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勇者が死んだ罪と罰  作者: 吉
3章 勇者の宛名
85/116

84話 罪悪感の恐怖心

ぐーすか

夜が深まり街には湯気と少量の灯りが立ち上る

バイキングでたらふく食べた後カードゲームで白熱しアンス、ヒヨル、リリアは眠りにつく


ちゃぽん

24時間無休の温泉に浸かる2人

「悪いなぁエリック付き合ってもらって」

肩まで浸かり目をつむるイルマ

「いや…俺もちょうど入りたかった所だ気にすんな」

隣にエリック

ぱち

「そういえばエリックは他の人間より睡眠時間が少ないな」

「悪夢にうなされて眠れないのか?」

「なんで悪夢見る前提なんだよ」

「俺は2、3時間で快眠できる性分なだけ」

「そうか………」


シャァァァ

湯元から流れる水の音

屋根は無く広がる星空の中に一つの月


「なぁエリック」

「あぁ?」

「この景色をみんな見れば…誰も争いなんて考えずに湯に浸かるんじゃないか?」

ふっ

「そうだな……」

「ただ皆が皆上を見れる余裕がねぇんだよこのクソッタレな世界はな」

「なぁエリック…先の戦いはなぜ起こったと思う?」

…………

「どうした急に」


目は閉じたままイルマは話を続ける

「僕は研究初期から記録の継承している」

「初期の研究では魔術を扱える魂を魔生物の核として転用する研究を用いてきたる終末への対抗を目的としていた」

「ただある日を境に無関係の人の魂まで材料としてリストアップされていた…」

「その時は何も感じなかったが……戦いが終わった後に騎士団や帝民のあの表情を見ると……」

「過ちの意味を理解した…」

「僕は何もできなかった…デモニッションを触っても魂を汲み取る事ができなかったんだ」

「教えてくれエリック……あの戦いはどうして起こってしまったんだ」

声は震える


ふぅ

息を吐く

「あの戦いは最初から研究はついでだったんだよ」

………

「内通者は騎士団2席、5席の2つ」

「2席は隊長は死に副隊長は瀕死だった…」

「おそらくヴィットウェイ人形の試しに使われたんだろ」

「反乱軍の残党はすぐに逃げたし…ティゲルスは呪術で殺された」

「要は前座、今後の大きな計画の不安要素をアトロスで試しに使うってのが今回の主だと俺は思う」

「って事だから…研究云々 (けんきゅううんぬん)じゃないから気にすんな」

「戦争は起こす奴が必ずいる…責任はそいつ1人が背負えばいい」

バシャ

髪をかきあげるエリック

「それに不明な点もいくつかあるしな」

「不明な点?」

「あぁ、まずガレンの両腕についてだ」

「俺は最高峰の魔石「シグナリア」について聞いていたと思ってたが兄弟子とアンスが工房にあったシグナリアをどっかのクソ集団に渡した事からガレンには別の何かを詮索していたと思う」

「それに工房の仲間を庇うために両腕を犠牲にしたって線も考えられるが…それならガレン程の鍛冶屋の腕を奪う理由が見当たらない」

「それに……」

チャプ

「それに?」

「やっぱいいや」

エリックの方に顔を向けるイルマ

「もう上がるか?」

「いや……考えるにはもう少し湯に浸かってからでもいいかとな…」

「そうだな…」

「夜はまだ長い……いつでも聞くよ」

「助かる」



ピィーピィー

窓から聞こえる鳥の声

「う……んん」

陽の光で目覚める金髪の少女

横にはニヤけて寝ている黒髪

「ん……」

向こうの部屋には3人が仲良く寝ている

「ふが!」

イルマの足がエリックの顔面をとらえる

「はぁ………あ」

寝巻きを正し起き上がる

窓辺には足付きの椅子が二脚

ドサ

朝6:00

窓から見える街並みの向こう側にそびえる山々

…………

無言の時間

一夜いちやで集結したアトロスの動乱

各人の尽力により被害は最小限に留めたに思われたが内通者が牢に収監された時の騎士団達の顔が忘れられないでいるリリア

戦場では勇ましかった各人の顔はひどく乱れ疑念と困惑に満ちていた

1人の死体が運ばれた時の最高位騎士団「ガイア」の団員ニナ・ヴァロンの様相が脳裏をよぎる

「…………」

窓辺に肘をつく

「大丈夫ですか?」

前の椅子に座る黒髪

「もう起きたの?」

「はい…もう十分寝たので」

「昨日エリックさんとイルマが夜温泉に行ってました」

「何話してたのでしょうか……」

「さぁね……どうせ温泉は気持ちいいとかそんな所じゃない?」

「そうですね………」

「一つ小話してもいいですか?」

肘を外し前を向く

「うん………いいよ」

ぎゅ

ヒヨルは膝を掴み外を向く

「私あの日からどうしても離れない光景があってですね……」

「騎士団のニナさんが泣きながら」

【どうしてあの時笑ってたの、友達だと思ってたのに……】

「ニナさんがしがみつき訴えていた死体は私が殺した人でした」

「ニナさんは私に感謝を述べていましたがどうしても…こう……罪悪感が残るんですよ」

「罪悪感?」

「はい……私が殺そうとして殺したのは別の人であって…その人を殺した事にはなんの後悔もないのですが」

「もう一方の人は咄嗟にと言いますか……殺そうとして殺してないのですよ…」



…………………………




へへ

「ごめんなさい、意味不明ですよね」

わかるよ

ヒヨルの目をみるリリア

「大丈夫、伝わってるよその気持ち」

はは

笑うヒヨル

「どうしましょう……こんな事を引きずってたらこの先どうにかなってしまいそうです」

「あの時みたいにその場の衝動で人を殺してしまっていたらいつか…取り返しのつかない……」

「例えば私が嫌悪していた人に私自身が成り替わるかもと……」

「その恐怖心でいつか戦えなくなって大切な人達のために刀を振れなくなってしまう恐怖心があるんです」

「がんじがらめの恐怖心って奴ですね……我ながら情けの無い話です」



ぼた



ぼた

「えぇ!リリア大丈夫ですか!?」

ニコ

泣きながら笑う

「私にも背負わせてねその恐怖心」

「それじゃないとヒヨルが壊れちゃうよ」

困惑するヒヨル

「あぁ……えぇと……つまりですね!」

「私は別に……そこまでじゃないと言いますか……」

グイ

机に乗り前屈みになりリリアの涙を拭う

「つまり…もっと精進あるのみってことを言いたかったんですよ」

「だから力を貸してくださいリリア」

「うん!私にも貸してね」

お互い笑い合う

ボソ

「罪悪感………か……」

目を開けているエリック



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