79話 託された魂は熱を帯びる
帝域 戦闘跡地
「あと少しで出発だぞ!」
上位魔生物「デモニッション」の上に呼びかける
「もう少し待ってくれエリック」
振り返るイルマ
デモニッションに手をつき魔力を流す
「今こいつに眠る魂を調べてる」
「魂ね……」
様子を見るエリック
ポタ
ポタ
イルマは涙を流す
シュタ
降り立つイルマ
「行こうかエリック」
歩き出す2人
「何か感じ取れたか?」
「そうだな……」
「なんの変哲もない穏やかな日常を感じたよ」
「皆が笑い皆がふざけ合う、その日常の中に幸せを感じる魂が多くあった」
「なぁエリック」
「どうして皆が平和を望むのに世界は平和にならないんだ?」
「急に難しい質問だな」
「そうなのか?」
「まぁ……考えてみれば難しいようで簡単な答えかも知れない」
「皆が平和を望んでいる事と世界が平和になることはおなじのようで実は正反対の意味だと俺は思う」
「平和の形は人それぞれで一人一人の形が合致しないはみ出した部分が争いにつながる……」
「ってことは皆が平和を進んで望まなければ……現状を受け入れれば真の平和がくる……」
「なんて簡単な話でもねぇか…」
首を傾げるイルマ
「つまり……どう言うことだ?」
う〜ん
考えるエリック
「つまりはな……」
「本当の平和なんて実在しない人類の虚構ということ…かな」
「そうか……それは悲しいな」
「まぁ……俺たちは俺たちなりの平和を見つければいいだけの話だ」
「そのための旅だし旅の先に嫌でも世界の形が見えてくるはずだ」
帝域へと進む2人
帝城内 寝室
大きな部屋にベッドが二つ
包帯を巻かれた少女が2人寝ている
「ねぇヒヨル、起きてる?」
「はい、あと少しで出発なのでバッチリ起きてます」
…………
暗室の中にカーテンから刺す月光
それを見つめるリリア
「今回………本当の強さを見れた気がするわ」
「本当の強さですか?」
「えぇ、騎士団長の臨界天を間近でみたあの殺気と気迫……」
「あれをやるには……もっと自分の魔力と向き合わないといけないって思った」
「すごかったなぁ…私にもできるかな」
天井を見つめるリリア
「できますよリリアなら」
「あ、そうだ」
「エリックからヒヨルが敵を倒したって聞いた……」
「すごいねヒヨル」
「頼もしい仲間がいてくれて心強いよ」
「まぁ……味方に助けてもらっただけなので」
「素直に喜べはしないので……」
「なんとも……ですね」
……………
「大丈夫?」
「え?」
ヒヨルは困惑する
「昨日エリックと話してくるって言ってから」
「なんか暗いよ?」
「ははは……」
乾いた笑い声
バッ!
上体を起こすリリア
「まさか…あの変態もじゃ毛になんかいやらしいことを!」
「いえいえ!違います」
「ただ……私が依頼してた件で途中経過を聞いただけです」
ぼふ
「そっ、なら良かったわ」
「なんかしてたらあの変態に鉄槌を下さなきゃいけないからね」
ふふふ
笑うヒヨル
「大丈夫ですよリリア」
「エリックさんは本当に私達のことを想ってくれてます」
「私の中の信頼値がぐんぐん上がってます」
バサ
ベッドから出るリリア
「もうそろそろ出ましょうか」
「はい、そうですね」
ガチャ
部屋から出る2人
帝城西 森の中
「それでアンスは来るの?」
出発のため集まったエリック、リリア、ヒヨル、イルマ
「まぁなんともだな…あいつが来たいと思えばくるし、来たくないと思えばこない」
「それだけの話だ」
不服そうなリリア
「回りくどい」
「まぁいいじゃないですかリリア」
仲介に入るヒヨル
「……所でエリックさんに乗ってる子はどなたですか?」
エリックに乗る子供
「僕のことか?」
「そうです!あなたですよ」
「なんなら今日初対面ですよね!」
「なんなんですかあなたは!可愛いので抱きしめてもいいですか!」
………
「この女はどうしたんだエリック?」
ごほん
「えぇこちら俺の第2の依頼主であり仲間かも知れないヒヨル」
「仲間ですよ!」
「えぇこちら……訳あって一緒に旅をするイルマ」
一礼するイルマ
「どうそよろしくヒヨル」
「あぁ…こちらこそイルマ……くん?ちゃん?」
………………
