86話 後悔しない後悔
ギルド「雄剛の英団」本部前
「やっぱ帰ろうかな」
「ふざけんな」
ガシ
後へ歩くリリアを掴む従者1
「おっと間違えました」
「あまりおふざけが過ぎるといけませんよリリア様」
ごほん
「そうですよリリア様、私達の責務を果たす時が来たのです」
「そうだな……行くぞ従者達!」
「おかえりなさいませリリア様」
「ベドラス様がお待ちです」
門が開き中へ入るリリアと従者達
前回同様にベドラスがいる部屋へと歩を進める
従者1
「今回はあまりつっかかんなよ従者2」
前回訪問時ギルドメンバーに突っかかり変人扱いされた従者2
「わかってますよ、成長したんですからね私も」
「ほう……何か考えがあるのか?」
「はい、私は‥‥‥‥」
「黙ります」
「うん、素直でよろしい」
ガヤガヤ
ギルド1階は賑わっている
ざわざわ
屈強な冒険家たちが何やらざわついている
「あれ?どうしたんでしょうか‥‥‥‥」
キョロキョロ
冒険家の1人と目があう
「あ………」
シュン!
「………今すごい速さで目線外されたような」
「気のせいですかね?」
「いや…あいつら外見は俺と一緒なのに的確にお前との視線を回避してやがる」
そうか!
「お前と俺とでは面の装飾が違う……なるほどそれで変人と常人の区別を」
「なかなかやるじゃねぇか冒険家!」
「感心しないでくださいよぉ!」
・・・
リリアは無の表情で歩き出す
「行くわよ、着いてきて」
「「はい」」
ベドラスがいる7階総括室
コンコンコン
「どうぞ」
扉から聞こえる重々しい声
…………
表情がこわばる
ドン
リリアの背中を押す2人
「失礼します」
ガチャ
部屋の奥に座る大男
手を机につき落ち着いた目でリリア達を見つめる
「よく帰ってきたねリリアちゃん」
笑うベドラス
「もう少しで依頼主のクロス団長が到着する」
立ち上がり部屋中央の対になっているソファーへと歩み寄る
「それまで……まぁ良ければだが」
「世間話でもしようじゃないか」
ドス
対面に座る両者
「初めにリリアちゃんが無事で何よりだよ」
……
「うん……ありがとうベドラスさん」
気まずそうなリリア
「従者の2人さんにも……ありがとう」
頭を下げる
「いえいえ、リリア様への協力は至極当然」
「謝意などもったいないです、頭をお上げくださいベドラス様」
はっはっは
「そう言っていただけると安心して送り出せる」
笑うベドラス
「リリアちゃん……」
「なんですか……」
「前リリアちゃんが言ってたことだけど…」
「この国を出て行くって話……」
!
一瞬体を震わせるリリア
「うん……」
「それは王国最強騎士団「永劫の騎士団」の入団を無しにするってことかな?」
「この騎士団に入るためにクロスと修行してたって聞いてたけど……どうなのかな?」
ベドラスは終始優しい口調で語りかける
頷くリリア
「そっ……か」
ふぅ
息を吐くベドラス
「これは別に何の意味を持たない老人の戯言と聞いてほしい」
リリアはベドラスの目をみる
「私はリリアちゃんが……同期のユテッカ、ヴァイス、グレイラスらと一緒にアレスティア騎士団のローブをまとって共に戦う光景を夢に見ていたんだ」
「私もハルデューク魔導学園に行った時……いつも4人で行動している姿を見て「この子達が次代の騎士団を背負う者達か」と何度も空想に描いていた」
「その3人だけじゃない、魔導学園で切磋琢磨した仲間ともう会えなくなってしまうリリアちゃんを想うと……つい口を出したくなってしまうんだ」
「それでも……行っちゃうんだね?」
カチ
カチ
時計が流れる音
………
「それでも……」
「それでも行きたいと思う」
「この数週間で少しだけどお父様のかけらを見てきたの…」
「それを見れば見るほどお父様が遠くに不鮮明になって行くのを感じる」
