわいいと思うよ」
はっ…………
ボッ
顔を赤らめる
「なんですか急に……恥ずかしいです」
そっと顔を手で覆う
「文章を見ればお前の顔と馬の顔が同列にされてるのに気付こ…」
エリックの野次
ギロ
「なんか言った?」
「私は素直に言っただけだけど?」
リリアは笑いながら圧をかける
…………
「なんでもないです」
馬車は回る
カラカラ
「見えてきたよ、今日泊まる街」
アレスティア王国内の主要区画以外に点在する街
それぞれ街には特性があり関門が存在する街や外国との貿易できた商人達への宿泊など用途により様々である
所々に点在する街には街道がひかれている所や草原の中に突然と姿を表す街もある
エリック一行が泊まる街はジェス港へと赴く商人や護衛騎士が宿泊するために作られた貿易要人宿泊施設
この街では宿泊施設以外は食事処しか存在しない
カラカラ
「こっからは……リリアはフード、イルマは子供になっとけよ」
「「は〜い」」
「なんか指示だけ聞いたらふざけてるように聞こえますね」
「まぁ……俺も同感だ」
カラカラ
馬車を預けるため馬車預かり場へと進む
「うっわ大きいなこれ」
アンスが見上げる縦長の厩舎
大きさは数百mは優に超える
「どうしたんだここは」
「まぁ要人の皆々様が来るんだ馬だけじゃなく荷台にも気を遣ってんだよ裕福な奴らは」
「はぁ〜」
厩舎の入り口に大きな男が座っている
「今日一日預けたい、明日の朝まで」
エリックが大男と話している間に荷物をまとめる4人
「なぁリリア…」
アンスは寂しげな顔を浮かべる
「なに?」
「この本も置いてくのかよぉ」
荷台に積まれている昨夜アンスとイルマが熱中していた本
「当たり前でしょ?宿で読むわけでもないし」
「それに船にだって載せないからね?」
えぇぇぇぇ!
「横暴だ!お前は本を軽視している!」
アンスは猛抗議
「………おいイルマ」
「ん?なんだ」
「いいのかよ!このままじゃ本を奪われるんだぞ!」
「重いからしょうがないだろ」
「それに僕は全話暗記したから本が消えても問題ない」
‥‥‥‥‥‥
「裏切り者が!」
「何してんのお前らは」
交渉を終えたエリックが戻る
「聞いてくれよエリック!リリアが本を置いてくって言ってんだぜ!どう思うよ!」
「………お前も暗記すればいいじゃん」
・・・
「全21巻!できるわけ!ねぇだろうがいぃぃ!」
議論の末アンスお気に入りの4巻だけ持って行くことを許可された