少しの間があく
わ……
ヒヨルが言葉をためる
「「わ?」」
エリックとイルマは首を傾げる
「訳ってなんですかぁぁぁああ!!!」
森に響く叫び声
ばし
「いでっ」
ヒヨルの頭にチョップ
「うるせぇ」
ガサガサ
草が揺れ男が現れる
「この度のご活躍誠に敬服いたします」
「それはどうも……あんたが帰りの人か?」
「はい、アレスティア行きの国家間長距離転送魔術結界システムは…先の戦いで使えなくなっているので」
「一回中継地点を挟んでのルートになりますのでご了承頂きたい」
「あぁ問題ない」
バシ
男は両手を合わせる
「では!行きます」
「待って!」
リリアが止める
「なんですか?」
「えぇ……と……その…」
と……
「トイレ!したいなぁ………なんて」
静まる場
「では早い所頼みますよ」
「私も後があるので」
「ごめんなさい!」
草陰へと移動するリリア
・・・
「あいつには羞恥心が欠如してるな」
ばし
「いでっ」
「それはあなたです」
ヒヨルがエリックの頭にチョップ
ーー数分後ーー
ガサ
「ごめんなさい……行きましょうか」
ばし
「では行きましょう」
「次の目的地はアトロス帝国とアレスティア王国の中間にある街「ヴィヴォーラ」です」
「そこで1泊して頂きアレスティア近郊の森へと飛ばします」
パァ
地面に魔法陣が浮かぶ
「行きみたく衝撃は少ないですが」
「少し酔うので気をつけてください」
「エリック……」
不安そうなリリア
「大丈夫……あいつはもう腹を決めてる」
ササササ
草木が揺れ辺りに魔力の粒子が光出す
エリック
「あぁ一ついいですか」
「なんですか……今魔力を練っているので話しかけてこないでください」
「まぁ…転送魔術中何があっても最後まで止めないでくれと言いたくてね」
「当たり前ですよ!」
ドドドド!
地面が揺れる
ーーー帝城内部ーーー
「彼らは行ってしまうのか」
「最後までわからぬ男だったな……団長」
皇帝の間
窓の外を見つめる3人の影
「陛下……」
「彼には聞きたい事が山ほどありましたが……」
「これ以上は恩を仇で返しかねません」
「何も聞かずに出国を見守るのが騎士としての敬意の表し方かと……相談せずに申し訳ありません」
笑う皇帝
「そうか……団長の意を私は尊重するよ」
一礼する団長
月光に照らされるお姉さん
「まぁまた会えるさ……私たちが生きてればの話だがね」
「彼らの旅路には嫌でも耳にする……いや……眼にすると言った方が正解かな」
「そこで味方するも敵対するも、もっと力を付けた方が身の為ではあるね」
ははは
笑う団長
「そうですね」
「我々も鍛錬を重ねなければ遅れを取りかねん」
「次会う時は貴様を驚愕するほどの力をつけようぞエリック」
「最後くらい私が送ってやったのに」
「女の誘いを断るなんて野暮な野郎だね……エリック・バートン」
笑うお姉さん
ドドドド
地面が揺れる
「信じていいのよね……エリック」
「あぁ…俺は1ミリも心配してねぇ」
地面の揺れが激しくなる
「エリックさん!もう1日でも待った方が……」
「ダメだ」
「俺たちは今日出発するって言ったんだ」
「今日来ないで明日来るような半端なやつに命は預けれねぇし預かれねぇ」
「この旅はそういう物なんだ……わかってるよなお前ら」
…………
黙る2人
落ち葉が宙に浮き始める
「さぁ……行きますよ……」
ちょっと待ったぁぁぁああ!
ビュン!
!!
上を見上げる
木の幹から飛び込んでくる上裸
「俺抜きで誰がそのおんぼろ装備を鍛え直すんだよ!」
「「アンス!!」」
笑うエリック
「おせぇんだよファザコン野郎が」
ピカァ
光が辺りを包む
シュタ
降り立つアンス
「俺にも手伝わせてくれよ」
「世界を………父ちゃんを探す旅を」
アンスはリリアに向け言葉を言い手を差し出す
ぎゅ
「頼りにしてるよアンス・ライト」
ニコ
「おぉ!任されたぜ!」
光は包まれ一行を運ぶ
鍛えられた魂は全てを跳ね除け押し進む
何を失い何を奪われようとも熱が冷めない限り止まらない魂心
新たな情報を元に勇者の死を探す旅は次の舞台へと駒を進める
アンス、イルマ、2人の仲間が加わり旅路の速度は加速する