「もしここで中途半端な足踏みしたら一生お父様に会えない気がする……いや会えないと思う」
バッ
前を向くリリア
「だから私は行くよ…たとえ見つけた先で後悔しても後悔しない人生を後悔するより私は納得できるから」
「私は必ず父様の………勇者の死について解き明かすよ」
ふっ
穏やかな表情のベドラス
「うん!」
「それを聞けただけでも良かった!」
「そうだね、後悔しない納得する道なら進む以外切り捨てる」
「覚悟ができてるなら言うことはない……私も応援する」
「あとは……」
ガチャ
「師匠と話してくれ」
入れ替わりでクロスが部屋へと入る
「私では止められない、あとはお前が判断せぇ」
「はい、ありがとうございます」
ベドラスは部屋を後にする
一礼しソファーに腰掛ける
「久しいですな従者の方々」
「改めましてリリアの師でありこのギルドの団長を任されています」
「クロス・ネイヴァードと申します」
「あぁどうも」
両者一礼
「では早速ですが、アトロスで起きた事の顛末をお聞かせ願いたい」
「まぁ……報告書によれば内乱と書いてありますが……」
ジロジロ
従者とリリアの顔を見るクロス
「あまり、うだうだ言うのは性に合わないのですが」
「リリアの正体は隠してと言っていたのは憶えていますかな?」
目を合わせないリリアと従者
「報告や記事を見てもリリアの名はないがおそらく戦場にもいたのでしょう」
「そこでバレていないとでも思っているのですか?あなた達は」
バッ
手をあげる従者1
「少しよろしいですか?」
「何ですか?」
「そもそもの話、あなたはアトロスの研究を調べろと言いましたよね?」
「あぁ」
「我々が行ったときには内乱の兆しが見えていて、リリア様を隠しながら帝国中枢の研究所に行けると思いますか?」
「行けるわけない……だからリリアの魔術を使ってと……」
「そこなんですよ団長殿」
?
「リリア様の魔術は隠密に長けていることは十分理解しているつもりです」
「ですがリリア様をお一人にすれば従者の名折れ」
「それに国は戦いの数手前でした……それを考慮すればリリア様1人で行動するより内乱を利用しうまく情報だけ掠め取り、我々は無傷の報告をした方がリリア様の身の安全、情報獲得の取得率上昇があると考え戦いを利用したのです」
「お分かりいただけましたでしょうか、リリア様の師であるクロス様」
「ではリリアの身の安全を最優先した結果…魔術による単独行動より団体行動による詮索の方がということですか」
「はいその通りです」
「あちらでのリリア様の認知度もこの国より低かったので多少の行動も大丈夫だと判断しました」
姿勢を直すクロス
「了解しました……まぁアトロスの報告からはリリアの名前はなかったので大丈夫だとは思いますが」
「今後はリリアの所在についてはなるべく秘密裏に事を運んでいただきたい」
「もし見つかり何をしているかがバレれば世界最高戦力があなた方に向かうと憶えておいてください」
「了解しました」
頭を下げる従者
ふぅ
「では調査報告をして頂いてもよろしいですか?」
「はい」
「では私から今回で分かった事をお話しさせて頂きます」
従者1はアトロスで起きていた事の顛末を話す
アトロス帝国騎士団、反乱軍、改革軍、討究機関のそれぞれの目的
研究所にあった非人道的な研究の詳細
魔術の複製報告
……………
「なるほど…人間を核とした魔生物の生成ですか……しかも魔術つき」
「ありがとうございます」
「魔生物の研究に関して国家間の報告にないことからあちらも情報の核心に行き着いていないのでしょう」
「では依頼達成の報酬をお渡しします」
…………
「どうされましたか?」
リリア従者共に無反応
「あぁいや、お願いします」
「では私からの報酬はリリアの魔術についての情報です」
「私の魔術?」




